迷子の洞窟2
――――ドバンッッ!!
「うっぷす……うおぉ……自分で飛び降りたとはいえ、結構ヒュンととしたなぁ…」
飛行船から飛び降りた分身体のライアは、地面をぬかるんだ沼に変化させつつ、ダイビング着地を成功させると顔に飛んできた泥を拭いながら辺りを見渡し始める。
「基本は渓谷らしく土と岩肌の多い狭い谷間の道……一応太陽光が届いてるみたいだから少ないけど木々も生えてる」
そこだけを見れば特に変哲の無い、ただの渓谷と言える場所なのだが、明らかに普通では無い物もきちんとそこには存在している。
「……やっぱり飛行船から見えたのは人の手で作られた小屋……でもこれって…どう見ても人が住める出来じゃないよね?」
ライアの目の前には、直径10メートルはありそうな洞窟の入り口が鎮座しており、その洞窟のすぐそばにまるで子供が積み木で乱雑に組み立てたかのような小屋?のような人工物が存在していた。
(こんな所に人がいる?いたとしても小屋は一つだし、何より小屋としての機能を果たせるようには見えないし、どちらかと言えばはぐれのゴブリンなんかがおもちゃ代わりに作ったと言われるほうが納得しそうだけど……)
―――キャァァーーー……
「ッ!?今のって…」
これは期待できないかな?とライアが諦めかけたその時、洞窟の中から女性の悲鳴らしき声が響いてくる。
ライアは洞窟から聞こえて来た悲鳴を確かめるべく、目の前の巨大な洞窟へと足を走らせる。
「……って、うっそでしょ……そんな頻繁にあっちゃいけないもんじゃないの?」
ライアは洞窟の中に入り、悲鳴のあった方向に≪索敵≫を意識させながら≪鷹の目≫の夜目で暗い洞窟の中を進んで行くと、僅かに人工物とは違う光の存在が見えて来て、その正体に驚嘆する。
「ダンジョン……またか……」
――――――――――
――――――――
――――――
「「ダンジョン!?」」
「さすがライアなのです。人生で2つもダンジョンを見つけるとは!」
場所は戻って飛行船の操縦室。リネットとアルによりモンドとアイリス、それにルルや騒ぎを聞きつけたセラとエルも集まっていた。
「見つけたと言っても、元々ここに来たのはリネットさんのおかげ…?でしたからね。俺はただ目印になるような物を探してただけです」
「ライア様がまた新たにダンジョンを発見なさるとは……可愛いは伊達ではございませんね」
「はい?」
ルルは何やら意味深に頷いているが、言っている意味はよく分からなかったので一旦放置する方向で考える。
「ダンジョンが見つかったとなればさすがにアイゼル様や国王陛下にも報告した方が良いと思うし、何よりダンジョン内で聞こえた悲鳴の正体も知らなきゃいけないと思うから、ひとまず分身体をもう2人程降下させて、今後の動きに関してはアイゼル様に相談するべきだよね」
「その方が良いと思うのです。お父様であればステータスカード経由で国王陛下に連絡を取れるはずですし、王都にいるライアの分身体とは別に連絡は取った方が良いはずなのです」
連絡手段としてはライアの分身体一つでする事は可能なのだが、こういう連絡というのはきちんと複数人から送った方が良いし、分身体経由だとアーノルド王子を通して国王陛下に伝えられるので、若干のラグが生じてしまうのだ。
「ですね、ではそちらはそのように………で、アイリス様やモンドさんを呼んだ理由の方なんですけど……窓から見える外の景色に見覚えがあったりしないですか?山とか地形とか」
「地形ですの?」
ライアの言葉に、何となく理由が伝えられているのかモンドは特に疑問を発することなく窓際まで歩いて行き、外の様子を観察し始める。
「……あの山脈……もしかしてここはケドル山脈の奥側の未到達地域かい?…どうやってケドル山脈を気が付かずに超えれるんだい…」
「あ!あれがケドル山脈なのです?」
「ケドル山脈ですか?」
どうやら飛行船から遠くに見える山脈地帯をモンドが知っているらしく、今現在いる場所がどこなのかわかるようだ。
「ケドル山脈はリールトンの街から王都へ向かう道中の西側に見える大きな山脈で、厳密にいえばここはアンファング王国の領土じゃない」
「え!?もしかして、どこか別の国とかですか…?」
「国……とは違うね。先程言ったように、ここは未到達地域……つまり人が入った事のない未開拓の地で、人が入れない程魔物達が闊歩している魔境の地だ」
モンドの説明では、この大陸には人が手を入れれていない土地が結構あるらしく、その殆どの理由が魔物が多く、魔物単体が強い為なのだという。
つまり、この飛行船の下に広がる渓谷や森などには人が討伐しきれない魔物達がうじゃうじゃと存在しているらしく、大変危険な場所なのだとか。
「そんな場所があったとは……」
「ちなみに、調べてわかったけど、ヒンメルの町が出来た山と森も元は未到達地域に指定されていたんだよ?まぁ火竜の影響で魔物は居なくなったし、強力な魔物は火竜に敗れて行ったのかも知れないけれど」
「そうだったんですか!?」
灯台下暗しとはこの事かとライアは目を見開いて驚く。
言われてみれば、リールトンの街から1ヵ月以上も移動し、神樹の森や人の通った形跡の無い平原や森を超えてたどり着いた場所だったので、火竜事件が起きていなければそこに向かうだけでも一苦労だったかもしれない。
「まぁその話は置いておいて……さっきはダンジョンの発見に驚いていたけれど、恐らくここのダンジョンは利用できないものとして恐らく破棄されるんじゃないかな?」
「確かに、そんな危険な場所にまた新たな街を興すとなれば、犠牲は必須でしょうからね」
「ライア様の謁見用のドレスを考えてましたのに…ダンジョンを破棄となればドレスの準備は無駄になってしまいますのね…」
「アイリスはブレないのですね…」
「あははは……って…え」
ダンジョンの発見もあまり大事にはならなそうという事もわかった所で、ダンジョンを走らせていた分身体の方で驚くべき事実が判明した。
「どうかしたのです?」
「あ、あの…―――」
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