ダルダバの町での戦い 終











飛行船から【重力】の魔石を使用した飛行魔法専用の魔道具で飛び出し、単騎にて戦場に向かうライア分身体



「“アース…クエイクッ”!!」



『な、なんだ!?』



『くそ!?足がッ!』



戦場に着くと、敵陣営が集まりダルダバの町に向かって一斉に矢を放とうとしていたので、すぐさま土魔法を使用し、敵陣の陣形を崩させる。



(……敵陣には特に魔法使いなどは見受けられない…でも盗賊にしては連携が取れ過ぎているし、服装もボロボロだけど武器の類は全部しっかり手入れされてる…これはやっぱり帝国の人達って事は確定でいいかな……ダルダバの町の人達は?)



ダルダバの町の正門部分に目を向ければ多くの兵士達が見受けられたが、全員が全員疲弊の色が濃い様子で、かなりギリギリだったのだと理解する。



(…さっきの隊長さんっぽい人は……あ、良かった…どうやら無事そうだね)



ライアが飛び出すきっかけでもあった背中に矢が被弾した男性はどうやら致命傷では無かったようで、肩の部分を手で押さえながらライアの方を見に防壁の上に上がって来ていた。




「お待たせしました!リールトンの街から救援に来たライア・ソン・インクリースです!」




ライアはひとまず、兵士達に自分は味方だと伝える為に名乗りをあげる。



敵軍を攻撃しているのだから無いとは思うが、ダルダバ子爵への正式な援軍到着の報を伝えてはいないので第三勢力と間違えられ、弓矢で攻撃される可能性もあるので念の為と兵士達に“救援が来た”という安心感を覚えて欲しいからであった。



(隊長さん以外にも怪我人はいるようだし、兵士達は全体で50人いるかいないかくらいかな…?リールトンの街から約10時間、それだけの時間をこの人数で対処してたなら疲労感も凄いだろうしね)




現にライアの目にはライアが味方だとわかって気が抜けたのか、数人の兵士達が腰を抜かして座り込んだり、酷い者だと安心からか地面に倒れ気絶する者まで見受けられた。




(……なんか俺が来て気絶するほど安心してくれたのは嬉しいけど…絵面的には俺を見て気絶した訳だから何となく悲しい気持ちが…っと!!)



――――ビュンッ!



「あっぶない危ない…少し考え事をし過ぎたかな?」



些か思考を巡らせすぎていたのか、敵陣に放ったアースクエイク地割れから抜け出してきた者達がライアに向け矢を放ち始めて来る。



「くっそ、いきなり魔法をブッパとは行儀がなってねぇお嬢ちゃんだッ!!」



「俺様達がみっちりお仕置きして自分の立場をわからせてやらねぇとなぁッ!!」



「ヒャッハー!空飛ぶ美少女とは珍しいじゃねぇか!……え?なんで飛んでんの…?」




敵兵達は空飛ぶライアに思い思いの感情を表してくるが、冷静な考えが出来ている者達は「え?マジで空飛んでるやん」「…魔法ってそんな事も出来んの?あれか?風属性って奴か?」と混乱しながらライアを警戒しているようだった。



「出来れば捕虜にして情報を聞き出したい所だけど…兵士達の疲労もあるからあまり時間はかける気は無いんだよね!“マッドショット”」



ライアは敵が未だ混乱しており、弓での攻撃が散漫なうちにある程度片付けようと泥の塊を敵目掛けて乱射させる。



「がぺっ!?」


「ぎゃぁぁ!?」


「う”ッ!?」



ライアが放った魔法は、混乱して対処に遅れた者達にとって避けれる物では無かったらしく、一気に数十人もの敵をなぎ倒し、気絶に追いやる。



「ッ!!全員!岩や木を盾に身を守れ!!相手は遠距離攻撃を得意とする魔法使いだッ!」



「そんなの最初の魔法でわかってた事でしょ……“マッドショット”ッ!」



「ぐあぁあぁ!」



どうにか自陣営の混乱を解決しようと声をあげた者が居たので、そいつがもしかしたらこの盗賊団のリーダーで、帝国側の情報を多く持っているかもと魔法で狙い撃ちにし、気絶させる。



「がぁぁ!?」


「くそ!!王国にこんな魔法使いがいるなんて聞いてねぇぞ!?」


「…ッッ!?よく見りゃあっちにでけぇ船みてぇのもあんじゃねぇか!?だとしたら援軍対策の大橋の破壊も意味ねぇ!撤退すべきだ!!」



敵達はライアだけで無く、後ろに控える飛行船の存在にも気が付いたようで、自分達の作戦の前提がハナから間違っている事に気が付き始める。




「撤退?……撤退させる気は無いのは当たり前だけど……君らどうやって逃げるの?大橋も壊してるのに」




「「「………」」」




ライアの指摘に『あ、やべ』と自分達に退路が残されていない事に気が付いたようで、何とも情けない表情を浮かべている。



「まぁどんなに後悔しても最初に手を出してきたのはそっちなんだから文句は言わないでね……“アースクエイク”ッ!」




――――ガガガガガガッッ!!




「「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」」」




ライアは逃げ腰になっている者達を一気に制圧する為に地割れを起こし、敵達のバランスを崩させ、すぐに逃げ出せないようにさせる。



「そしてそのまま…“マッドプール”ッッ!!」




ライアの魔法により地割れを起こし、その隙間に足を取られたり、隙間に挟まっている者達の下の地面を泥の沼に変え、一気に100人以上の敵を捕まえる。




「よし!これで制圧完了だね!……といってもさすがに泥で窒息死させる訳にはいかないから、1人1人気絶させてから救出しなきゃだから少し面倒だけど…」




「――では我々もお手伝いいたします!」



「ん?」



ライアはさすがに自分一人で100人以上もの人間を気絶させながら沼から引き揚げていくのは面倒だと思っていると、戦闘を一部始終見ていたであろうダルダバの町の兵士達がいつの間にかライアの少し後方に来ており手伝いを申し出てくれる。




「お気遣い感謝します!けど怪我人の手当てなどはいいんですか?」



「元々軽傷の者ばかりですし、医療班は別できちんと動いてくれていますのでお気遣いなく!」



「…そういう事であればよろしくお願いします!!」



ライアもさすがに怪我人を放っておいて手伝いをさせる訳にもいかないと考えたが、どうやら無駄な気遣いだったようで、素直に兵士達の申し出を了承する。



兵士達はすぐさま沼の方へ近づき、気絶している者を引き上げつつ、まだ意識のある者は慎重に気絶させながら縛り上げる。




「……うん、大丈夫そうだね……俺も手早くやっちゃうか……あ」



ふとライアの脳裏の中に、飛行船にて出撃の準備をしているであろうキルズ達騎士団の事がよぎり、1人で何とかしてしまった事実をどう伝えようかと頭を悩ませながら、敵の拘束作業を開始するのであった。









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