同性(異性)でも見られるのは恥ずかしい













飛行船がリールトンの街に到着するまでにかかった日数は約10日、つまり単純計算でリールトンの街から王都アンファングまでの道のりも同じく10日で到着できるだろう事は予想が出来る。



ライア達は今回の遠征を、念のために2か月も猶予を持って出発していたので、少なくとも約1か月はリールトンの街にて時間を潰す必要がある。



つまり……。




「キャァー!さすがライア様ですわ!!!寝起きを演出するネグリジェと腰まで伸びる艶めかしいスカーレッドのロングヘアがグットですわ!!」



「ふっ……自信作ですお嬢様」



「    」




飛行船がリールトンの街に着いて約10日……ライアは勝利や敗北と言ったそんな終わりの見えない勝負を挑まれ、永久とも思える時間を“お着替え”として消化していた。



……変に言い繕わないで言えば、アイリスとルルのコンビにこの10日間毎日、食事と睡眠時間以外のすべてをお着替えの時間と称して遊んで(遊ばれて)いた。




「ア、アイリス様……こちらのもこもこのクマさんパジャマなどもお願いしてもよろしいですか?」



「あ、私はライア様の大人っぽい……お姉さんっぽい感じが見たくて……」


「はいはーい!私はちょっとエッチな生足のホットパンツが見たいでーす!」




「ふふふ、さすがライア様のお付きである使用人達ですわ……良いでしょう!全て心行くまで楽しみましょう!」



そして今日に関していえばメイド組であるセラとアル、エルの姉妹を入れた5人をライアは相手にしていた。



ちなみに3日に一度のペースでリネットやプエリが参加したりするし、昨日なんかはギルドマスターが面白半分でお着替え大会に参加して、男だというのに女性もののビキニの水着を着せられ、ライアの表情筋は死滅した。




「ライア様?その……こういった装いはお好きではないかもしれないですが……ライア様であればこのクマさんパジャマの魅力を十全に発揮できると思うのです!」



「あ……うん。キがエルね…」



ライアも嫌であれば断ればいいのだが、しばらく放置していたアイリスへの引け目や今のセラ達のようにワクワクとした顔をして「着替えてくれません…か?」と健気に言われるものだから、良心の問題でずるずると10日間も付き合ってしまっているのだ。




まぁ、表情筋が死にかけているのは絶対に昨日のシェリアが悪ふざけで持ってきた黒ビキニを着せられ、それを女性陣の殆どに見られた事が原因だろうが……。





――――コンコン…



「失礼いたします。領主様からインクリース様を執務室までお呼びして欲しいとの事でお伺いいたしました」




「あら……さすがに遊び過ぎたかしら?」




アイリスの部屋に入って来たのはリールトン家で雇っているメイドらしく、アイリスへ一礼した後にライアに向かって用件を述べて来る。



「はい、わかりました!ではすみませんアイリス様、それにセラ達も…俺は用事が出来たのでこれで失礼させてもらうね!」




ライアは息つく暇も与えず、顔だけ申し訳なさそうに服装を元の服(女装)に素早く着替え、迎えに来たメイドと一緒にアイゼルの執務室に向かう。







(……助かったぁぁぁ!!)



部屋を出る時にライアの表情を見ていた名も知らぬメイド曰く、その時のライアは水を得た魚のように目をキラキラと輝かせていたそうだとか。








――――――――――――

――――――――――

――――――――









アイリスの部屋から脱出してきたライアは、ライアを呼びに来たメイドに連れられアイゼルの執務室に向かう。




―――コンコンコン



「失礼します、インクリース様をお連れいたしました」



『あぁ、中に入ってもらってくれ』




アイゼルから入室の許可が出たので、ライアは部屋に入る。




―――ガチャ



「失礼します……あれ?ギルド長もご一緒ですか…?」



「よ!昨日ぶりだな」



アイゼルの執務室に入ると、そこにはアイゼルの他にシェリアもなぜかおり、ライアに向かって軽く挨拶をしてくる。




「…ぷふっ……なんだ、今日は昨日みたいな服は着ないのか?……良い目の保養になったんだがな…ははは!」



シェリアは昨日の件を全く悪びれていない様子で、寧ろライアの触れて欲しくない所を的確に刺激するように声をかけて来る。




「……それはドウモアリガトウゴザイマス……」



(こんのサボり魔ギルド長が……絶対いつか仕返しするからなッ!!)




ライアはアイゼルもいる前で、シェリアと面と向かって文句を言い返す様な事は出来なかったので、心の中で小さい復讐心を込めながら返事を返す。



その2人の様子に、昨日のファッションショーに参加していなかったアイゼルは何のことだがわからないといった様子で「君らは仲が良いな」と見当違いな感想を述べていた。










「っと、それより私を呼んだ理由をお聞きしてもいいですか?ギルド長がここにいるという事は何か大きな問題でも起きたんですか?」



ライアはあまりこの話を掘り下げられるのも面倒だと感じ、本来のライアを呼び出した理由を聞き出す。



一応シェリアが居るという事は冒険者ギルドが関係しているのかとも思ったのだが、ギルドの受付をしているアハトに何も情報が流れては来ていないので、ギルド関連という線は薄い。



となればおのずと考えられる理由は2つ、まず一つはこの3人が話し合う事になった場合一番に話題に上がるのは飛行船関連の事…つまり飛行船関連で何か問題が発生した可能性。



そしてもう一つは、この3人の共通点である……。




「我がリールトン領の隣に位置するダルダバ子爵家が治める“ダルダバの町”に所属不明の団体に攻め入られているとの連絡が入った」



「所属不明……という事は」



「帝国の差し金……の可能性があるという事だ」




3人の共通点……それは貴族(シェリアは元が付くが)である事。



つまりは貴族の義務である国防に関連する話……である。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る