着リールトンの街
「……あ!見えてきたよ!ライアねぇちゃん!」
「……本当に1ヵ月かかる道のりをたったの10日……」
飛行船がヒンメルの街を出立して約10日、さすがにライアが前に行った単独飛行の1週間というペースよりは時間が掛かったが、ついに上空からリールトンの街を俯瞰できる所まで到着した。
プエリやクスト、その他子供達はそろそろリールトンの街が見えるという事で操縦室から外を眺め、興奮しながらライアに話しかけて来る。
そしてパテルは空を飛び、まっすぐと目的地まで進む行為がこれほど時間短縮になるのかと感心するように驚いていた。
「……リールトンの街の方でもこっちを視認出来たみたいだね……リールトンの東側にある平原に着陸するように話は付けてるから、皆も飛行船を一度降りる準備はしておいてね」
「「「はい(はーい!)」」」
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「……よくもまぁこれほどの物を作り上げたものだよ」
「わぁ!これがライア様とリネットお姉様がお造りになった飛行船という物なのですわね!」
「いやぁ……オレもアハト達からどんなもんが来るかは聞いてたが……予想の上過ぎるだろ…」
飛行船がリールトンの街の傍に着陸し、ライア達を出迎えたのは街の領主であるアイゼルとその娘のアイリス、それから護衛騎士が10人ほどとギルドマスターが飛行船の傍に待機していた。
飛行船から降りて来るライア達と目が合うと、アイゼル達は気を持ち直したのか飛行船を眺めながらこちらに歩み寄ってくる。
「正式に迎えるのだから口上の一つでも述べるべきなのかもしれないが、ライア君はあまりそう言った仕来り的な行事は好まないと思ってね……よく来たライア君」
「お気遣いありがとうございます……結構助かります」
ライアの素直な返事にアイゼルは「あはは!それはよかった!」と笑いながら、同じく飛行船から降りて来たリネットと親子の会話をしに行く為にライアの元を離れていく。
「ライア様!お久しぶりでございますわ!」
「アイリス様!お久しぶり……と言ってもついこの間会ったでは無いですか?」
アイゼルとの挨拶が終わったのを見計らって近づいてきたのはアイゼルの娘でリネットの妹であるアイリス・リールトン。
アイリスとは前回、ライアが単独飛行にてリールトンの街に来た時に会って居るので特に久しぶりという感覚は薄かったのだが、アイリス曰く「数か月会えないのは十分久しぶりと言っていいと思いますわよ!!」と軽く怒られてしまった。
「まったく、ライア様は少々わたくしを蔑ろにし過ぎなのですわ!これを機にもう少しわたくしとも遊んで欲しいものです」
「アハハ……ん~それじゃ、しばらくはアイリス様と遊ぶ時間を取りますから、ご機嫌を直してくれませんか?」
アイリスとは前に王都から戻ってから遊ぶ約束などをしていたのにもかかわらず、曖昧になっていた部分も多少あり、罪悪感があったライアはついそんな事を口から溢してしまう。
「今、私との時間を“必ず作ると”言いましたわね!!そう言う事であれば、こうしてはいられません!……ルル!今すぐ屋敷に戻りお洋服の準備をいたしますわよ!!」
「合点承知ですお嬢様」
「え、いや必ず作るとは行ってないけど……というかルルさんどこから湧いて出たんだ…?」
アイリスの号令とともにどこからともなくアイリスの背後から出てきたメイドのルルがアイリスの事を抱き上げると、こちらの静止の声を聞く前に領主邸の方へ走り去って行ってしまう。
(……前から不思議な人達だとは思ってたけど、何か不思議度が上がって行っているような…)
ライアはもうどうせ、着せ替え人形の刑は逃れなれないだろうと観念したので、特に追いかける事もせず、どんどん見えなくなる人影を見送るのであった。
「――なんだかんだ、忙しそうなのは変わらねぇなライア」
「ギルド長」
アイゼル、アイリスと来て、最後に挨拶をしに来たのはアハトとノインの上司であるリールトンの街の冒険者ギルド、ギルドマスターのシュリア・アンデルセンである。
「冒険者ギルドの受付業も忙しかったとは思うが、今のお前を見てれば昔の方が楽だったんじゃねぇかと思っちまうが……」
「まぁ結構楽しんで忙しくなってる部分もありますし……」
「だろうな。まぁもし色々飽きて、冒険者達のアイドルに戻りたくなったらオレに必ず言えよ?今でも一応ライアはリールトンの受付嬢として登録はされてるんだからな」
「……はい、ありがとうございます…」
忘れそうになるが、元々冒険者ギルドの受付として就職したのはライア自身であり、分身体2体を置いているとはいえ、ライア本人は職場に顔を出さずに給料をもらっている。
前世風に考えればテレワークしかしない職員に他の職員と同じか、それ以上の給料を払ってもらっていると考えれば、よく首にならないものだとシェリアに感謝の念が絶えない。
シェリアはギルドとしての体面の為と【働きアリハウスマン】達や他の商人達を宿へ案内する役目としてここに来ていたらしく、ライアと挨拶を交わした後「んじゃまたなぁー」ととても軽い様子で去って行った。
シェリアがバンボ達を街の宿に連れて行くのを見送った後、飛行船の周りにはライアの身近な人達しか残ってはおらず、このままここで立ち話をするのもアレだという事で領主邸へ向かう事になった。
元々アイゼルは何人くらいがライアと一緒に来るのかを聞いていた為、馬車などの用意はきちんとされていたので、飛行船のお留守番として5人ほど分身体を置いて、ライア率いる11人は馬車に乗り込んで行くのであった。
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