プエリの成長












―――――――アインスSide





「ふんッ!!」


―――ズバァァン



「グギャァァァァァァァァッッ!!?」



ワイバーンの魔石から飛行船の開発を計画し始めてから数日、アインス達は【重力】属性の魔石をさらに集める為、ダンジョンの第5層にてワイバーンの乱獲を行っていた。




「グエ……」


―――バタン…



「…ふぅ…これで5匹目っと……さすがに時間が掛かったな、さすがに狩り過ぎてリポップが追い付いてないな」



アインス達は現在、ダンジョンの5層に仮拠点を構え、そこで寝泊まりしながら生活しており、今日も朝一からワイバーン狩りを開始していた。



しかし、元々1日平均1匹か2匹程狩っていた所に、飛行船の計画が出てから一日5~8匹程討伐しており、ダンジョン産のワイバーンと言えどさすがに生息数に限りがあった。



アインス達はこの広い第5層で、半径数百メートルは≪索敵≫にてワイバーンの所在を確認できるが、今日丸一日探し回ってやっとの5匹。



第5層に初めて足を踏み入れた時は少し歩けばワイバーンを発見できるほどだったのを考えれば、リポップが間に合っていないのは明白だ。




(まぁそれでもこうして毎日5匹以上は狩れるから問題は無いけど……)




アインス達は今しがた討伐したワイバーンを解体し、魔石と必要な素材などを4層へ続く階段近くの仮拠点まで運ぶ。



「よいしょ……ふぅ……しかしダンジョンに篭りっぱっていうのも≪分体≫の良い所だね。効率的でいい」



仮拠点には、土魔法で簡単に枠組みされたエリアがぽつんと存在しているだけで、そこにアインス達以外の分身体が3名ほど大きな布やに運びに必要な道具を持って待機している。



実は、現在このダンジョン第5層にはアインス達以外に数人程分身体達を荷運び用に派遣させ、素材が手に入り次第分身体が地上に運ぶというシステムを作っていた。



おかげでアインス達は一日中ワイバーン狩りに集中できるし、地上の錬金術師チームはどんどん集まってくる【重力】の魔石に目を輝かせている。




「…そろそろ≪経験回収≫の為に一旦地上に戻るかな……プエリにも分けてあげなきゃだし、そろそろスキルもレベルアップしてる頃だろうしね」





ダンジョンに潜ってからすでにワイバーンを50匹以上倒して、だいぶアインス達には経験値が溜まっている。



無いとは思うが、万が一アインス達の誰かが致命傷を受け、分身体が解除でもされれば、折角溜まった経験値が無駄になってしまう…それは出来れば経験したくはないが…。




そんな訳でアインス達は一度地上に戻る為、他の分身体達と協力して素材や魔石を運び、暫くぶりの外の空気に触れるのであった。













―――――――ライアSide





「それじゃ先にプエリちゃんからね」



「はぁーい!」




アインス達がダンジョンから帰って来てから翌日、朝食を食べ終わったプエリとライア、それにパテルとクストが屋敷の中庭にて、アインス達へ≪経験回収≫を行おうと集まっていた。




現在ライアが扱える分身体は“29体”で、そのうちのこの街にいない7体(ウィスンと王子付きの4人、アハト、ノイン、帝国スパイ)を抜いた22体の≪経験回収≫を行う。(ツェーンに関してはライブの打ち合わせだとかで後での参加になるが)



ちなみにずいぶん前に分身体を予備として生み出していなかった頃の失敗を踏まえ、分身体達は全員何かしらの仕事をさせているし、ライア本人の護衛目的で常に3人はすぐに動けるようにすぐ傍でスキル鍛錬などをさせているので、22体全員がきちんと経験値を所持している。



もちろんため込んでいる経験値はスキルの物だったりアインス達のように魔物から得る経験値と色々なので、プエリが回収するのはスキル経験値のロスが少ない≪剣術≫や≪格闘技≫を主に使うアインスとツヴァイ2人の経験である。



(……これは偶然だったけど≪武王≫が≪剣術≫やその他戦闘術のスキルの経験値でもレベル上げが有効とわかったのは良かったな……それもあってアインス達にはその他のスキル上げをしなくて済むようにワイバーン狩りに特化させたんだ)



プエリがライアの持つ≪変装≫や≪索敵≫などのスキル経験値を回収しようとしてもプエリ自身がそのスキルを持っていないと経験を回収できず、その経験値が無駄になってしまうのだ。




そんな訳で早速プエリにはアインスとツヴァイの溜まりに溜まった経験値を回収してもらう事にする。




「≪経験回収≫!……それから……ステータスの方はぁ…あ!またレベルが上がってるよ!!」



「おぉ!さすがはワイバーン50体分の経験値……いや、ドライとフィーアがいるから25体分かな?まぁだとしても恐ろしい成長だね」



「兄としてはもうプエリがどうなるのか想像も付かないよ…」



「……最近、稽古を付けようにも力に差が出来過ぎて、何も教えられていないんだが……」




プエリの純粋な喜ぶ声にそれぞれの反応を見せるライア達。



そして、気付いた人は居るだろうが実はプエリは個人用のステータスカードを所持している。



というのも、冒険者ギルドが無い今、ヤヤ村で言う村長の役目をしなければいけないのは領主のインクリース男爵であるライアなので、リールトンの街を出発する際に冒険者ギルドからステータスカードを幾つか購入していた。



そのうちの一つをプエリにプレゼントとして渡し、プエリのステータス確認に役立てているという訳だ。




「これでわたしのレベルは33!≪武王≫はまだ11だけど、もっともっと頑張ってライアねぇちゃんの為に頑張るよ!!」



「うぅ~んプエリちゃん優しいよー!うりうりー!」



「あははは!」




エルフ達一家は全員何故かライアの役に立とうと躍起になってしまう血筋なのか、最近はプエリまでもが目をキラキラさせながら鍛錬用の木刀をボロボロにしている。



背格好や言動自体はとてもかわいらしい幼子なのでとても微笑ましいのだが、レベル33のステータスと≪武王≫というスキルの力も相まって、訓練場の中庭は微笑ましくない惨状になるのが偶に傷だが「ライアねぇちゃんライアねぇちゃん!」と笑顔で来るプエリになんだかんだ「まぁいっか」と思考を放棄してしまう。





プエリと思う存分じゃれた後、ライアは20体もの分身体全員と≪経験回収≫する為に中庭に残り、プエリとクストはとぉさん達のお手伝いがあると屋敷に戻って行く。




「パテルはこっちに残ってていいの?」



「……最近はプエリとクストと沢山一緒に居させてもらった……だが本来俺の目的はお前の護衛だからな……」



「別にこの街から出る訳でもないんだし、暫くは子供達との時間を大事に…」



「……心配は要らない……別にもう離れるとかではないし、夜にはまた一緒だからな……」



最近、息子たちと一緒に居るのがとても幸せそうにしていたパテルだが、自分の目的はライアの護衛だ!と自分の意思を変える気は無いようなので「やれやれ」と肩を竦めながらライアはため息を漏らす。





「……それより、今日もアインス達はダンジョンに行かせるんだろう?早く済ませた方が良いんじゃないか?……」




「おっと、そうだったね」




パテルの一言で、ライアは早速溜まりに溜まった経験値を回収すべく、分身体達に目を向けるのであった。










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