飛行船開発計画











「え、えぇーそれでは、無事ワイバーンの魔石が【重力】……物を引っ張る属性だという事がわかったのですし、早速飛行船ですとか色々作れる物を考えていくのです!」



「飛行船が仮に出来たとしたら、今まで街と街の移動に1月以上かけていた所を大幅に短縮できるでしょうし、この街の名物にも出来ますよ!」



「それに、先程の人を飛ばす魔道具を作れば、またしても錬金術界……いや、世界の魔法の歴史に刻まれる偉業になるだろうね……もちろん服装は気を付ける事になるだろうが」



「「はうッ!?」」




工房に逃げ帰り、身内だけとはいえ己の恥を晒したライアとリネットは、なんとか気を取り直して新事業に関しての話をして先程の失態を忘れようと画策する。



しかし、モンドはあえてそれを指摘し、ライアとリネットは再び羞恥の表情を浮かべる。



(…くっ!さすがはモンドさん……この俺をまたもや悶絶させるとは……もしや人を辱めるご趣味が…?)



ライアは恥ずかしさのあまり、心に潜む中二魂が刺激されたのか、妙な思考をしてしまう。



「……お2人の失敗は……まぁしょうがない部分もあるし、忘れてあげたい気持ちもあるけれど……爆風で副次的に飛翔する自壊魔法ではないれっきとした飛翔魔法の存在なんだよ?失敗1つでも忘れたくはないさ」



(あ、モンドさんはモンドさんか……錬金術師はそうでないとね)




モンドの発言を聞いたライアとリネットは、やっと恥ずかしさを吹っ切ることが出来「それもそうですね」と話の続きに戻ることにした。






「元々ワイバーンの魔石が【軽量】として使われていた時は魔石一つで大体1トンの重さを軽減するのが限界だったので、恐らく物を浮かせれる限界は同じく1トンと考えられるのです……もちろんそれを動かしたり自由に飛ばすとなれば許容限界ギリギリの1トンではダメだとは思うのですが」



「限界値はこれから調べればいいし、今は安全を考え魔石一つの許容重量の半分、500キロを目安に案を出してみよう」



「ひとまず飛行船の設計を考えるのであれば、使用目的は荷物や人員の運搬だと思いますが……どれくらい大きい方が良いでしょう?」



そこから【重力】の魔石をどのように使うか、飛行船の形状、材料、武装の有無や色々話を進めて行く。


話の中でライアは飛行船のモデルとして前世の知識を疑われない程度に出そうかとも思ったのだが、話をしていく内に前世の空気より軽いガスを使用した風船型の飛行船はこの世界では適さない事に気が付いた。



適さないというより…物の重量を無くし、好きな方向に重力を発生させられる魔法というファンタジーに対し、無駄に図体をデカくして何の意味があるのか?という至極当然の話だ。



(それに昔の飛行船は風の影響で結構事故も多かったらしいし、浮力を空気などで補わないなら寧ろ風の影響が少なくなるように体積は少なめにしたい)



その事に気が付いてからは、前世の知識をあまり宛てにはせず、この世界独自で運行が可能な物を考えるべく、リネットとモンドと一緒に頭を悩ませる。




「うぅ~ん……理想を語るのであれば乗員1000人ほどは欲しいのですけど、単純計算でそれに必要になる魔石は100個以上は確実です……それに仮にそんな飛行船が完成出来たとしたら必ず国王陛下にもお見せ…いえ、ご献上しなければと考えるならその倍……もしくはそれ以上なのです」



「……現状ワイバーンの魔石は大量にストックが存在してますし、これからも俺……アインス達が随時ワイバーンの討伐に行くので、一旦在庫の心配はしないで考えましょう……案を出すのはタダですし!」



「それもそうなのです……ふふふ、元々は余っている魔石をどうにかしようという話だったのに、今は在庫の心配とは面白い物なのです」





ライアとリネットは顔を見合わせて笑い合っていると、話をまとめながら簡易の設計図を起こしていたモンドは目を爛々とさせながら声をかけて来る。




「暫くは我々の設計段階が続くと思うけれど、先を見越して【働きアリハウスマン】に話を通しておいた方がいいんじゃないかな?私達は動力である【重力】の魔道具は作れても飛行船その物は作れないからね」



「それもそうですね…バンボさん達を通じてそこらへんは話しておきます。それに【重力】の魔石以外にもバッテリー替わりの無属性の魔石や他にも色々と必要になりそうな魔石などはウィスン分身体達に集めさせておきます」



現時点では未だ空に浮かぶ飛行船の話しかしていないが、この先実際に作るとなれば空の上でトイレや食事、お風呂などなど色々と必要な物は出て来る。



その際に【水】の属性魔石や【火】の属性魔石などが足りないなどとなれば目も当てられないので、比較的必要になりそうな魔石などの発注を王都のウィスン達に任せようという事になった。




「楽しくなってきたのですよ!」



「もちろん飛行船の設計と同時並行で様々な魔道具開発も進めて行くけど問題ないかな?」



「勿論です。寧ろ俺も色々とやってみたい事があるんですから一緒にやりましょうね?」




リネット、モンド、ライアの3人はワクワクが隠せないといった表情で顔を見合わせる。




「やったりましょー!」



「「おぉー!」」」








「………あのぉ…もうご夕飯のお時間で……で、出来れば食堂へ……」




ライア達が新たな目標に燃えていると工房の出入り口の扉から、おずおずとメイドのアルが声をかけて夕飯の時間を知らせてくれたので、話の続きはまた後で!と夕食を食べに向かうのであった。












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