カリスマの力











本来想定していた開拓ペースは数年がかりで進めて行く予定だったのだが、僅か3か月で街の外側である防壁が殆ど完成してしまった。



しかも、この世界には重機や前世で重宝されていた科学道具なんかもこの世界には存在しない中で、このスピードだ。さすがに何かおかしいと感じるライア。



誰か建築関連のスキルや木を切り倒す際に有効なスキルなどを持っている人が居るのかな?と思って色々話を聞いてみたのだが、特にそのようなスキル持ちはいなかった。



ただ、話を聞く上で少しだけ興味深い話も聞く事が出来た。




『……そういえば、最近いつも以上に脳が冴えるというか、身体の動きというかキレがめっちゃいいんすよ!おかげでほら、このデカい丸太もこの通りッッ!!』



話を聞いた若い男性は6,70キロほどはありそうな大きい丸太を担ぎあげて見せる。



若い男は特にレベルが高い訳でもステータスが高い訳でもないらしく、いつもはこんな事軽々と出来ないらしい。





そんな状態の人が他にも大勢いたらしく、防壁作りと森林伐採が凄まじい速度で進んで行ったという事らしい。



では、なぜそんな都合よく3000人もの人達がパワーアップをしたのかと言えば、一つだけ思い至る事があったりする。それは……。




「≪カリスマ≫の効果なのです?」



「恐らく、その可能性が高いのかなと」




ライアが思い至ったのは、ツェーンのアイドル活動を通じて取得した≪カリスマ≫のスキルの士気のアップ、つまりはバフ能力が原因ではないかと思い至り、その事をリネット達に相談しに来ていた。




「ですがそのスキルを取得したのはつい最近なのですよね?ツェーンに≪経験回収≫を暫くしてないはずですけど、レベルはどれくらいなのです?」




リネットは≪カリスマ≫を取得して半年も経っていないスキルレベルでこれほどの強化があり得るのか?と疑問があるらしく、スキルのレベルを聞いてくる。




「えっと、今は10レベルですね」



「………ん?ごめんなのです、上手く聞き取れなかったのでもう一度教えてほしいのです」



「10レベルですね。」



「……え??」



「いやぁ…自分でも驚いてるんですけど、めちゃくちゃ経験値が入るんですよね。≪カリスマ≫は≪索敵≫と一緒で、経験回収をしなくても経験値が入るのですでにこれだけレベルアップしましたよ」




ライアの発言を聞いたリネットは、ライアの言っている事をよく理解できないらしく、頭の上にハテナマークを幾つも飛ばしている。




だが、これはリネットが悪い訳ではなく、どう考えても≪カリスマ≫のレベル上昇スピードが異常過ぎるのが原因なのだ。





しかし、今までのライアの≪経験回収≫と≪分体≫での効率的なレベリングあっても、他のスキル達はこれほどのレベルアップは出来なかったというのに、なぜこの≪カリスマ≫だけがこれほどまで一気にレベルが上がったのか?実は、その疑問に関してはすでに答えを得ていたりする。




……この≪カリスマ≫なのだが、このスキルを取得出来る人種というのはかなり人を選ぶスキルだとは思わないだろうか?


前世で言えば俳優や女優、アーティスト関連とテレビに出る芸能人達が持ちそうなスキルであるし、誰もが簡単に取得出来る物では無さそうに感じられる。



現に≪カリスマ≫の取得条件というのが、【100の生物達から心の底から信頼、尊敬、崇拝、敬愛される事】と言った条件らしい。




つまり、自分に対して絶対のイエスマンを100人生み出すことが出来れば、このスキルが取得出来るらしいのだ……ある意味恐怖だが。








で、そんな≪カリスマ≫の取得条件をなぜライアが知る事が出来たかと言うと、実はアーノルド王子に聞いていたからだったりする。



カリスマ的存在というのは芸能人だけではなく、政治家や総理大臣なんかも当てはまる存在……つまりはこの国のトップである王族達も当てはまるので、アーノルドも≪カリスマ≫の事は知っていた。


というか、王族に生まれた者達の取得するべきスキルの中に≪カリスマ≫がリストアップされているらしいので、寧ろライアが取得していた事に驚かれてしまったくらいだ。




そして、アーノルドから≪カリスマ≫の事を教えてもらい、取得条件などが分かったのである。




「なるほどです……確かに自分の崇拝者を100人作るなど普通は無理なのです……ですが、それがレベルとどう関係するのです?」



「簡単に言ってしまえば、このスキルの経験値ってその崇拝者達から得ている事になりますよね?……であれば、その崇拝者がどんどん増えて行けば……」



「!……取得する経験値もどんどん上がって行くという事なのですね!」




現状どれほどライア(ツェーン)のファンが要るかはわからないが、少なくともツェーンが拠点にするという噂だけで王都から移住して来ようとする人達は間違いなくファンであることに違いない。



つまり少なくとも1500人以上はライアの崇拝者な訳で、それだけレベル上昇も早いという訳だ。



もちろん、ツェーンのファン以外にもリールトンの街にいるアハトやノインに恋をしている人達も要るし、エルフ達に関しては大多数がライア(分身体)に感謝の念を持っているだろうし、想像より多そうだが…。




ちなみに、この異常なレベル上昇をアーノルドに聞いたところ『それほど急速にレベルが上がるなど、どれほど人たらしなのだ?』と驚愕されたりした。(寧ろ、国のトップである王族が驚く成長スピードという所に自分も驚いた)





「う~ん……取得条件の難しさやレベル10に上がった事からバフの能力が向上しているって事でいいのです?」



「それ以外の可能性が分からないですしね……セラ達は何か変わった事はない?」



ふと、自分に恩義を感じ、使用人として未開拓領地まで付いてきてくれたセラ達にバフが掛かっていないかを確認がてら質問をしてみる。




「……すみません…私は特に何かが変わったようには感じませんでしたが…」



「ウチも筋肉の動きに変化があれば気付くと思うっすよ?」



「ひ、ひ、人と……目を合わせれるようになった…かな?……3秒くらい」




今この場にいるセラ、ヴァーチェ、アルが自身に起きた変化らしい変化はないと伝えて来る。

……アルに関しては、ただの思い込みの可能性が高いので、一旦考慮から外すが…。




「う~ん?セラ達はライアを尊敬くらいはしていると思うので…「ライア様を敬愛しております!!そこは絶対にです!!」……はいです…」



「大丈夫だよセラ!別に崇拝者だけがスキル効果の対象じゃなくて、仲間もだから!」




リネットの言葉にセラが反射的に否定するが、ステータスカードのスキル詳細には影響下、つまりは崇拝者以外に仲間にも可能と書いているので、バフをかけるのは必ずしもライアのファンでなくていいはずなのだ。




「……ん~?もしかして何か条件でもあるのかな?」



「もしかしてですが、バフ能力?の発動は任意なのではないですか?」



「任意?……確かにステータス欄には発動させるみたいな文面だったけど……俺、開拓民の皆にスキルを発動なんて……あ!」




ふと、3か月前の開拓作業が始まる前に『出来れば開拓民の皆にはぜひとも頑張ってもらおう』と独り言を漏らした記憶が蘇る。




「もしかして、あれが原因でスキル効果が発動した?だったら辻褄つじつまは合うけど…」




「恐らくそうですよ!決して私達がライア様の事を敬愛していない訳では無いのです!!」




「あ、はい……」




ライアはセラのあまりの圧に反論などはせず、ただ首を縦に振るだけであった。




それからひとまず、スキル効果に関してはセラ達にも効果が出るのかと試してみる事になり、見事身体能力の向上が見られたので、パワーアップ現象はスキルによるものだとわかったので、作業効率も上がるのだし、このまま継続していく事に決めた。






ちなみに、以前パテルに≪カリスマ≫のバフを試した時はパテルの士気?か何かしか上がらなかったのは単にレベルの問題だったらしく、今回パテルにスキルを発動させるときちんとバフが掛かっていた。



その時パテルが「……応援はしなくて良かったのか……そうか…」と何か悲しそうとも寂しそうともとれる表情をしていたのは気になりはしたが、いくら聞いてもはぐらかされるので、気にしない事にした。













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