~経営の章~
開拓の速度
――――開拓民達がリールトンの街に到着し、ライア達移動組は開拓地である火竜の山に向かって出発していた。
開拓民達は王都から総勢3000人とその人数を養う為の食料などを積んだ馬車がざっと300台。
そしてリールトンの街からその隊列に参加するのはパテルやセラ達、そして工房組を合わせた14人のライア組。
その他には大工組から、現地で屋敷を建てる為の場所決めや土台作りで先に来ることになった職人が数名随行しているので、結果的に新しい領地に向かう道に長蛇の馬車の列が出来上がっていた。
「……壮観だね……」
「さすがに開拓民だけで3000人は多すぎるのですよ……いきなり大都市をつくる訳でもないのですから数百人で足りたはずですよ?」
「それに関しては俺も想定外だったとしか……でも、開拓民の半数が移住希望者らしいですし、各地域の町や村から結構な移住希望者が出てるので、どの道小さい街くらいの規模は必要になりそうなんですよね…」
「そ、そうなのです?」
リネットと開拓地に関しての話で、言っておいた方がいい情報をライアは伝える。
実は、王都の開拓民募集は3000人でガゼルがストップしてくれたおかげで、王城からはきちんとした予算が下りる事は決まったのだが、どうやら開拓民になれなかった人たちの中に「ならその土地に移住したい!」と言い出す人が結構いるらしい。
それに、フェンベルト子爵の所為で壊滅的な被害を受けたカルアムの町やセラの故郷であるバートの町でも何故かこちらに移住したいという応募者が結構いる為、予想以上に大規模な開拓が必要になりそうなのだ。
ライア本人としては特に移住希望者達を拒む理由も無いので、もちろん受け入れる予定ではあるのだが、如何せん人が多いのでしばらくは忙しい日々が続きそうだと苦笑いを浮かべる。
「まぁ人口が多ければ多いほど領地は潤いますし、新しいダンジョンの素材なんかも手に入り易いので、ボクとしても歓迎ではあるのですけど、どうしてそれほど移住者が多いのです?」
「……まぁ……なんか……娯楽の少ない所に偶像をぶっこんだ結果でしょうか…?」
「はい?」
リネット達にツェーンの事は話してはいるが、あまり自分から話題にしたい事でもなかったので、王都にライブをしに行ってからどうなっているのかなどを伝えてはいなく、今現在王都や周辺の町などでライブを開いては熱狂的なファンを生み出している事などは伝えていないのである。
別に隠す事でもないが、さすがにそれだけの人数が
開拓地である火竜の山は、リールトンの街からエルフ達の住む神樹の森を通過し、広い平原を1ヵ月程進んだ場所にあり、山の周辺は広大な森に囲まれている。
ライア達開拓組は1ヵ月と長い旅路を終え、火竜の山に到着すると、早速開拓の為に森林伐採……と行きたい所であったが、最初は拠点づくりから開始である。
というのも本来この土地には、種類様々な魔物達がうようよと生息し、普通の人間では手も足も出ない魔物が住みついていたとされる場所なのである。
今現在は、火竜の暴走により比較的危険性のない魔物ばかりしか確認できていないが、また何時強い魔物達がこの山に戻ってくるかわからないので、自分達の安全の為に拠点兼防衛基地を作るのである。
「“アースウォール”!」
――――ドドドドッッ!
「よし、皆今だ!かかれー!」
「「「「「うぉぉぉぉー!!」」」」」
……と、その拠点づくりなのだが、本来3000人以上もの人間を生活できるだけの広さで、防壁や頑丈な柵などを作るとなれば、それこそ数か月もの時間を取られるというもの。
そこで急遽ライアの分身体達を使い、土魔法で防壁の土台を作り、そこに石灰や水などを混ぜ作り上げたコンクリの様な物を開拓民の人達に塗らせて、時間短縮になる簡易で丈夫なコンクリート塀を作り上げるという訳だ。
ただ、魔法で防壁を作るのは将来的に欠陥の危険がある為、街の防壁作りの際には使用するつもりはないので、それは皆に先に伝えておいた。
そんな基礎の作業自体は1週間もすればかなり大きめな防壁陣地を築く事が出来たので、かなりの時間短縮は出来たのだと思う。
自分達の拠点が出来たとなれば、いよいよ開拓本番である森林伐採が始まることになる。
今現在ライアが手に入れている情報では、大体5000人もの移住希望者が存在するし、移住してきた先で子供が生まれたりすればさらに人口は増えるだろうと、余裕を持って2万人の人が住めるだけの広大な土地を開く事を決めたので、木材を集めつつ土地を確保する為に数千人もの人海戦術で一気に開拓を進めて行く。
その開拓と同時進行で街の枠組みである防壁作りも進めていくので、森林伐採班ではない開拓民達に街の境界線である場所に土台の作成をお願いする。
そちらの作業は主に、ライアやアイゼル達お偉いさん達が街の防衛観点や自然災害を考慮して作った街の設計図を頼りに溝を作ったり、地面を均して行ったりとする作業になる。
「この作業は中々に時間のかかる作業ばかりだし、暫くは変わり映えのしない風景が続くんだろうな……、出来れば開拓民の皆にはぜひとも頑張ってもらおう」
作業に取り掛かる人達を見ながらライアは独り事を漏らし、自分もやれる事をしに行こうと足を進めて行くのであった。
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――――――――
――――――
「よぉーし!こっちだこっち!それを此処に流せ!」
「すまーん!骨組みの部分が少しだけ歪んでる!もう一度だ!」
「うぉぉぉぉぉー!!!ツェーンちゃぁぁっぁぁぁぁん!!!」
開拓を開始して、約3ヵ月……広さにして東京ドーム5つ分ほどであろうか?それほど広大な広さの空間の端にはご立派なコンクリート調の防壁が殆ど完成間近であり、今は防壁最後の区画にて1000人ほどの人達が恐ろしいスピードと連携で作業を進めて行っている。
「……え…?早過ぎて怖いんだけど……ってか絶対収容人数2万人どころじゃないよね?なんで設計図の縮尺の倍以上も大きい街作ってんの!?」
ライアは何故こうなった!?と驚愕の思いで目を見開くのであった。
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