~閑話、セラ日記、アンジェとセラ~
―――――アンジェの場合
私達はフェンベルト子爵に奴隷にさせられそうな所をライア様に助けていただいた。
私達9人はそれにとても感謝をしているし、どうにか恩を返そうとライア様に仕える為にシシリーさんから使用人としての仕事を教えてもらったりしている。
あのエクシアさんでさえ、なんだかんだ言いつつ仕事はしているし、ライア様の新しい領地にて書類仕事関係を任される事になっていますが、逃げだしたりせずにシシリーから色々と学んでいるようです。(まぁ文句や愚痴はもちろん言われますが…)
そんな皆がライア様の恩で動いている中、実は一人だけ違う感情で動いている人がおります。
「ホホゥ?今日の夜ゴハンはオニクですネ!嬉しいデスー!」
「あ、アンジェさん……よかったらコレも食べませんか……?」
使用人達専用の食堂にて、夕食の献立に歓喜の声を上げるのは、他国籍の女性であるアンジェさんです。
彼女は元々、アンファング王国とは一切交流の無い別大陸にある国の出身らしく、言葉が若干訛っているような印象を受けます。
これはアンジェさんから聞いたのですが、別大陸には様々な地域別の文化が根付いているらしく、様々な言語体系があるらしく、この大陸とはダイブ違うようです。
アンジェさん自身も最初はこの大陸の言葉を喋れなかったそうですが、この大陸に上陸してから仲間達に教えてもらいながら言葉を覚えていったそうです。
……そして言葉を覚えてすぐの頃に、フェンベルト子爵の息の掛かった盗賊達に襲われ、アンジェさん以外の人達は殺され、アンジェさん本人は私達と同じく捕まってしまったという訳らしいです。
なので、アンジェさんも私達と同じく、仲間を殺され、行き場のない自分達を救ってくれたライア様に恩返しをする為にここにいると思っていたのですが…
『ハイ?……ライアサンに感謝はしてますが、一生をササゲル?気はナイですヨ?』
『そ、そうなんですか?』
『ハイ!ライアサンのメイドサンをやるのは単純にオモシロそーだったからですシ!』
『お、面白い……』
と、どうやらアンジェさんの行動理念は面白いか面白くは無いからしく、根本的に自由な思想の人らしい。
これがアンジェさんという人の個性なのか、別大陸の人の考え方なのかはわからないが、私がその話を聞いた時は少しだけモヤっとしてしまって、若干アンジェさんが苦手になってしまったのは秘密です。
「ウマー!ありがとうアルー!そんじゃワタシの分もワケてあげるー!」
「あ……あの……野菜嫌い………」
「アハハハ!沢山食べないとオッキくなれないゾー!」
と言っても、アンジェさん自体はとても話やすい性格で、私達9人の中でもムードメーカーのような人でもあるので、ライア様以外の事ではよく話しますし、ライア様への思いは絶対私の方が勝っているのがわかっているので、特別避けたりするつもりもないです。
「あ、サラさーん!もしダイエットとかでオニク食べないなら貰ってもいいデスー?食べてあげマスー!」
「結構です~♪」
私はアンジェさんが少し嫌いです。
―――――セラ・ジュークスの場合
「≪分体≫!!……んぐッ……」
「まずは分身体だけに意識を集中して?セラ本体の身体の感覚を出来るだけ意識しないように」
「は、ハイ……」
今日はライア様に私の≪分体≫の練習を見てもらう日です。
朝起きてから、屋敷でのお手伝いを終わらせた後にライア様が待つ中庭にて、絶賛分身体の操作に慣れる為の稽古をつけてもらっています。
「……ッ……くぅ~……」
「落ち着いて……気持ち悪くなったらすぐにやめていいから、まずは慣れる所からだよ」
私はこのお屋敷に来てから、度々ライア様に稽古をつけてもらっていますが、未だ分身体の視点と自分の身体以外の操作感に慣れず、分身体を生み出す事くらいしか出来ていないにもかかわらないのに、ライア様は優しくそう言ってくださいます。
「……ッ……はぁッ!はぁ…はぁ……すみません」
「大丈夫だよ」
私は目が回るような感覚に耐えられず分身体を解いてしまいます。
今、私が訓練している≪分体≫のスキルは、世間一般には操作などは出来ず、精々が分身体を生み出して魔物達への囮に使う程度の役目しかない、使えないスキルとして有名です。
私が実家……ジェークス男爵家に居た頃は、貴族として有益なスキルを持つ事が一種のステータスの様な風潮があったりしたので、私が家で腫物扱いになるくらいは≪分体≫のスキルが使えないというのはわかるでしょう。
……さすがに、薬でおかしくなっていたとしても売られる程だったのは予想外でしたが…。
とまぁそんなくらい話はいいんです。
私が言いたいのは、そんな分身体を操作するという事すら諦められた≪分体≫スキルを言葉通り、手足のごとく使いこなしているライア様は大変素晴らしい人物という事です。
「ライア様は≪分体≫のスキルを使いこなすまでにどれほどの期間練習されたのですか?」
「ん~?一応今でも操作できる分身体の数を増やそうと頑張ったりしてるけど……分身体を操作する事自体はすぐに出来たよ?」
「そうなんですか!?」
どうやら、ライア様は分身体の操作に関しては特に苦労はされていなかったらしく、視点酔いと分身体の動かす感覚に慣れたらすぐにある程度出来たらしい。
「……私は才能無いのでしょうか……」
「あ、いや!これに関しては元々慣れていたって言うか……別に才能云々の問題ではないから!」
「慣れですか?」
ライア様は慌てたように言い繕いますが、ライア様が≪分体≫の練習を始めたのは5歳のスキルを貰ってからすぐだと聞いていたので、何時慣れるタイミングがあったのか疑問が生まれてしまいます。
ライア様は「と、とにかくこれに関しては慣れる事でしか解決法は無いから!さぁ!早速続きを始めよう!」とはぐらかされてしまいました。
どちらにしろ、私には練習を頑張るしかないのだと考えを改めて、訓練を再開するのでした。
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