~閑話、セラ日記、エクシアと双子姉妹の小話~











――――――エクシアの場合





使用人達の朝は早い。



それは何故か?簡単な事です。私達使用人の仕えるべき主人達よりも早く起きて、朝食や朝の準備を済ませておく必要があるからです。



なので、これからライア様のメイドになる為、ライア様にお仕えする為に勉強している私達もそれに習い、朝早くから起きる事にしています。



「……ぷひー……ぷひー……」



しかし、何事にも例外はある物で私達に宛がわれたとある一室にお昼を過ぎたというのに屋敷のお手伝いもせずに寝コケている少女が一人おります。




「……はぁ……エクシアさぁーん!!いい加減に起きてくださーい!」



「……ぷひー?………ぷひひー……!」



「寝息で会話をしようと試みないでください!私には全く通じませんから!」




私達9人の中でも特に怠け者であり、隙あらばお昼寝をしようと仕事をサボる、少しだけ自分の欲求に正直な子がエクシアさんです。




「………まだ眠いー…」



「昨日の休日を一日中ずっと眠りこけていたのにまだ眠いんですか……いい加減起きてシシリーさんの所に行かないとダメですよー?」



「うひぃぃ……」




こんな怠け者なエクシアさんですが、実はシシリーさんからとある才能を見込まれているちょっとだけすごい子なんです。



その才能というのが…。




「シシリーさん、エクシアさんが来てから仕入れの勘定計算を全部任せれるからとても助かるって言ってとても頼りにしてるんですから!」




サボり魔なエクシアさんは、なんとお金の計算が恐ろしく早いのです。



なんでも、エクシアさんの家は元商家だったらしく、家の方針でお金の計算方法を教え込まれたらしいのです。



ですが、エクシアさんはこの通りの怠け者体質なのは昔から変わらなかったようで、勉強などは嫌いだったらしく、家ではいつも怒られてばかり。



そんな怒られてばっかりで、睡眠時間を殆どもらえなかったエクシアさんは「なら計算をさっさと終わらせれば寝てていいんだね!」と逆切れして、数字を一瞬見ただけで計算してしまう暗算能力に目覚めたらしいのです。



……まぁその暗算能力は凄くても、計算が終わればすぐに眠りこけてしまうエクシアさんにご両親達は呆れてしまっていたらしいですが…。




「……どぉしてわたしがそんな事をぉ……」



「ライア様の新しい領地でもそう言った書類仕事はあるんですから、練習ですよ練習!」



「わたしはぁ本番だけでいぃ……」とだらけているエクシアさんを布団から引っぺがし、ライア様のお着替えをお手伝いする為に習得したお着替え術でエクシアさんをメイド服に着替えさせ、シシリーさんの所まで連れて行きます。




「うぁあ……働いたら負け……負けなんだぁ……」




「はいはい、では将来ちゃんと勝てるように今は頑張って働きましょう!」




エクシアさんは絶望の表情を浮かべますが、いつもの事ですので特に気にはしませんでした。














――――――――アルとエルの場合






「ライア様!見て見てー!クマの刺繍!」



「おぉ。すごい上手に出来てるね」



「えへへ~!」



今日は屋敷の仕事が少なくて、私達9人がお休みを貰いました。



ミオンさんやスロンさん以外は殆ど自分の趣味の為に出掛けたり、自分に宛がわれた部屋に篭って作業をしたりする中、エルさんとアルさんはどうやら刺繍をしていたようで、たまたま廊下を歩いていたライア様に自慢をしているようです。




「ラ、ライア様は、どんな動物が好きですか…?」



「動物……動物で言ったら犬…」



「いぬ…?」



「あ、いや……狼とかかな?(そっか、この世界は品種改良とか無いから、犬じゃなくて狼かな…?)」



「狼ですか…?随分と狂暴なイメージですが……今度作ってみますね」




どうやらアルさんは、ライア様の好きな動物を刺繍で作りたいようで、ライア様に質問すると照れたような顔をしつつ、やる気に満ちているようです。




……こう言ってはアレですが、いつもおどおどしているアルさんが照れながらも一生懸命に励む姿を見ると、何やら母性の様な物が溢れてきますね…。




「そう言えば、2人はもうここには慣れた?なんか流れで俺の使用人になるって決まったけど、2人やエクシアはまだ13歳だからね……何かやりたい事とか見つかったらきちんと言っていいんだからね?」



「あはは!大丈夫ですよライア様!私達は確かに他に選択肢は無かったかも知れないですけど、今の現状がすっっっごく楽しいので、不満なんてないですよ!」



「わ、私も……まだ上手く話せない人もいるけど……ライア様のお世話をセラさん達と一緒にやるのは凄く安心するし……出来れば……その…捨てないで欲しいです……」




ライア様のお気遣いに、アルさんとエルさんは双子にしては全く違う反応をしつつも、根は一緒であるらしく、現状に不満は無いとライア様の目をしっかりと見据えて発言する。



……どこか遠くで「わたし……働かなくてもいい?」と聞こえた気もしますが、空耳だろうと聞かなかった事にします。




「そうか……なら、俺も2人や他の皆が居心地の良い場所を作れるように頑張るよ」




「「はい!」」




ライア様の優しいお言葉に笑顔のアルさんとエルさん……かく言う私もライア様の言葉に感動しています。




「……ライア様、お優しいですね」



「そうですねぇ……でも、余計に出て行きづらくなってしまいましたね……」




私は、ライア様とアルさんエルさんの居る廊下の外で、ルビーさんの畑仕事を手伝っていたのですが、たまたま窓から見えない位置にしゃがんだタイミングに、ライア様方の会話が始まってしまったのです。



別に普通に立ち上がって会話に入れば良かったのかも知れませんが、何となく入りずらいタイミングってありますよね?



そんな訳で私とルビーさんは畑に中腰のまま、ライア様とアルさん達が去るのを壁越しに感じるまで隠れていたのでした。





「………腰が…」


















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