~閑話、セラ日記…ルビーとスロンの小話~











――――――9人の乙女達





私の名前はセラ・ジェークス……しがない辺境の男爵家の元令嬢です。



元、という部分に関してはあまり語りたくはありませんが、簡単に言ってしまえば家族の縁を切られたからですね。



そんな縁を切られた私はなんやかんやありつつ、奴隷の身に落ちる寸前の所で、現在私が仕えているライア様に救われたというのが大まかなあらすじでしょうか?



で、そんなライア様に救われた私は何をしているのかと言いますと……。




「メイドたるもの、仕える主人のお洋服選びに妥協などはしてはいけません!あなた方が仕えるのはあのライア様ですよ?」



「「「は、はい!」」」




ライア様に救われた私以外の8人と一緒に、ライア様のメイドとなるべく勉強の日々です!



……まぁ少しだけ教えてもらっている事に偏りがある気は否めませんが…。













――――――ルビー・ボルトの場合






「セラさーん!このお花、ライア様に似合うとおもいませんか?」



「これはペチュニアですか?…カラフルで綺麗ですね……」



今日は仲間のルビーと一緒に、リールトン伯爵家の家で飾る花を買いに街まで来ています。



ルビーは比較的大人しい性格で、年齢も近く、同じ男爵家出身という事もあり、私にとってとても話しやすい子です。




「でも今日はライア様の花を買いに来たのではなく、伯爵様のお屋敷に飾る花を買いに来たのですから」



「ふふふ、そうですね。少しばかり花を愛でれて興奮してしまいました」




「……ルビーは草花が好きだものね」




実はこのルビーという女性はライア様に助けられ、リールトン伯爵家の屋敷に住みこませていただいた日からほぼ毎日、屋敷にある小さな家庭菜園用の畑で花などを愛でるほどの筋金入り。



その性格故なのかどうかはわかりませんが、ルビーの持つスキルに≪緑の手≫という畑や花壇の世話をする際に役に立つ特殊スキルがあります。



前にスキルを使用している所を見せていただきましたが、スキルレベルが高いのかルビーの手が触れた花のつぼみがぐんぐんと成長していき、すぐに満開の花を咲かせる光景に、ものすごく驚いてしまった記憶があります。




そんなルビーの草花好きが高じてなのか、花選びのセンスもある事から、こうして屋敷に飾る花などの買い付けを任される事が多いようです。




「はぁ……私はもう花などを愛でる事も出来ずに一生を終えるのかと絶望しておりましたが……ライア様には本当に感謝しかありません……」




ルビーはフェンベルト子爵邸での事を思い出しているのか、自分達を助けてくれたライア様に改めて感謝の意を確かめるが如く、物思いにふけるルビー。



「……そうですね……それは確かにすごく同意なのですけれど、いい加減そのペチュニアを置いてくださいね?」



「あら、私ったらうっかり………ダメかしら?」



「はーい早く行きますよー」




花が好きすぎるのもアレだなと思いながら、私はルビーを引っ張って買い物の続きをするのでした。











――――――スロン・マクデルの場合







「あ、ライアさん!お疲れ様です!」



「ん?お疲れースロン、セラ」



「はい、ライア様」




スロンという女性は私より1歳年下の女の子だけど、物怖じしないタイプで何にもでも興味を持つ、少しだけやんちゃなタイプ。



「なぁライアさん!ライアさんの新しい領地ってダンジョンがあるんでしょ?どんな所か聞いてもいいですか?」



「こらスロンさん?あんまりライア様を困らせたらダメですよ?」




「あははは、構わないよセラ……ダンジョンの事はまだ中を調べてないからあまり―――」




セラの注意もライア様は「変にかしこまられるよりはいいよ」とスロンの言動をお許しになってしまうので、私もあまり強くは言いませんが、スロンにはもう少しライア様を敬って欲しいと思ってしまいます。



「ならさならさ!ライアさんと今度ダンジョンに潜らせてもらえたりしないかな?あたし、一度でいいからダンジョンに潜って見たかったんだけど、家ではそう言うの許してもらえなかったし!」



「う~ん?スロンのステータスとかを考えてもあんまり危ない事はして欲しくは無いんだけどね……まぁ新しいダンジョンの魔物強さ次第かな?」



「ホント!?お願いねライアさん!」



「ライア様、さすがにスロンを甘やかしすぎなのでは?」




私の横で大喜びの感情を体で表現しているスロンを横目に、少しだけジェラシーに似た感情を覚え、ついライア様に当たってしまう。




「ごめんごめん……明日セラのスキル練習に付き合うからさ?」



「……約束ですよ?」



私はまだ時々しか≪分体≫の訓練をつけてもらって居なかったので、これ幸いにとライア様と約束を取り付けます。




「ジー……」



「……あ、スロンさn――」



――――ダッ!!




ライア様と私のやり取りを先程とは逆に、スロンさんがジーと見つめていたので、その視線に気づいた私はスロンさんの方へ顔を向けると、スロンさんは素早い動きで何処かに走り去ろうとする。




「皆にセラが抜け駆けしてたってばらしてこよー!」



「ちょッッ!?スロンさん!?」



どうやらスロンさんは私がライア様と約束事を交わしたのを他の仲間達に告げ口しに行こうとしているようだったので、色々と誤解を生ませる前にスロンさんを追いかける事にする。




「ラ、ライア様!!申し訳ありません!私はこれで!!……スロンさーん!どちらかと言えばあなたの方が先に抜け駆けしてるでしょー!?」




私がスロンさんをすぐさま追いかけると、後ろから「あはは」とライア様に笑われてしまっていたので、とても恥ずかしい思いをした一日でした…。





ちなみにスロンさんの足は速く、追いつく事が出来なかったので、無事に皆には誤解を与えてしまったのは余談です……。
















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