~閑話、5歳になったプエリの小話~前編













―――――――お誕生日





「「「「お誕生日おめでとぉー!」」」」



「えへへぇ……ありがとー」




今日は、家族であるプエリの5歳を祝う誕生日であり、プエリがスキルを貰える日でもある。




「これでプエリちゃんにもステータスが確認できるし、今までの勉強も報われるね」



「うん!それにスキルがつかえるようになったら、ライアねぇちゃんのためにがんばるよ!」



「アハハ、プエリちゃんには自分の為に頑張って欲しいけどね……ありがと」



プエリは、兄であるクストが己のスキルである≪素材鑑定≫をライアの為に活用しようとレベル上げに勤しんでいるのを知っているので、プエリ自身もライアに何かしたいとそんなことを言いだす。



ライアはプエリの人生なのだし、クスト同様無理をさせたくはないのだが、プエリの気持ちは素直に嬉しいので笑みがこぼれてしまう。




「ズィーベンとクストは村長の所にプエリを連れて行くだろ?あまり迷惑はかけないようにな?」




「「「はぁ~い」」」




とぉさんの言葉に即座に返事を返すと、プエリとクストとハモってしまい、なんだかんだプエリの字の勉強を教えていた手前、ライアも楽しみにしていたのかも知れないと思考する。




ちなみにだが、ヤヤ村にいる分身体はフュンフ、ゼクス、ズィーベンの3人なのだが今この場にいるのは3人のうち唯一の女形であるズィーベンのみで、他の2人は違う場所に行っている。



男型で、いつもとぉさんとクストと畑を手伝っているゼクスは朝早くから魔物狩りに森へ行っており、弟のラスリ専用のフュンフは子供部屋にて、ラスリに付きっきりで世話をしているからだ。




なので、家のお手伝いが主な役目のズィーベンがプエリの勉強を見ていたし、日中にプエリのステータス鑑定について行けるのはズィーベンだったという訳だ。




……ちなみに、弟のラスリが駄々をこねている訳でもなければ、寝かしつけようとしている訳でもなく、眠っているラスリがいつ起きても傍に入れるようにフュンフを待機させているだけなので、フュンフに行かせる事も出来るが、それは兄としての矜持として頑固として譲らないが。




「えへへ~はやくスキルってどんなのかみてみたいな!」



「……うん、そうだね」



「頑張るんだぞ!」



「ふふふ、いいスキルを貰えるといいわね」



プエリの屈託のない笑顔を見て、どうかプエリの人生を豊かにしてくれるスキルが貰えるようにと祈願をする保護者達であった。















――――――――――

――――――――

――――――









「「お邪魔しまーす」」



「あぁ、いらっしゃい。プエリちゃんもお誕生日おめでとうね」



「うん!」





ステータス鑑定ではお馴染みになったヤヤ村の村長の家を訪ねると、すぐに家の中に案内をされ、今日5歳の誕生日を迎えたプエリにお祝いの言葉を送ってくれる。




ライアはすでに自分のステータスカードを所持はしているのだが、クストのステータス鑑定やプエリの勉強の一環などでよく村長の家に訪ねる機会がよくあるので、なんだかんだ村長とはよく会っている。



「……そう言えば、ライア君もこの間16歳になったのだろう?誕生日おめでとう」



「あ、ありがとうございます……覚えてたんですね」



実はライアもついこの間誕生日を迎え、既に16歳となっているのだが、ステータスを鑑定するアレも無いし、ライア本人はリールトンの街にいるからと特に村長の所に行ったりはしていなかったのだが、村長はライアの誕生日を覚えていたようで、ズィーベンにお祝いの言葉をくれる。




「あははは、ライア君は色々と気にかかる子だからね、誕生日位覚えていたさ……さて、まぁ座っていてくれ、今ステータスカードを持って来るから」




村長の言葉に(いい意味で気にかかってくれてればいいけど…)と少しだけ照れつつ、ステータスカードを取りに行く村長を見送る。



元々今日の事は前々から伝えていたので、準備をしていたのかすぐに村長はリビングに戻ってきて、プエリの手にステータスカードを手渡す。




「い、いくね?」



「頑張ってプエリちゃん」



「………ッ!」




いざ自分のスキルを知るとなると、プエリも緊張してしまうのか、ズィーベンとクストの方に視線を向けて来るが、ズィーベンもクストもそんなプエリを応援するように頷く。





「……ふぅぅ…………わッ!?」




ステータスカードを握っていたプエリは、何かに驚いたかのように目を見開き、ぼーっとする。



「……ステータスが出たかな?」



「……あ、うん!これがステータスなんだね!」




どうやらステータスはキチンと表示されているらしく、ライアの言葉に反応してから、自分のスキルがどんなものなのかを確認する為に、プエリはステータスが見えているであろう虚空を真剣に見つめる。




「……えっと……≪武王≫?……≪剣術≫に……≪経験回収≫!ライアねぇちゃんとおなじのが2コもある!」



「おぉ!プエリやったね!ライアさんと同じスキルだ!」




「いやいやいや!どう聞いてもその≪武王≫って方が良さげなスキルに聞こえるけど!?」




プエリとクストは少しばかりライアの事が好きすぎるきらいがあるのか、ライアと同じという理由で喜んでいるが、どう考えても≪武王≫というスキルの方が当たりくさい。




「……?そうなの?」



「え?いやぁ、まぁ……確かにプエリには私達分身体がついているから≪経験回収≫は大当たりの部類だけど……」




≪剣術≫に関しては特殊スキルでは無い為、後から取得できるスキルなので特に触れはしないが、≪経験回収≫の方に関しては、本来≪分体≫を持たない者にとってはかなり微妙なスキル。



しかし、プエリにはライアという≪分体≫持ちで、今では25人もの分身体を操る経験値回収のスペシャリストが付いている。(この時点では≪分体≫は25レベル故)




ライア自身の効率は落ちるかもしれないが、ヤヤ村に居るズィーベン達3人の経験値を分け与える事が出来るので、プエリの≪経験回収≫は大当たりになるのだ。





「まぁ、そっちはいいよ……私も聞いたこと無い≪武王≫ってスキルが、字体的に使えるスキルかは知っておきたいし、それがどんなスキルか見てもらってもいい?」



「うん!」




プエリは再びステータスに目を移すと、新しいスキルである≪武王≫のスキル説明を教えてくれる。




「えっと……“武具の扱いや威力、それに武術関連のスキル効果の向上。レベルの上昇に比例して効果も向上”だって」



「……武術関連のスキル……≪剣術≫や≪弓術≫の効果を上げるスキル?スキルでスキルを強化って、聞いた事無いけど……」




ズィーベンの言葉に共感するように村長も頷いていたので、恐らく村長も知らないスキルなのだろう。



「……よくないスキルだった?」



考え込むズィーベンの姿にもしかすると、自分のスキルは使えないスキルなんじゃ?と不安になってしまったプエルに慌てて誤解だと否定の言葉を向ける。



「あ、ごめんごめん!良くないスキルなんてとんでもないよ!ただちょっとどんなスキルなのかなって考えてただけだから」



「そう?」



「うん!寧ろ聞く限りじゃすごい強いスキルの可能性が高いし、プエリはとっても凄いよ!」




ズィーベンの言葉が聞いたのか、プエリは機嫌がよくなったのか「えへへ~」と笑みを溢す。




(……恐らく戦闘系のスキルだろうけど、一応リネットさんに前例なんかないかを後で確認しておこう……)




喜ぶプエリの笑顔を見ながら、そんなことを考えるライアであった。












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