未来へ













バンボ達との話し合いが終わり、屋敷を建てるのに必要な木材や道具などを用意しておくとバンボ達は話して、その日は宿に帰って行った。




恐らく屋敷を建てる為に必要な物が揃うのはまだまだ先だろうが、開拓民が土地を開拓するまでにも時間が掛かるので、そこはあまり気にしなくてもいいだろう。












「……では、開拓民が到着し次第リールトンの街を出発する事に致しますね」



「あぁ、ライア君であれば大丈夫であろうが、気を付けて行くんだよ?」



数日後、ライアは王都から開拓民がもうすぐ到着予定とアイゼルから知らせを貰い、領主邸にお邪魔していた。



開拓民は総勢3000人の大所帯なので予定より遅い到着となったが、急ぎでもないので特に問題は無く、予定通りに新しい開拓地に向かうとアイゼルに伝える。




アイゼルも元々聞いていた事なので特に否定などはせず、ライアの無事を祈ってくれる。





「しかし、まだ工房も何もない場所にリネットがついて行くと聞いた時はさすがに驚いたよ……ライア君との仲も良いようで私は嬉しいよ」



「えっと……あははは……」




アイゼルはリネットがライアと一緒に居たくて、≪錬金術≫の実験を我慢していると勘違いしているようだ。



実際には、ライア本体と一緒に居る事で改造人間ホムンクルスの観察、実験をする為なのが本意なのだが、それを伝えるのは無粋であろう。





ちなみにだが、今回開拓民と一緒に新しい領地に向かうのは、セラ達9人とパテル、リネットとリグにモンドの≪錬金術≫工房組3人が総出で向かう事になっている。



もちろんアインス達分身体達も多く連れて行くが、きちんとリールトンの街に残す分身体達もいる。



リールトンの街に残す分身体は冒険者ギルドのアハト、ノイン、それとシェリア付きの分身体の3人と念の為にリネットの工房で傷薬や工房の掃除、管理をする為に分身体を1人残した計4人がリールトンの街に残す分身体達である。



………ツェーンに関しては、だいぶ前にライブやらツアーが忙しくなったので、すでに受付業には入っていないし、何なら今はフェンベルト子爵の尻ぬぐいではないが、カルアムの町(フェンベルト子爵の領地)に復興祈願ライブを行いに行っているので、ここには居ないのであった。




(なんだかんだツェーンが一番アグレッシブに動いてる分身体だけど、そのおかげで開拓民もすぐに集まったしなぁ……何気に一番役立ってる説まであるね)




成り行きで流されるままアイドルの様な物をしているが、人の喜んでいる姿は見ていて嬉しい物があるので、辞めたいという気持ちは今更湧き上がっては来ないのが、少しだけライアの不思議に感じる所だったりする。







「そう言えば、新しい領地の名前は決めたかい?町が出来上がってからでも遅くは無いが、ライア君の新しい領地の名前は早く知りたいからね」




「あぁ……すいません、まだ決まってないです……。早い内にリネットさんと話し合って決めようと思っています」




アイゼルの言葉に、未だ新しい領地の名前を決めれていない事実を思い出される。



実は、これはついこの間の事なのだがアイゼルに『領地の名前はもう決めてあるのか?』と聞かれて、なにがですか??と素で返してしまった事が事の始まりである。



どうやら、新しい領地の名前は領主になるライアが決めるのが通例であり、町の名前なども決めないといけないという話らしい。



ライアはそう言った大事な事は国王などが決めるのでは?と思っていたので、特に何も考えておらず、アイゼルの言葉にキョトンとした顔を向けてしまったという訳だ。




(さすがに、自分で名前を付けるって教えてくれなきゃわからんって……確かに、領地関連の書類にサインする時に領地の名前の欄が空欄だったから不思議だったけど……そのうち国王様が決めると思うじゃん!)




そう言った訳で、町などが完成して流通が始まるまでには領地と町の名前を急遽考えなければいけなくなったのだが、すぐに思いつく訳もなく、アイゼルには待っていてもらっているのであった。




「そうか……リネットと話し合って決まったらすぐにでも教えるのだよ?」




「わかりました」




アイゼルはまるで自分の事のように楽し気な雰囲気を醸し出すのを見て、ライアは(この人も結構子供っぽい所多いんだなぁ)と感心しながら、執務室を後にする。


















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アイゼルの元から工房に帰って来たライアは、リネットや新しい領地に向かうメンバーを呼び寄せ、もうすぐ出発する事になると伝える事にした。




「一応、食料や野営に必要な物なんかはアイゼル様が馬車と一緒に用意してくれるそうだけど、皆自分の必要な物とかは用意するようにね」



「ボクはお父様に頼んで必要な物は積んでもらえるので大丈夫なのですけど、忘れ物でもすれば暫く戻って来れないですからね!」



リネットは特に問題は無いそうだし、パテルとリグはあまり私物などを持っていないのか、特に気にした様子もない。



セラ達9人娘達は「「「わかりました!」」」と言って、化粧水がどうのや髪がどうのと話し合っていたので、この後化粧品関連の買い物に行くのだろうと予想できる。



モンドに関しては王都から持ってきた物をそのまま持って行くだけなので、特に問題は無いそうだ。(改造人間ホムンクルスの実験が出来れば、他の物は最悪無くてもどうとでもなると言ってはいたが)






「……皆、ありがとうね。俺について新しい場所に付いてきてくれて」



ライアは開拓地へ準備を怠らない皆に目を向け、自分に付いてくることに疑問を持とうともしない事に心が温かくなり、皆に感謝の言葉を伝える。




「……?当たり前の事だろ…?」



「ライア君、いきなりどうしたんだい?」



「…?ライア様に仕えるんですから、離れる訳には行きませんが…?」




パテルやモンド、ミオンが「何を当たり前の事を?」と言った目で見て来て、何とも恥ずかしい気持ちになるが、他の女性陣やリグは何となくライアの気持ちを汲み取ってくれたのか、微笑ましい物を見るかの様な目を向けて来る。



「……ッッ!?……なんでも無いので気にしないでクダサイ……ッ…」



「あははは!ライアは何気にロマンチストだったのですよ!……これからも一緒に頑張って行くのですよ」



そんな空気を生み出してしまったライアは恥ずかしさに耐えられずに弱気になるが、リネットが敢えてからかいつつも、優しい笑顔で語りかけて来る。




他の皆も「私もずっとついて行きますよ!」や「向こうでは養ってくださいね」などと冗談交じりでリネットに賛同してきて、最初はどういう事かわかっていなかったパテル達も次第にライアの気持ちを理解をしたのか「なるほど」とライアの方に笑みを向ける。



そんな皆の反応に、ライアは嬉しい気持ち半分と恥ずかしい気持ち半分で顔を赤らめて、何とか笑顔を返す事が出来た。




「あは、ははは……えっと、これからもよろしくね……」



「「「「はい!(あぁ)(うん)」」」」





ライアは恥ずかしい気持ちになりながらも、大切な仲間達との未来に胸を熱くさせるのであった。













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