不老不死の研究?














「いやぁすまない……私の研究テーマに大きな進展が望めるかもと興奮してしまってね」



「はぁ……」



黒ライアの詳細を聞いて興奮していたモンドは、ようやく落ち着いたのかそうライアに謝罪をしてくる。



「でも、モンドさんって薬関連を専攻する錬金術師ですよね?どうして人体改造が役に立つと?」



モンドは薬物や毒物を専門とした錬金術師、そんなモンドが人体改造……いわば人間の身体を魔道具に見立てた技術にこれほどまでの関心を向けられるのに違和感があった。




「確かに私の専門は薬物関係ではあるが、私の錬金術師としての大目標は別なんだよ」



「大目標…?」



「あぁ、私が掲げる大目標……それは人体に害のあるものに対しての絶対耐性…いや、それを超越した肉体への進化。つまりは“不老不死”になる事が私の目標なんだよ」



「不老不死……」




モンドの言葉に、前世の記憶でのアニメニティや創作の物語の中に出て来る永久の時を生きる人間の話を思い浮かべる。



ライアの知る不老不死とは首や心臓を貫かれようと死なず、身体が塵の一つでもあれば元の状態に再生するとんでもない化け物だ。



そんな化け物の存在にモンドがなりたいと思っているのかと少しだけ引いてしまうが、モンドは真剣な表情から少しだけおどけた表情へと変え、話の続きを話し始める。




「……まぁ不老不死になる、もしくはなる方法を確立させるのが私の夢だが、仮にそれが出来てしまえばそう遠くない未来で人間という種は繁殖をやめ、永い時の中に死を追い求めるようになると考えているから公表はするつもりは無いし、どんなに頑張ろうとも精々身体が少し頑丈になって、寿命が少し伸びる程度にしか出来ないとは思っているけどね」




「あれ?そうなんですか?」




「まぁ不老不死に至る事は色んな錬金術師達の至上命題な所があるし、別に私以外にも研究をしている人は多い……恐らく他の人も私と同じ考えだろうし、とりあえず目標として掲げている人も多いんじゃないかな?」





モンドの話では“不老不死”の研究自体は昔から行われているらしく、様々な分野の錬金術師達がちょくちょく研究しているらしい。



と言っても殆どの錬金術師が完全なる不老不死になる事は不可能とわかっていての研究なので、お遊び感覚みたいな物らしい。




「……意外に皆さん現実的なんですね……」




「ははは!……まぁたまに本気で不老不死を目指して、寿命などが無いとされる魔物などを直接体に取り込もうとして死んでしまう人もいるけど……概ね皆まともだよ」




「え!?死人出てるじゃないですか!?」





「本人たちも覚悟の上だろうからしょうがないよ」と呑気な事を言いながら笑うモンドに少しだけ黒い部分を見た気がして、表情が引きつってしまう。





「……まぁ、錬金術師界も色々あるんだと勉強になりました……あれ?でもモンドさんは大目標として掲げているだけで不老不死の研究はそれほど取り組んでいないんですよね?なのにどうしてあれほど興奮を?」




今の話的にモンドは本格的に不老不死を目指している錬金術師には聞こえず、精々が不老不死に成れる可能性がほんのわずかにあがった程度で大興奮する人だとは思えなかった。




「ん?あぁ……ライア君は少しだけ勘違いをしているね。私は薬物専門の錬金術師だが、それは不老不死の研究をするでしかないのだよ?」




「……え?……それって……」




「うん…実はさっき屋敷の中で話した≪状態異常耐性≫スキルは自分の身体で不老不死の実験をした毒薬や薬物の影響によるものだよ。まぁ、私は先程言ったように不老不死ではなく、頑丈な体と少しばかりの寿命の増加が目的の実験だけどね」




なんと、てっきり薬の効果が発揮されるのかの確認で≪状態異常耐性≫のレベルが上がっていると思っていたが、モンドもある意味自分の身体を使った人体実験をしているマッドよりなサイエンティストだったらしい。



報告会の時にライアを心配して近づいてきて、とてもいい人で常識人だと思っていたライアには衝撃の事実で、思わず動揺してしまう。




「だから私はライア君の自分の身体を素材として考える人体改造は私の研究に大いに参考出来ると思うんだ」



「そ、そうですか……」




意気揚々とライアにそう語りかけて来るモンドの圧に少しばかり押されてしまうライア。




「だから私も君の新しい領地に引っ越そうと思う」




「……え”ッ!?」




モンドはこれは決定事項だよとでも言いたげにそう言い放ち、「1、2か月後には工房を片付けていくから、その時は色々とよろしくね」とにこやかな顔で今後の予定を話す。



モンドに返事を返す前に、人体改造の考察をしようとセラ達に世話をされている動けない黒ライアの元に走り去って行ってしまう。




(……わーい、今日だけで10人も移住者を集めれたゾー……)




モンドがマッドなサイエンティストである事を気にしなければ比較的誠実な人物である事は間違いないので、特に問題は無いだろうと自分に言い聞かせて、新しい移住者の存在を喜ぶライアであった。




なお、黒ライアの元に行ったモンドは黒ライアを見つめる目に軽い狂気でも混じっていたのか、世話をし始めていたセラ達に若干怯えられていたがひとまずそれは無視する事にした。














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