巨人の化け物6















――――――ライアSide







「“ファントム”ッッ!!」




ライアは新しい試みを思いついた後すぐに、化け物の注意を魔法から逸らす為に幻魔法で作り出した幻影を20人程生み出させる。





「■■■■■■ッ!?!?」



さすがに分身体5人の他に、同じ顔の人物が一気に増えれば相手も混乱したのか、戸惑いの様子を見せる。



ちなみに今回は魔力の無駄遣いは出来ないので、火竜討伐戦の時とは違い幻影に魔力を潜ませるといった事はせず、ただただ囮として生み出したのだ。






困惑している化け物を尻目に、魔法担当である分身体3人を化け物の死角に移動させ、魔法の準備をさせておく。




「■■■■■■ッ!!」



―――ダァァンッッ!!



「■■■■■■ッ!?」



―――ズダァァァンッッ!!





化け物は幻が幻と気付いていないのか、足元を走り回る幻のライア目掛けて何度も攻撃を仕掛ける。



しかし、その攻撃は何も意味は成さず、幻影達は消えたりはしない。



だが、消えはしないからこそ攻撃をしても意味は無いと学習されてしまえば囮の意味が無くなってしまうので、幻だとバレる前に勝負を決める必要がある。




(……場所は…悪くない。後はまた化け物の動きを抑え込むだけ!!)




分身体達は化け物の傍まで気付かれずに近寄って行き、後は魔法を放つだけというタイミングになる。




『ギロッ!!』



その瞬間、化け物は何かを感じ取ったとでもいうのか、背後に回っていた分身体達3人の方に振り向き、鋭い目で睨んでくる。





「「「ッッ!?……“ウォーターブレイザー”ッ!!!」」」



――――ズバァァンッッ!!



「■■■■■■■■■■ッッ!!!」




化け物はさすがに今のタイミングの魔法に対処は出来なかったのか、足を再び切り落とされ、地面に倒れ込む。



「……もう幻影の囮も効かないかもしれない……なら、ここで決めなきゃ後が……ないッ!!」




もしここで失敗でもすれば、もうライアに残されているのは分身体達の経験値と周辺の建物、それに化け物の元となった男すべてを犠牲にした大魔法での殲滅しか出来る事はない。



そんな選択肢は取る訳にいかないと必ず成功させてみせると気合を入れて、地面に押さえつけられている化け物の背中に飛び乗る。




「……分身体の身体だからいいけど、生身の身体だったら狂気の沙汰だな…ははは」



化け物の背中の上には分身体が2人おり、1人が化け物の心臓部分に手を当て、もう一人が分身体の背中に手を付ける。




(……これは化け物に触れる分身体の身体を素材として考え、化け物の元凶となる魔石を抜き出すのに最適な体に作り替える……)



「「≪錬金術≫ッッ」」



――――ドクンッッ!!



「うぅッ!?」



分身体に≪錬金術≫をかけた瞬間に、ライアは奇妙な感覚に襲われる。



(……やっば……如何に分身体は感覚が薄いって言ってもさすがに体を作り変えられるのは……なんか気持ち悪いな……)



身体を作り替えられる感覚というのは、恐らく凄まじい痛みや気が狂いそうになる感覚がするはずなのだとは思う。



だが、ライアは分身体という触覚や味覚、痛覚といった感覚の殆どを持ち合わせていない肉体のおかげで、ただただ気持ち悪いと感じるだけで済んでいるのであろう。




そんな身体を作り替えられている感覚に見悶えていると、≪錬金術≫を賭けられている分身体の身体に変化が起きていく。




「……ハハハハ……中二病全開だね……」




分身体の身体は化け物の身体を弄りやすくする為なのか、どんどん肌の色が黒く染まって行き、腕には錬金術のイメージを言語化した様な文字の刺青が浮かび上がり、身体には服が邪魔でよくは見えないが、腕に向かって幾つもの線が伸びているように見える。




「■■■■■■ッ!!」



「っと……それよりも」




そんな姿になった分身体は己の変化を確かめるように目を動かしそうになるが、化け物が拘束を逃れようとするのを見て、すぐさま自分のしなくてはいけない事を思い出し、再び化け物の背中に両手を付ける。



「待たせたね……今元に戻してあげるから……≪錬金術≫ッッ!!」




異形の姿に変わった分身体が≪錬金術≫を発動させた瞬間、今までの≪錬金術≫とは比べ物にならない程、スムーズに化け物の中身を変革させれる事に気付く。




(……あぁ、わかる……俺は今、この化け物以外の物に≪錬金術≫をかける事が出来ないんだ……そうなるように俺が改変した……この分身体はこの化け物の身体に特化した魔道具作品なんだ…………リネットさんに言ったらどう思うだろう……さすがに引かれるかな?)




自分の行った人体実験の成果に思わず今すぐリネットに自慢しに行きたくなってしまうが、さすがに人体実験というアブノーマルな題材にさすがに自重しようと思いなおす。




「■■■■■■■■■■■■ッッ!!??」



「っと、そうだね、ごめんごめん……今治すよ」




思わず、化け物の身体に意識を溶け込ませていると、化け物が悲鳴のような声をあげたので、正気に戻り、さっさと人間の姿に戻してあげようと作業を済ませる。




「……“剥離”…“回収”……」



「ッッッッッッ!!??………」



―――ずるぅ……



「よし、これで大丈夫」




化け物は、体内に埋め込まれた魔石をあっさりと剝がしとられ、声なき悲鳴を上げると同時に、肉体の元となった男の肉体を再構築させ、化け物の身体から排出させる。




「……服はさすがにどうにも出来なかったし……ひとまず、我慢してくださいね……」




つい、化け物から排出された全裸の男に目が行き、着させる服なども無かったので、聞こえていないだろうが、申し訳なさそうにそう言葉を告げるのであった。




「ハァぁ………ひとまず、我々の勝利だぁぁぁ~……な~んて」




化け物の死体?の上でそんな勝鬨の様なセリフを冗談交じりに言いながら、やっと戦いが終わったのだとライアは肩の力を抜くのであった。


















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