巨人の化け物5
ライアが火竜討伐戦の時に使用した大魔法【ポ・セイドン】は、大魔法と名を付けてはいるが別に正式名称とかではなく、ライア自身が分身体複数体を使って発動させる魔法なので勝手に名付けただけである。
この魔法は、分身体を操る≪分割思考≫で分割したそれぞれの思考を“詠唱”という物でイメージを補完し合う事でより大きな効果をもたらせる技術により成功した物だ。
…では今回の≪錬金術≫での失敗した要因を考えよう。
単純に考えれば単なる実力不足、レベルが足りなかったと考えるのが普通なのかもしれないが、仮にそれが正解なのであればこの戦い、ライアに勝ち目は無くなってしまうので、ひとまずその考えは一旦省く。
それ以外の原因を考えるとなれば単純な話、大魔法【ポ・セイドン】の時は“詠唱”というイメージを連結させるという補助的技術があったから成功したのだと仮定すれば≪錬金術≫でも“詠唱”に代わる何かを使用すればいいと考えられる。
だが、約1年程リネットの元で≪錬金術≫の勉強して来たライアにそのようなものなどは無いとはっきりわかってしまう。
……つまり“詠唱”がカギなのだとすれば、実力不足の場合と同じで、ほぼ敗北確定である。
「それでもッ…やらないと……ねッ!」
「■■■■■■ッッ!!」
ライアの動きに対応して来た化け物の攻撃を躱しながら、どうにか動きを止めて背中に張り付こうとし続ける事数分、未だライアは化け物を倒すことは出来ずにヒット&アウェイを繰り返していた。
(……化け物が俺の動きをどんどん学習して行って手強くなってる……それに街の被害状況的に出来れば次のチャンスで何としても倒しきりたい……)
化け物は魔法を放とうとすれば優先的に攻撃対象を見極めて、瓦礫を飛ばして来たり魔法の発動の邪魔をしてくる。
「■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!」
(……ッ……たく、人の気も知らないで暴れまくりやがって……!!)
恐らく目の前の化け物は元の男が錬金物を取り込んで、こんな姿に成り果てて、元の人格などは残っていないだろうが、恨み言の一つや二つは出てきてしまう。
「……誰がこんな薬か魔道具を作ったんだか……まるで人間が魔物にでもなったような……って、もしかしてこいつ、そのまんま魔物化した人間なのか!?」
ふと自分の呟きにある記憶が引っかかる。
それは約数時間前の、ライアが【報告会】にて発表する前に聞いた話……
『魔石を植物に与えて人工的な魔物への変質実験』
この発表を聞いた時ライアは結構衝撃を覚えていたので、はっきりと記憶に残っている。
発表者である錬金術師の話では、魔石を持たない生き物や植物に、
この話を聞いた時は「前世だったら倫理観的に一発アウトだったろうな…」と苦笑いした物だ。
(そうだ、これは人間を魔物化させている…!それなら辻褄は合う……あの人間とはかけ離れた姿と驚異的な回復能力……それが魔物化された際の魔石による効果なのだとすれば理解できる!)
だが、今それが分かった所で元々化け物の取り込んでいる錬金物……魔石を取り出さなければいけないのは変わらないので、何かが解決したとかいう話ではない。
しかし、人間の魔物化という答えにたどり着いたライアの思考に新たな可能性が浮かび上がる。
(……魔物化……魔石を肉体の中に押し込む……要領は魔道具製作と同じ……つまり、
そう、ライアが思い付いた考えとは…。
「
簡単にして、非人道的な思考……人体改造そのものであった。
「■■■■■■■■■■■■ッッ!!!!」
「……今度こそ人間の姿に戻してあげる。……さぁ、
――――――――――
――――――――
――――――
―――――王国騎士団騎士団長
「急げッッ!フェンベルト子爵に与する帝国兵はすでに制圧済みとの連絡だが、新たな巨人型の生物が暴れまわっているとの連絡が入っているッ!!」
「「「ハッ!!」」」
私はアーノルド王子からの要請で、総勢100名ほどの騎士達を引き連れ、色々と悪い噂の立つフェンベルト子爵の屋敷に向かっていた。
最初はフェンベルト子爵を取り押さえる命令だったのが、ほんの30分程で現地の状況が目まぐるしく変わっているようで、今は巨人の化け物の討伐が目的らしい。
現地にはついこの間、男爵位を叙爵したインクリース男爵が一人で戦闘を行っているらしく、その救援も目的の一つである。
(インクリース男爵……命令とは別に私にとって御恩のある人物……無事であると良いが……)
私はインクリース男爵の無事を思いながら、フェンベルト子爵の屋敷へ急いでいると、遠目に街中で暴れている物体が目に飛び込んで来る。
「ド、ドルトン団長!!目標を目視で確認いたしました!!」
「うむ……あれが巨人……近くに人影などは無いか!!」
私は遠くに見える化け物の影を横目に≪鷹の目≫を持つ、部下の騎士に周りに避難民やインクリース男爵の様子がわからないかと状況の説明を求める。
「ハッ!!周囲に人影は……えっと……」
「…?どうした、何か見えたのか?」
部下の騎士は、何かを見つけたのか何かを喋るのを言い淀んでいる雰囲気を感じ取り、何があったのかを問いかける。
「えっと……恐らく、インクリース男爵?と同じ姿の人影が数十人も居るように見えましたが……」
「数十人…?ふ、ふはははは!」
私はインクリース男爵の規格外な部分を聞かされてはいたが、そこまでの特異性だとは思っていなかったので、部下の報告に思わず大きな笑い声をあげてしまう。
「なるほどな……皆!急いでインクリース男爵の応援に向かうぞ!!」
「「「「ハ、ハッ!!」」」」
私は≪
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