巨人の化け物2
「す、すごい威力の魔法……」
「これなら……」
ライアの魔法を遠目で見たセラ達がこのまま勝てるのでは?と期待に満ちた声をあげる。
――――じゅぅぅぅ………
化け物の背後から水の魔法で奇襲を仕掛け、背中に大きいなダメージを食らわせてやったぞと笑みを浮かべるライアの目に衝撃的な現象が映る。
「ってあらぁ……まさかの高レベルの≪自己回復≫……いや?それとも未知の回復系のスキル持ちさんかな……」
背中に傷を負った化け物はまるで傷が逆再生するかの如く治癒していき、物の数十秒で傷一つない姿に早戻りである。
その現象にライアは自身の持つ≪自己回復≫を高レベルで所持をしているのかと思ったが、傷の治り方的にライアのスキルと根本的に違うのかなと予想を立てる。
ライアの持つ≪自己回復≫はレベル11とそれ程高くは無いのだが、さすがに傷が
「そうなると、弱点とかわからんのだけどなぁ……ここはベタに再生させる間もなく消し飛ばすとか?……ムリィ……」
基本的にライアの持つ高火力魔法はウォーターブレイザーの様な切断に特化した物ばかりで、爆発系や消滅系の攻撃手段は持ち合わせていない。
身体を真っ二つに切断すれば倒せるとかなら出来なくは無いのだろうが、その場合は先程の懸念通り、ここら一体が泥の海になるし、何より分身体の数が足りなく、無理矢理発動させるにしても8人は必要であるので、どの道不可能である。
「どうにか弱点を探すしか……っとッ!」
――――ダァァンッッ!!
「■■■■■■ッッ!!」
「まぁ考え事なんてさせてはくれないかッ!」
化け物はその巨体故かスピード自体は遅いので何とか対処は出来るのだが、攻撃の際の瓦礫がかなり厄介であった。
――――ガラララ……
「あぁぁもう!思いっきり壊しまくりやがって!……ホントにもう!」
化け物が分身体の一人に攻撃を仕掛ければ、分身体は避ける。
しかしその避けた所に化け物の攻撃の余波で飛んで来た瓦礫も同時に避けなければいけない。
もちろん、他の分身体で随時魔法で攻撃を仕掛けているが例の回復系スキルの所為で有効打にはなっていない。
(……このままだとジリ貧にしかならない……どうするか……ん?……)
いきなりの戦いで気を回すことが出来ていなかったが、ふとライアがここ最近で嗅いだ事のあるような香りが辺りに漂っているのを≪嗅覚強化≫で感じ取る。
その香りは何かの花の香りなのかはわからないが、少なくとも一般的な花の香りでは無く、独特の匂いであった。
「この匂い……もしかして、香水…?……まさかッ!?」
「■■■■■■■■■■■■ッッ!!」
匂いの正体に1つだけ心当たりがあったライアは、バッと化け物の顔を見つめれば、どうして今まで気付かなかったのかと自分に疑問が出る程、化け物の顔は牢屋番をしていた香水男と瓜二つの顔をしていたのだった。
(……こいつ、あの時の……どうして化け物なんかに…?いや、それよりも…)
ここでこの化け物が元は香水男という事に気付いたことによって、ライアの脳裏にある考えが浮かぶ。
(……もしこの化け物をぶった切りでもすれば、元の人間も死ぬ…?)
なんて事は無い、ライアは前世から今世にかけて人を殺した事など無く、敵対している敵だとしても人間を殺す行為に戸惑いを持ってしまうのだ。
「■■■■■■ッッ!!!」
――――ダァァンッッ!!
「ぐッ!?クソッ!」
ライアが戸惑っている間も化け物は止まる事無く絶え間なく攻撃を繰り出してくる。
寧ろライアから攻撃の手が止まった今、化け物の攻撃を邪魔するものはない。
(ダメだ!このままじゃこっちが負ける!覚悟を決めるしか……どうして化け物なんかにッッ!!………あれ?どうして化け物なんかに?)
つい、人間が化け物になったという事実に愚痴りたくなったライアだったが、人間が化け物になるという非現実的な現象に疑問が生まれる。
「……人間が化け物……巨人になるスキルある?いや、だとしてもあの回復系スキルの説明がつかない……」
仮に巨人化というスキルがあるのだとすれば、地下で香水男を倒した時に回復能力が発動していなかったので、巨人化スキルの副産物で回復能力が備わったという事になるが、さすがにそれほど規格外なスキルは考えられない。
故にあの化け物姿は、香水男の所持していたスキルの可能性はかなり低くなる。
「……だとすれば、思いつく可能性は3つ……≪錬金術≫で作り出された薬か魔道具の効果、第三者による未知のスキルか魔法の影響、その他呪いや超常現象など……3つ目に関しては省くとして……≪錬金術≫か……」
現状ライアが一番考えている可能性として、錬金術で作り出した何かの影響であぁなっている可能性が高いと考えていた。
これは別にライアが錬金術師だからという訳では無く、現実的に一番あり得そうなのが≪錬金術≫だろうという考えからであり、仮にそれが正解なのだとしたら、今の現状を打破出来るかも知れないという希望もあったからであった。
「ふぅぅ……仮にその姿が≪錬金術≫の影響なのだとすれば……同じ≪錬金術≫でどうにかできるのが道理ってもんだよね!」
「■■■■■■■■■■■■ッッッ!!」
ライアは微かに感じた小さな可能性に賭け、この化け物を人間の姿に戻そうと意気込むのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます