巨人の化け物
「ナ、ナンですかアレは!?」
「ひぃぃ!エルぅぅぅ……」
街を破壊しながら進んで行く巨人の化け物を見つけた女の子達は思わず足を止めて恐れ戦いている。
「……ッ!皆!まだここは安全じゃないから足を止めないで!」
「「「「は、はい!」」」」
そんな状況から一早く正気に戻ったライアは皆に喝を入れて再び足を動かし始める。
「……ライア君、あいつは屋敷に向かってるよね……大丈夫なのかい?」
「……一応分身体達でどうにか出来ないか試してみますけど……どうやっても近くの建物や土地が崩壊しそうですが……」
あの化け物から遠ざかる為に足を動かしながら逃げていると、モンドがライアに近寄ってきて状況の確認をする。
ライアはあの化け物がどれほど手強いのかもわからず、分身体4人で何とかなるのかすらわからない為、大丈夫と明言する事は出来なかった。
そして何より、仮にあの化け物をどうにかするとなれば、火竜の時に使用した大規模魔法でもぶっ放さなければいけないとは思うのだが、街中で自然破壊とも言える大魔法を使用するのは躊躇ってしまう。
「ひとまず、こちらに目が向かないようにやってみます」
「……すまないね、君に頼り切ってしまって……」
モンドは何も出来ない自分に対して、申し訳ない気持ちが溢れているようで、ライアに悔しそうな顔を向ける。
「大丈夫ですよ。モンドさんには先程も助けてもらいましたし、適材適所って奴ですね」
ライアはモンドに要らぬ心配をさせないように笑顔を浮かべながら、少し軽口を叩いてそう伝える。
「……ふふっ…それでは君はずっと適材として働かなければいけないだろうね……」
ライアは「そんな事無い」と返そうと思ったが、今現時点で【敵の拘束】【状況の把握】【王城への通報】【囚われの人達の救出】と殆どの事でライアが動いている事実に言葉を詰まらせる。
「……私にも出来ない事はあるので……」
「ハハハハ!」
負け惜しみの様な事を言い出すライアにモンドは危機的状況なのにもかかわらず、大きな声で笑い声をあげるのであった。
――――ダァァンッッ!!
「■■■■■■■■■■■■ッッ!!!」
「わッ!?……あっぶな…」
モンドと話をしつつ、セラ達全員で逃げていると、どこかの建物が邪魔だったのか大きな音を立ててその建物を殴り壊す。
建物が壊されると、遠くに居たライア達の方まで衝撃と瓦礫の破片が飛んで来る。
「皆、大丈夫!?」
「だ、大丈夫です」
「特に怪我人は出てません!」
何とかセラ達も無事らしく、怪我をしている様子は無かった。
あの化け物はそのまま建物を破壊しながら進んでいるようで、また瓦礫が何時こちらに飛んで来るのかもわからない。
――――ダァァンッッ!!
「わッ!?……クッソあいつ、いちいち周りの建物を壊しまくりやがってッ……このまま放置してたら辺り全部が瓦礫の山になる!!」
ライアはセラ達を引き連れながら、このまま放置は出来ないと巨人の化け物を食い止める為、分身体達を急がせる。
「■■■■■■■■■■■■ッッッッ!!!」
「ッッ!?……いい加減その雄たけびも……『煩いんだよッッ!!』」
―――――ドォンッ!!
屋敷から一番外に近かった分身体が建物を破壊しながら進んで行く化け物を止める為に、瓦礫や建物を使って化け物の顔付近まで飛び上がり、ステータス任せの飛び蹴りをお見舞いする。
「■■■■■■ッ!!」
「ってちょ!?」
しかし、巨人の化け物は一瞬怯む程度の挙動を見せた後、空に飛んでいる分身体を捕えようと手を伸ばしてくる。
「くッ!“アースボール”ッッ!」
―――ドンッ!
分身体は迫ってくる化け物の手に土魔法であるアースボールを放ち、少しばかり軌道をズラす事により、手に捕まれる事を回避する。
「よっと……さすがにこういう時は空中戦は分が悪そうだ……」
化け物の手から逃れつつ地面に着地すると、空中での自分の不利を自覚する。
「今度、空中戦も出来るスキルでも探したいものだ……ねッ!!」
―――ドォォンッッ!!
「■■■■■■■■■■ッッ!」
化け物は分身体を掴み損ねた苛立ちからなのか、足を振り上げ、力いっぱい踏みつけようとしてくる。
その踏みつぶし攻撃を避けつつ、次の攻撃を仕掛ける為に化け物の後ろに回り込もうと走り出す。
「■■■■■■ッッ!!」
当然それを見逃されるはずもなく、分身体の居る向きに体を振り向かせてくる。
「あはは、ほーらこっちこっちー」
化け物に背後を取れなかったのに対し、大して悲観することなく、寧ろこちらに注目して欲しいかのように化け物に挑発をかける。
「「「―――“ウォーターブレイザー”ッッ!」」」
――――ズバァァンッッ!!
「■■■■■■■■■■■■ッッ!?!?」
屋敷の方向に背を向けていた化け物の背中に、水で作り出された刃が切りつけられ、化け物の背中に3本の大きな傷が生まれる。
「あまり目の前の事だけ見てたらダメだよ?……私達は
痛みに雄たけびを上げる化け物にまるで悪戯が成功したかのような笑みを浮かべながら、ライアはそう言い放つのであった。
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