隠蔽工作?









「……なるほどね…それでライア君は証拠集めをしている訳だね」



モンドにライアの集めた証拠品や今ここに向かって来ているであろう騎士達の事を説明すると、納得の表情を浮かべる。



「そう言う事なら私は特に何もしなくてもよかったのかな?一応王城に先程の件を伝えようと使用人を向かわせていたけど、意味は無かったようだ」



モンドは捕まって何もできないはずのライアの為に、色々と動いてくれていたらしい。



結果的にライアは自分で何とか出来ていたし、王城にもすでに情報は行っていると聞いてホッとしたような顔で苦笑いを浮かべる。



「いえ、色々心配して動いてくれたのは本当に嬉しいですし、下手をしたら自分で動けていなかった可能性もあるので……」



「そう言ってくれると助かるよ」




モンドとライアはお互いに謙遜し合いながらも、今後の動きをどうするのかを話し合うのであった。










「騎士達が到着するまで、約1時間……さっきの兵士達の話的に馬車の準備などは殆ど終わっていそうだし、モンドさんが倒した隊長さん達が見つかれば、侵入者を警戒してすぐにでも屋敷を出立しちゃうかも知れないですし、そのまま逃げられたら困りますね……」



「それに関しては申し訳ないね。まさか子爵が帝国に亡命しようとしているなんて知らなかったよ……ひとまず、この兵士達が動き回れないように縄か何かで縛りあげて、どこか人が来なさそうな場所に監禁しておこうか?」



「そうですね、この証拠品も一緒に隠せる場所を見つけたいですし」




ひとまず廊下に倒れ込んでいる隊長兵士達をすぐに発見されないように、どこか別の場所に運ぶことにしたライア達は、近くの無人の部屋にあったロープで兵士達を縛り上げ、ドロイドの土人形に運ばせる。



「すまないね、私は土の属性を持っていないから」



「これくらい構いませんよ……“カモフラージュ”」



モンドは風属性らしく、土属性はカラっきりらしい。



申し訳なさそうなモンドに対して、こちらは気にしないと返事を返した後、移動の際に見つからないように姿を消す魔法である“カモフラージュ”を展開する。




「……それがさっき君が姿を消していた魔法の正体かい?」



「えぇ、私の特殊属性である幻属性の魔法ですね」



「幻……虚像の魔法か」




モンドはライアの魔法を考察しだしたのか、何やら1人考え込む仕草をする。




「幻で錯覚させるのは視覚だけなのかい?幻聴や匂いなどは?」



「今の所視覚だけですね。なので音なんかは普通に聞こえてしまうので、慎重に動かないと紙の擦れる音や、人の吐息なんかで簡単にバレてしまいます」




モンドは幻魔法に興味があるようで、色々と思考を巡らせながらライアに話しかけて来る。



そんなモンドの姿に、根はやはり研究者なんだなと感心しながら質問に答えて行く。




「ふむ……レベルが上がれば変わるのかは不確定か……それでもかなり使い勝手の良さそうな属性だね」



「そうですね、色々実験を繰り返しながら何が出来るのかを調べている感じですね……そう言えば私も気になった事があるんですが聞いていいですか?」



「ん?なにかな?」




ライアは先程の兵士達を倒した時のからくりを未だ理解できておらず、どうやって兵士達を倒したのかをモンドに質問する。




「あぁ、あの時はを使ったんだよ」



「それって……毒…ですか?」




モンドは己の袖口から、小瓶に入った粉状の物を取り出してライアに見せられると、予想と直感でそれが毒物だと言い当てる。




「そう、これは粉末状の痺れ毒。あの時兵士達が私の周りにいたから袖口からこの粉末を飛ばしていたって事さ」



どうやらあの時、腕を組みながら袖口に手をツッコんでいた時にはすでに痺れ毒の準備をしていたようで、その用意周到さに驚く。



「……なるほど、でもそれってモンドさんにも痺れ毒が飛んできません?もしかしてずっと息を止めていたんですか?」



「あぁいや、そんなことはしてないよ。……実は私の錬金術師としての専攻は薬物学でね、薬や毒物に関して研究をしているのだけど……」



薬物学とはライアも作成したことのある傷薬や漢方、世間一般には出回らない魔力回復薬などを錬金術で作る事というのはリネットに聞いたことがある。



そんな薬のプロであるらしいモンドは少しだけ話の途中で言葉を切り、恥ずかしそうな表情を浮かべう。



「……まぁ私の研究テーマ的に≪状態異常耐性≫のレベルがかなり上がってね……17レベルもあると痺れ毒程度だと完全に無効化出来てしまうんだ」



「17ですか!?」



言われてみれば確かに、自分達で薬屋毒物を研究するとなれば、自分で試したりして≪状態異常耐性≫スキルのレベルが上がる事もあるのかも知れない。



だが、分身体を使って効率的かつ命の危険を晒さないようにしているライアでさえ、未だ≪状態異常耐性≫のレベルは7である。



元々それほどレベルを上げる訓練をしまくっている訳では無いにしても、生身の体であるモンドが17レベルにまでレベルが上がるほど毒物を摂取している事実にライアは驚愕を隠せなかった。




「あははは……どうにも出来た薬の実験をしたくなると、自分に対して使うのが手っ取り早いと思ってしまうんだよ……そのせいで何回か死にそうになった事もあるが、そのおかげで今じゃ殆どの状態異常は無効化できるのが自慢だね!」



「もっと自分を大事にしてくださいよ!?」



のっけらかんと言い放つモンドに思わずツッコミを入れてしまうライアであったが、モンドは特に気にしていないようであった。











――――――――――――

―――――――――

――――――











「よい……っしょっと」



「お疲れ様」




あれから屋敷を歩き回り、屋敷の厨房の倉庫らしき部屋を見つけ、倉庫の奥に3畳ほどの隠れたスペースに証拠品と気を失っている兵士達を押し込むことにしたライア達。




「よし、これで暫く時間は稼げるだろう」



「そうですね……って、ん…?」



ふと、フェンベルト子爵の近くに配置していた分身体からフェンベルト子爵が執務室に入って行くのを察知すると、少しばかり脳裏に何かが引っかかる。




「どうしたんだいライア君?」



「え、あ、いえ……今フェンベルト子爵が執務室に入って行ったのですが、何かを忘れているような気がしたもので」



執務室の部屋は特に荒らしてもいないし、隠し部屋の入り口もきちんと閉めてきたので、忘れ物は無いはずだと確認する。



(本棚も寸分たがわず同じ位置に戻したし、靴の汚れも無かったから足跡も残って無いはず……隠し部屋だってきちんと綺麗にした……し……)








「あ”あ”ッッ!?!?」





隠し部屋の中に保管されていた証拠品は今、ライア達の目の前にある事実に気付き、ライアはやってしまったと声をあげてしまうのであった。
















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