一旦、両親への婚約報告
―――――ゼクスside
「「「こ、婚約!?」」」
「あははは……」
国王との謁見で貴族の位とリネットとの婚約を交わした次の日、さすがに婚約の事などは両親やクスト達に話さなければいけないだろうと、夕食の後に謁見での事を話していた。
「ゼクスにぃちゃん、こんやくって?」
「んー?とぉさんとかぁさんみたいに夫婦になるって約束をする事だよ?」
両親とクストの驚きの声を不思議に思ったプエリが“婚約”という言葉にどんな意味があるのかを質問してくる。
こういった話題はあまり今までの生活で出る事などは無い為、普段の文字の勉強などでも教えた事は無かったのだ。
「そうなの!?ライアねぇちゃんはだれのおかあさんになるの!?」
「あははは、プエリにもそのうち紹介するね?あとお母さんじゃなくて、どっちかというとお父さんなんだけどね?」
まだ5歳になったばかりのプエリには、母親と妻の違いなどはよくわかっていないらしく、少し勘違いをしているようだった。
(……ライア“ねぇちゃん”って可愛く呼ばれるもんだから放置してたけど、完全に女だと勘違いしてるよね……そのうちちゃんと教えないとな…)
一応出会った最初の頃に男だとは伝えたはずなのだが、そこら辺の細かい部分はどうやら忘れているらしく、未だにライアねぇちゃんと呼ばれている。
「……ゼ、ゼクス?婚約って本当か?しかも貴族になったって……」
「本当だよとぉさん!ここから1か月くらい離れた所だけど領地も貰っちゃったし」
「ほへぇ~……」
ゼクスの言葉に驚きを追い越して、理解が及ばなくなってしまったとぉさんは、少し間抜けな声を漏らして呆けている。
「それで?結婚する相手はどんな子なの??ゼクスの話方的に知り合いの女性なのでしょう??」
ゼクスの話を聞いていたかぁさんは、貴族になった事よりも婚約相手の方が気になるのか、真剣な顔をしながら問い詰めて来る。
「えっと…前にも話してたと思うけど、リールトンの街で≪錬金術≫の師匠をしてくれてる人だよ。リネット・リールトンさんって言うリールトン伯爵家の3女」
ヤヤ村を出てから、殆どをリールトンの街にあるリネットの錬金術工房で過ごしていたので、もちろんリネットの事や錬金術に関しても両親には話していたので、その話を聞いたかぁさんは「あぁあの掃除が苦手な……」と以前の話を思い出していた。
「……ライアはその子との婚約に不満は無いの?話を聞く限り、家事とかは全然できない人なんでしょ?」
「大丈夫だよかぁさん。確かに家事全般出来ないのかも知れないけど、俺はそう言うの気にしないし、何だったら俺がやっちゃうしね」
かぁさんは、婚約話に不満は無いのかと聞いてくるが、現状他の選択肢は無いし、なんだかんだライアもリネットとずっと錬金術をしながら過ごす生活もいいなと感じている。
なので、特にリネットが家事などが出来なくてもライアに不満などは無いのだとしっかりかぁさんに伝える。
「……そう…好きでもない人と結婚させられるのかとも思ったけれど、余計なお世話だったかしら?」
「え?いや!別に好きではない……訳でもないけど、好きだから婚約をしたんじゃなくて……一緒に錬金術をしていくのもいいかなぁ~って……いや!もちろん人としては好きだよ!?」
「あらあら……しっかりした子だと思っていたけれど、もしかしたら恋愛事は結構苦手だったのかしら?ふふふ…顔が赤くなってるわよ」
かぁさんの言葉に動揺して、恋愛的な好きという感じではないと必死に伝えると、どうやらライア自身気付かない内に顔面が真っ赤になっていたようで、恥ずかしくて下を向いてしまう。
「でもそう言う事なら、私達も動き出さないといけないわね!」
「動き出す?」
かぁさんはいきなり何かを決心したような顔をして立ち上がると、何かをするのかそう話しだす。
「あぁ、これは家族みんなで頑張らなきゃな…これからは忙しくなるな!」
「えっと……とぉさんもかぁさんもどうしたの?なにをするの??」
どうやらかぁさんの言っている事をとぉさんはわかっているらしく、同じように何か気合を入れている。
その様子についていけていない子供組達は首を傾げながらそう聞き返す。
「「ライアの領地に引っ越して、ライアと一緒に暮らす『のよ』!!」」
「「ッッ!!!」」「マジかぁー……」
両親の宣言に、プエリとクストはまたライアと暮らせるようになるんだ!という感情が読み取れるほど目を輝かせ、ゼクスは両親のあまりの行動力に驚き、言葉を漏らしてしまう。
「よし!早速引っ越しの準備をする為に、まずは村長の所に連絡しに行くか!」
「おー!」「うん!」
「……あ!とぉさん!もう夜だし、開拓が終わってないからまだ引っ越し出来ないってー!!」
言うが早いか、とぉさんはプエリとクストを掻き立て、止める間も無く家を出て行ってしまう。
「えぇ……引っ越すにしても下手したらまだ半年くらいは先だと思うけど……」
「あら、そんなに開拓って時間が掛かるものなの?……まぁ早くライアに会いたいって気持ちはあるんだから、しょうがないわね」
(…まぁそんなに楽しみにしてくれてるって事だし、嬉しいけど……村長に迷惑かけない方が良いと思うけどね…)
飛び出して行った3人がヤヤ村の村長に迷惑をかけない事を祈りながら、ゼクスとかぁさんは新しい領地の事などを話し合うのであった。
―――――――――――
―――――――――
―――――――
――――報告会当日…
それから約一週間、この日はライアが錬金術師達の会合である【報告会】に参加しようと、フェンベルト子爵家の所有する屋敷に来ていたのだが……。
「えぇい!その無礼者をさっさと牢屋に閉じ込めておけッ!!」
「抵抗するなッッ!大人しくお縄に付くんだ!!」
場所は広い講堂に設置されているステージ台の上、そこにはライアと数人の騎士達、それから貴族らしき男性が1人が立っており、ライアは騎士達に取り押さえられていた。
(えぇぇ………)
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