婚約








それから、婚約をした際に何かしなければいけない事や何をどうすればいいのかをアイゼルと話したり、リネットとの話し合いを経て、国王との謁見の日になっていた。



(……今更ながら思えば、ダンジョンを見つけた時にアイゼル様から『恋愛対象は女性なのかな?』って聞かれたけど、あれもこの件に関しての確認だったのか……)



恐らくアイゼルはダンジョンの発見と同時に、ライアが男爵位を授かる事はわかっていて、その時から色々と動き始めていたらしい。



(……断る権利などがあるとは言っても、リネットさんとの婚約が嫌ってわけじゃないし……リネットさんを傷つける可能性もある中断る選択は無いんだよね……)



とまぁそんな思いもあり、ライアはリネットとの婚約話を受ける事を決め、謁見の場で正式にリネットとの婚約がなされたのである。




「―――リールトン伯爵家が3女、リネット・リールトンとそなたの婚約を私がここに認めよう」




「ハッ!!」






国王との謁見は前回と違い、途中でアーノルドの暴走も無く、決められた段取りをこなしていき、あっさりと終了する。



とは言っても、謁見後には貴族になれば決めなければいけない事や知らなければいけない知識、それに領地関連や納税に関しての書類にもサインなどをしなければいけないので、ぶっちゃけ謁見後の方が忙しいという話だった。




「これでライア殿もアンファング王国の一貴族……これからはもっと仲良くしてくれると嬉しいぞ?」



「あははは……よろしくお願いしますアーノルド様」



謁見が終わり、謁見の間を出ると、後ろからアーノルドがライアを追いかけて来て、話しかけられる。



ライアとしては仲良くする分には問題は無いのだが、前回のお茶会であった“王城に分身体を常駐させる”と言う話があり、それの事を言っているのだろうと思ったライアは、苦笑いで了承の返事を返すしかなかった。



「うむ!これからは毎日が楽しくなりそうだな!」





――――――ガチャン…



「ライア君、アーノルド王子と仲が良さそうで何よりだよ……アーノルド王子?この後ライア君を資料室や税制管理部などを周らなければいけませんので、お連れしてもよろしいですかな?」




謁見の際、国王の横の方に待機していたアイゼルが、謁見の間から出て来て、アーノルドに断りを入れる。




「あぁすまない、少しライア殿にお願いしていた事があってな……ではライア殿、私は一度自室に戻り、準備を進めておくぞ!」



アーノルドは恐らく、新しい分身体の住む場所やその部屋の準備などをする為なのか、ライア達にそう言い捨てると、すぐに何処かに走り去って行ってしまう。




「……準備?」



「あぁ……恐らく、私の分身体の泊まる部屋かと……この間お茶会の時に分身体の一人を王城に住まわせると言った話が出たので、そうなることになりました…」




ライア的にはあの時、断るつもりで“貴族達が多い王城は小市民のライアには無理だ”というニュアンスを伝えたが、まさかライアが貴族になるとは思っていなかったので、断る口実も無く、了承するしかなかった。




「………まぁ……大変かもしれないが、アーノルド王子との縁は大事にして、ダメな事は無いだろう……頑張りなさい」




アイゼルはライアの心境に少しだけ同情したのか、少しだけ優しい言葉でライアを慰めてくれたのだった。










――――――――――

――――――――

――――――









国王との謁見が終わり、貴族に必要な書類や知識の掛かれた本などを受け取ったり、インクリース男爵家として決めなければいけない事などを色々と片付けていたら、すでに空は暗く、夕方もとっくに過ぎた夜になっていた。



「つぅ~………かれたぁ……」



「ははは、今日は色々とすることが多かったのでな……明日もする事が無いと言えば嘘になるが、今日ほどやらなければいけない事もないのだ。安心しなさい」




「あ、すいません…」




外は暗く、今日しとかねばならない事などはやりきったので、今日の所は一度帰る事にしようという話になり、帰りの馬車にアイゼルとライアが同乗している。



ライアは一人で馬車に乗っている感覚で、ため息を吐きながら疲れた体を伸ばすが、目の前にアイゼルが居る事を思い出し、恥ずかしそうに謝罪する。



「構わないよ、これからはライア君とは家族になるのだからね」



「あ……えっと…はい」



アイゼルの言葉に、何とも言えぬ気恥ずかしい気持ちが溢れて来て、顔がほんのり赤みを増してしまうが、顔を伏せながらライアは返事を返す。



アイゼルはそんなライアの様子を見て、何か微笑ましい気持ちにでもなったのか優しい顔をしながら「ははは」と笑いを溢す。



「今日は疲れただろうから、屋敷に着いたらライア君の部屋で食事を摂れるようにお願いしておこう」



「…ありがとうございます」



ライアは自分の体の疲れを自覚していたので、アイゼルの気遣いの言葉に甘えようと、素直にお礼を返す。



そこからはアイゼルも疲れがあるのか、お互いに言葉が少なくなり、屋敷に着くまでの間にライアは少しだけ眠ってしまっていて、屋敷に着いた時にアイゼルに起こされ、さらに恥ずかしい思いをしたのはしょうがなかった事なのかもしれない。










……ちなみに余談だが、王城で色々とやる事をしている時には、すでにアーノルドの所に分身体を1人送っていたので、今現在も王城でアーノルドと分身体は女装関連のお話をしていたりする。












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