王子と雑談
――――――ライアSide
王都でウィスン達を情報採集に動かしている頃、ライアはアーノルドの私室にて、お茶会をしながらアーノルドと雑談を交わしていた。
「……それにしても、今度は新たなダンジョンを見つけるとは、さすがライア殿だな」
「私も見つけようとして見つけたわけじゃないんですけどね」
最初こそ女装関連の話をしていた物の、ドレスの合わせや化粧の練習などはお茶会の後にやろうという事になり、お互いの関係がある数日後の国王との謁見の話題になっていた。
「ダンジョンという物は見つけようとして見つかるものでもないぞ?運もまた実力の内というではないか」
「そう思っておく事にします」
ライア的にはダンジョンが見つかり、こんなに早く王都に出戻りすることになった事は、嬉しい事では無いので、ある意味喜びにくいのだが、国王との謁見を蔑ろにしているとも捉えかねないので、心に秘めておく。
「……そうだ、新たに見つかったダンジョンにはもうどのような魔物が要るかは確かめたのか?」
「いえ、ダンジョンを発見して、すぐに引き返したのでどのような魔物がいるかは……一応ダンジョン入り口でスライムには遭遇したので、スライムだけ居ることはわかっていますが」
「ほぉ……スライムか……私は初見の魔物だな…」
あれからリネットに聞いてみれば、スライムという魔物はダンジョンでしか生まれず、比較的珍しい魔物らしい。
アーノルドも今まで見た事は無いらしく、どのような魔物なのかも知らなかった。
ちなみにスライムの魔石は水属性に近い物らしいが、ゴブリンとそれ程変わらないくらいに弱い出力なので、基本はいらない魔石らしい。
「奥には他の魔物がいるはずですけど、そっちの魔物はいずれ調査に向かう冒険者達からの報告を待つしかないですね」
「ライア殿は自分で確かめには行かないのか?」
アーノルドは冒険者もしているライアなのだから、自分でもダンジョンの調査に行く物と思っていたのか、少し意外そうな表情をする。
「私は基本、リールトンの街の冒険者ギルドで職員をしてますし、他の冒険者に仕事を振れるなら出来るだけ取らないようにしようかと……」
「他の冒険者に優しいのだな」
新しいダンジョンで、今回も国王との謁見で褒美をもらうのに、他の美味しい部分も取ってしまったら、他の冒険者達には悪いと感じてしまうので、もしもダンジョンの調査隊的な依頼があった場合は辞退するつもりだった。
「しかし、冒険者をしながら冒険者ギルドの職員をするなど、多忙過ぎなのではないか?」
「そこは≪分体≫と≪思考分割≫がありますので」
本来であれば一人では兼業などできない冒険者と冒険者ギルドの職員であるが、ライアには分身体があるので、そう言った心配は無用だと知っていると思っていたら、どうやらアーノルドはライアの分身体などの事を聞いていなかったようだ。
「そうだったのか??」
「はい……てっきり、アイゼル様から国王様やアーノルド様に伝えられているものかと思ってましたけど…」
そう言えば、前回の謁見の際には“火竜の討伐した
「父上からは『火竜を討伐せしめた功労者への褒美を渡す為だ』としか聞いてなかったし、リールトン伯爵からは特に話は聞いてはいなかったな……」
「なるほどですね……一応火竜を倒したのも私の≪分体≫から生み出した分身体約10名ほどで倒したので、私一人で倒したというより私の10人力の力で倒したとも言えるでしょうか?」
「10人!?そんなに分身体を生み出せるのか?」
どうやら、ライアの火竜をどう倒したかより、10人も分身体を生み出せることに驚かれてしまうが、これに関してはよく驚かれるので慣れたものである。
「自分で言うのはあれですが、私と≪分体≫の相性がよかったようです……あ、ちなみに今は最大で25人生み出せますよ」
「………それほどであれば相性がいいというのも納得であるな………ん…?ライア殿、分身体はどれだけ離れても操作は可能なのか?」
ライアの言葉に驚きを通り越して呆れの感情が出てきたようであったが、何か気になった事でもあるのか、そう質問をしてくるアーノルド。
「えっと、はいそうですね。今もリールトンの街と故郷の村に計14人ほどおりますが、通常通り動かしていますよ」
実はヤヤ村のゼクス達3人は変わらないが、今回の王都へ行く事が決まってから、ずっと工房が忙しかったので、工房に分身体を7人を常駐させている。
なので、王都のウィスン達3人とアインス達4人を含めると、今現在ライアが出している分身体は21人で、新たに出せるのは4人しかおらず、若干の不安は感じている。
「であるならば、ライア殿の分身体をこの王城にいてもらう事なども出来るという訳では無いか?」
「…………えう?」
アーノルドの言葉をすぐさま理解できなかったライアは、何とも間抜けな声を出してしまうが、何やら目をキラキラさせているアーノルドにはどうやら聞かれなかったようだ。
(え、分身体をこの王城に……?いや、別にアーノルド王子が嫌いとか、一緒に居たくないとかではないけど、四六時中周りに貴族の人や王族の人が居る環境はさすがに俺の心臓がぁ……)
今でさえアーノルドと話しているだけだが、周りには護衛の騎士達や紅茶のお代わりを注いでくれるメイドなどが沢山いる中でのお茶会に少なからずの圧迫感を感じているライアには辛い話だった。
「えぇと……さすがに平民の私が王城に常駐するというのもあれですし、さすがにそれは……」
「む?特にそう言った事を気にしなくてもいいと思うのだが……たとえライア殿がそう思っていたのだとしたら、どのみち大丈夫ではないか?」
「??大丈夫とは?」
アーノルドはライアの言葉にそう返事を返すが、ライアはアーノルドの言葉に若干の違和感を持つ。
「ライア殿が平民だと困るのだろう?であればライア殿はもう貴族になるではないか」
「………なぜ!?」
……どうやら知らない内に、ライアは貴族になる事になっていたらしい。
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