原因












――――――アインスSide




「……これ以上は何も見つからないのかな…?」



火竜の山の頂上にあった火竜の巣を散策していたアインス達は、先程の火竜の卵があったと思わしき場所以外に、特に新たな発見を見つけることが出来ないでいた。




「……一旦、他の場所を調べてみようかな…?」



これ以上同じところを調べ続けるより、まだ探索しきれていない山の麓部分や山に侵入した側の反対側などを調べようと考えた。



アインスは山の反対側を降りようと、火竜の巣である山の頂上の窪みから出ると、遮るものが無く、広大な大地と森が遠くまで見渡せる風景がそこには広がっていた。




「わぁぁ……こりゃ前世の建造物ばかりの日本じゃ考えられない光景だね……」



登ってきた時は窪みにばかり目が行っていたので、景色の事は全く目に入らなかったが、一度目に入ってしまえば、しばらくはこのままこの景色を堪能していたいという感情が出てきてしまう。



「……出来るなら、ここに別荘とか建ててみたいなぁ……ブルジョワか…ハハ!」



どう考えても無理な考えを戯れに思考しながら、そう1人で笑いを溢した後、アインス達は調査の為に山の反対側を降りていくのであった。









「……特に何もないな…」



山を下り始め、すでに3時間ほど……山の反対側には行きと変わらず、出て来る魔物はロックタートルとゴブリン、それにラットルが偶にいるだけで、なにか火竜がこの山を下りた原因になりそうな物などは発見できずにいた。



「う~ん……卵が原因って事なら、これ以上何もないのかも知れないけど……さすがにただ卵から子供が生まれただけで、あんな大騒ぎになるんだったら、昔にも同じことが起きてそうだしなぁ……」



古い資料などは王都の図書館でもあまり置いてはいないが、竜種が子を生す時に住処を変えようと大移動をする。なんて習性があるのなら、さすがに伝承や資料にでも情報が残っていそうなのに、そう言った話は一切出て来ていないので、ライア達の謎がどんどん深まって行くばかりだ。




「ん……?あれは……」



そろそろ反対側の山の麓にまで降りてくると、山の頂上からは見えなかった風景が見えて来る。



「……明らかに、この前討伐した火竜と同じくらいの大きさの生き物がいた跡だよな……」



アインスの目に木々がなぎ倒されて、何かが居座っていたような場所を発見する。



山から下りてきて、少しだけ高い位置から見下ろすことによって、森の一角が荒らされているのを見つけることが出来たのだ。





アインス達は≪索敵≫で周りに脅威になる魔物や火竜の子供がいないかを入念に調べながら、その場所に向かって行くと、その場所は直径30メートルほどの円状に森が抉られているような場所で、遠くから見て気づかなかったが、所々木が焼け落ちたような場所があったので、恐らく火竜の仕業だと予想する。



「そう言えば、エルフ達も火竜が頂上の巣から降りて来て、しばらく山の麓に居座ってたって言ってたっけ……ここがそうなのか?」




神樹の森に最初に来た時に、あの時は案内エルフとかって呼んでいたパテルに連れられて行った先で初めて会う事になったエルフ達の族長アルボラから聞いた話に、火竜が山の麓に下りてきて、しばらくそこにいたという話をライアは思い出していた。



(……そう言えばあの時は、もう神樹の森に“ゆっくりと向かって来てた”って言ってたので、あまり気にしていなかったが、魔物達が逃げ出し始めたのはあの時より1か月前のクストが逃げ出してきた時期のはず……つまり、火竜は1か月程はこの山の麓に居たって事だよな…)



ライアはあの時、火竜の動きに、微妙に何かの引っかかりを覚えていたが、火竜を討伐するという大事にそれ以上は考えれていなかった。



「つまり、火竜は子供の竜…もしくは大人の竜に何かが起きて、それを解決するために山の麓のこの場所に下りてきた……でも、1か月経ってもその問題は解決せず、神樹の森に向かってきたって感じなのか……」



そう考えれば色々と考えれることが増えて来て、とある記憶が脳裏を掠めていき、ある考えが浮かぶ。



「……『旋回しながらこちらに向かってくるのはなんでだ?なんか目的があるのなら、神樹の森とかリールトンの街じゃない気がするけど…』………そうだ、あの時の火竜の動きって、何かを探していた動きだったんじゃないのか?」




ライアは約3か月前ほどの記憶を思い出すと、あたかも正解だと思えるほど、頭の中のピースがピタリとはまる気がする。



「……卵から孵った子竜が居なくなって、探していた……?なら、この森の一部分に居座った理由が何かあるのかも知れないな……」



ライアはまだ確証は得られていないが、何かあると確信しながら開けた土地を調べようとアインス達を四方に走らせる。



(もし仮に子竜を探して山を下りたのだとすれば、一か所に留まり続ける訳が無い……なら、何か大きな穴や深い谷なんかに落ちたとかが考えられるけど………あったッッ!!)



アインス達で辺りを調べさせると、森にはどう見ても不釣り合いの厳つい岩が地面から盛り上がっていて、その岩には穴が開いており、奥に進めそうな洞窟になっているの見つけることが出来た。



その洞窟の入り口らへんには如何にも火竜が爪や牙を押し付けたような傷が残っており、この洞窟が火竜の1か月もここに居座らせた原因だと確信する。



「ここに子竜が迷い込んだのか?……いや、だとしたら火竜が神樹の森方面に来るはずがない……この洞窟に入ったのかはわからなく、1か月粘って子竜が居ないのを調べて、違う場所を探しに行った……みたいな感じかな?予想だけど」



どうにもそれの説が濃厚そうだと思ったライアは、他にも見落としている物が無いか、周辺の調査も進めて行くのであった。















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