火竜の山調査開始








―――――アインスSide





「大きいなぁ……」



今現在、分身体であるアインス達は火竜の出現原因調査依頼の為に、約1か月をかけて、火竜の住みついていた山に到着する。



山の見た目は、山の中腹から麓まで森で覆われていて、それ以上は標高が高い為か、草木は生えていないのが麓からでも見えていた。



「あの山の頂上に火竜の巣か…」



実はここに来る前に、神樹の森にて火竜の山に関しての情報をエルフ達に聞いており、火竜の住処が山の頂上なのはわかっていたので、今回の調査でも山の頂上まで登る予定なのだ。




「まぁ、一日二日で終わると思っては無いけどね……早速行ってみるか!」



そう言ってアインス達は森の入り口の茂みの木に馬達を繋ぎ、近くに魔法で水場を作ってから火竜の山に向かって森に入って行くのだった。











――――――――――

――――――――

――――――











「やっぱり魔物が少ないな…」



森に入って2時間ほど経ったのにもかかわらず、出会った魔物はこちらを襲わないラットルとゴブリンという最下級の魔物にしか出会わないのだ。



「……火竜が山を下りた事で、色んな魔物が各地に逃げてきたけど、その影響でこの山の魔物が殆ど居なくなったのかな?」



火竜の襲撃からすでに3か月以上は経っているのにもかかわらず、強い魔物は見当たらないので、恐らくはそう言う事だろうと考える。




そうして麓の森を歩いて行き、山を登り始めたのか、ところどころに急な斜面が現れ始め、どんどん標高が上がって行く。





「ん……?…あれは……」




山を登り始めて1時間たったかどうかと言ったタイミングで≪索敵≫引っかかる異様に大きい生き物が見つかる。



だが、反応があった場所に行けばそこにいたのはどこをどう見てもただの大きな岩で、魔物にも動物にも見えなかった。




「岩……もしかしてゴーレム…?……でもこんなに真ん丸のゴーレムっているのか?」




今まで見た事もない魔物も多くいるのはわかっているが、会ったこともない魔物の知識を調べた事も無いので、ダンジョンのゴーレムとは違い、真ん丸のゴーレムがこの世界にいるのかも疑問に思ってしまうライア。



(……ウィスン達で魔物関連も図書館で調べよう……わッ!?)



―――――グゴゴゴッ……




自分の勉強不足を認識し、魔物関連も勉強しようと考えていると、突然目の前の岩から岩で出来たような顔が飛び出してくる。



「な……これって亀か!?」



「グァァァ……」



目の前の大きな岩にしか見えなかった生き物はどうやら亀の魔物だったらしく、頭と四肢を突き出しゆっくりと移動を始める。




「………襲って来ないな……」



目の前の岩亀はライアの事を認識していないのか、普通にライアの横をゆっくりと通り過ぎようとしている。




「……なんだこいつ…ラットルみたいな無害な魔物かな…?」



何とも肩透かしな気分になりながら、一応魔石関連でこの魔物を知っているかな?とライア本体と一緒にいるリネットにこの岩亀の魔物を知っているか聞いてみる。




『岩で出来た亀なのです?……タートル種の魔物は色々と種類が多いので、この目で見ていないので断定はできないのですが、全身が岩で出来ているなら、恐らくロックタートルでいいと思うのです』



『ロックタートル……』



リネットが言うにはロックタートルの魔石は土属性に近い、岩属性と少し勝手が違う物らしく、あまり高価な魔石ではないらしい。



『どうにも土属性みたいに自由に造形出来る訳でもないですし、自身の体を岩に変質させる魔物だけが使う属性なのですよ……土属性でも岩のように固い造形物を作り出せるという事もあって、なんで土属性にならなかったのか不思議に思われる魔物の一種ですね……あ、別に襲ってくる魔物じゃないので、放置でいいと思うのですよ』




そうアドバイスを貰い、アインス達はロックタートルを無視し、先を行く事にした。



(ロックタートル……移動も遅いし、火竜が下りてきた時に逃げ遅れた……もしくは気付かないでじっと寝てたとかかな?)



どうして他の魔物達が逃げている中この魔物だけ残っていたのかを不思議に思いながら、険しい山を上がって行くのだった。












それから1時間ほど山を登って行くと、やっと山の中腹らへんに到着し、森を抜けることが出来た。



「……さすがにもう暗いし、今日はここで野営にするか……」



アインス達は周りが暗く、まだ≪鷹の目≫のスキルを取得出来ておらず、夜目が効かないので、今日は大人しく野営することにした。



「……さて、幻魔法はキチンと魔物に効いてくれるかな?」



アインスは不安そうな表情でそう言葉を漏らす。



今回の野営で幻魔法が機能してくれなければ、山にいる魔物達にアインス達が襲われる危険性が非常に上がってしまう。



(……とは言っても、この山には全く魔物がいないし、襲ってくる魔物もせいぜいがゴブリンなので、仮に幻魔法がきちんと機能しなくても、ぶっちゃけ問題は無さそうだが…)



実際に想定していたのは、オークやオーガ、それにヤヤ村やダンジョンで見た事のない魔物達が闊歩する森の中でギャンブル野営をするつもりだったので、ライアは肩透かし感は感じてしまう。




そんな風に考えるライアだったが、ゴブリンに襲われて、分身体達が消えるのも馬鹿らしいときちんと野営スペースの周りに土魔法で壁を作り始める。



ちなみに囲いの壁は作るが屋根は作らないようにしている。というのも土魔法で作った物は一晩経っても消えたりはしないが、魔物に何度も攻撃されたり、強い衝撃を受けると崩れてしまう可能性があるから、屋根を作成してしまうと生き埋めになる可能性もあるからだ。



「土魔法でもっと頑丈に……それこそ鉄製に出来たらいいんだけどね……さすがに無理だね」



魔法もイメージで現象を起こすと言っても魔力の限度もあるし、何よりライアは鉄の原子配列?や鉄の作り方などはさすがに覚えていなかった為、イメージも出来ない。



(この世界に転生して、もうすでに15年……元の世界で、中学校や高校で習ったことも殆ど忘れてるしなぁ……水兵りぃべぇボクの船?原子記号なのは覚えてるけど、中身が思い出せないしな……)



ライアはもう少し前世の記憶をきちんと覚えておけばよかったと思いながら手を進めていき、手作り野営地が完成する。




「さて、後は……“カモフラージュ”!」




アインスは出来たばかりの手作り野営地に幻魔法の光学迷彩をイメージして、作成した“カモフラージュ”という魔法を掛けていく。




「ん~………中からだとよくわからないけど……外から見れば、きちんと魔法が発動しているのが分かるね」



アインスは中にいるツヴァイ達の視点で、外にいるアインスを見ることが出来るが、外から魔法を掛けていたアインスからは、魔法をかけた野営地の部分が消え去り、山肌と同じ、石ころが転がるただの地面が見え、魔法がきちんと機能しているのが分かる。



「……あぁ……さすがに土魔法と同じで魔法消費が無いってわけじゃないな……これはもしかしたら水魔法と同じでダメそうかな?」



幻魔法を発動させている間、少しずつだが魔力を消費している感覚がして、随分前に行った水魔法の持続実験の時と同じく、これでは魔法発動者が眠った際に魔法が消えてしまうと何となくわかってしまった。




「はぁ……結局ギャンブルか……まぁでも、魔物が少ないっていう状況だし、今回は大丈夫かな?……でも俺って、この問題をどうにかしないと、本当に一人で行動できない感じになりそうだなぁ……」





ライアは今の所、数日の内1日はすべての分割した思考……脳をすべて休ませないといけなく、どうしてもそこがネックになっているので、どうにか出来ないかを考えるのであった。















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