合成魔石









昼食を済ませたライア達はそれぞれの場所に分かれて仕事を開始することになった。



リグはリネットが用意した質素な魔石の合成をしてもらいに先程の部屋に向かい、リネットとライアは実験室に行ってリグの作ってくれた合成魔石が魔道具として、きちんと動くのかを確認しに向かう。



パテルにはメイドのユイさんのお手伝いをしてもらいつつ、余った時間で≪格闘技≫の取得を目指して訓練をしてもらっている。






「……よし、ライア!ついにこの時が来ましたよ!」



「すごい興奮してますね……まぁ俺も結構楽しみでしたけど」



実験室でリネットとライアの2人きりになると、ずっと隠していた興奮が抑えきれなくなったのか、リネットが大声を出す。



ライア自身も合成魔石が実際に使えるようになったら、色々と出来る幅や今までの魔道具も一気に改良出来る事態になるので、リネットの興奮する気持ち自体はよくわかっていた。




「今はリグ君の作ってくれたこのエクロイールの合成魔石を使って、簡単な魔道具を作って見るのですよ!」



「そうですね……魔道具にするとなると、この魔石の属性は弱い静電気……まぁ電気属性でいいんですかね?」



「ひとまずその“電気属性”と呼称しておくのです。その電気属性を魔道具にするのであれば、本来なら人体への麻痺や火を熾す種火替わりと言ったものが浮かぶのですが……今だこの魔石の出力が弱いのですよ」



合成魔石は元の魔石よりも確実に出力は上がっていることは確かだが、合成を得ても未だその出力は低く、静電気の域からは出ていない。




「ん~やはりただ、静電気を発生させる魔道具を作るしかないのですね」



「それはしょうがないですね……もっと出力の高い合成魔石は、今後のリグの合成に期待しましょう」



という事で今回作成する魔道具は、とっても簡単に出来る電気属性を使った、静電気発生装置に決まる。



作り方は単純で、合成魔石に“魔力を注がれたら電気に変質させ、金属体にその電気を流す”イメージを付与し、魔道具の素材に“手が触れると手に纏っている魔力を魔石に送る”という簡単なイメージを付与して、後は組み合わせるだけで完成する。



「………なんか簡単すぎる魔道具ってのも悲しいですね」



「これは起動するかの確認なのです……それに簡単とは言いますが、イメージの付与も≪錬金術≫の神髄なのです!なので、退屈などという気持ちにはなっていないのです」



ここ最近のライアは素材を複数用意し、部品ごとにイメージの付与や、魔道具の発動条件を複雑なものにしたり、≪錬金術≫で先に別の素材に変質させてから魔道具にする。といった事ばかりやっていたので、どうしようもなく肩透かし感があったので、それをリネットに言えば≪錬金術≫一筋のリネットには愚問であったようで、そう返答してくる。



「……さすがですね先生……俺も驕らずに頑張ります!」



「……ウム!」



何となく、リネットの目が泳いでいた気もするが、今は出来た魔道具の確認の方が先決だと、魔道具の方に目を向ける。



「それじゃ早速試してみましょうか」



「はい!」




ライアは金属に囲われた静電気発生装置である魔道具の取っ手に手を触れると、バチっと音が鳴る予定のはずが、特に何も起きない。



「……あれ?もしかして合成魔石はダメだったとか…?何かイメージが悪かったんでしょうか…?」



「……あぁぁ…なるほど、そう言う事ですか」



実験結果を見て、何か失敗をしたのか、想定通りに起動しない魔道具に何が原因だったのかを考えるライアとは違い、リネットは失敗した要因が分かったのか納得の声をあげる。



「先生はなぜ、魔道具が起動しなかったのか分かったんですか?」



「まぁわかったと言うか、見ればわかったというか……ライア、自分の髪を見るのです」



「……髪…?…わッ!?」



リネットの言葉に自分の背中側の長い髪を見ようとしたら、まるでハリネズミかと思うほど髪の毛がブワッと広がっているのが目に入る。



「……あ、そうか、合成魔石への“魔力を注がれたら電気に変質させ、金属体にその電気を流す”というイメージだと、金属に触れている俺の手にも静電気が流れて、俺の体に静電気が溜まっちゃったのか……」



「そうですね、これは静電気をため込む金属板とは別の電気を通さない素材の二つを使わないといけなかったみたいですね」



冷静に考えてみれば、普通にわかる事なのに、あまりに簡単な構造に油断して、おざなりな仕事をしてしまっていたらしい。



「すいません、失敗をしてしまいました」



「いいのです、ボクも魔道具の作成中は見ていて気付かなかったのですから、同罪です。……でもこれで、簡単な作業だとしても失敗したという経験は学べたので、よかったかもですね!」




リネットは先ほどの簡単な魔道具作成に退屈してしまうライアに対して、これで真剣味が入るでしょうと注意してくれた。



「はい、これからは気を付けます」



「はいなのです。……でも、結果自体は予想の物と違いはしましたが、起動自体は出来ているので、合成魔石もきちんと使えることが分かったのです!」



「……そうなりますね……と、言う事は…」



リネットの言葉に賛同しつつ、にやりと楽し気な表情をリネットに向けるとライアの言いたいことが伝わったのか、リネットも楽し気に笑みを溢しながら言葉を発する。




「ふふふん!これからは合成魔石による魔道具の改良作業や新たな属性魔石の研究、それに≪合成術≫に関しての報告など色々とやる事は目白押しなのです!……もちろんボク達の実験や研究もかなり楽しくなるのですよ!ライア!」



「あははは!忙しすぎて目が回りそうですね……でも俺も楽しみです」




2人はこれからの未来を思い、楽しそうに話し合うのであった。













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