久し振りの冒険者ギルド








―――――ライアSide





――リールトンの街に到着し、リグに街を案内した次の日、ライアは火竜の出現原因調査の事を話す為としばらく分身体だけでしか職員達と会って居なかったので、久々に冒険者ギルドに顔を出していた。





「……でぇ?昨日到着して、こっちには顔を出さず、リネットとこの工房には顔を出したと…?」



「……すいませんでした…」




で、冒険者ギルドに到着して、ギルドマスターの所に行くと開口一番で「よぉライア……お前、上司であるオレへの挨拶も来ないで、いい度胸だなぁ?」と圧の感じる笑みを浮かべて話しかけてきた。



分身体と一緒にいつもいるし、ライア的には特に久しぶりのアレもないのだが、「これはとぉさんかぁさんと同じ、理屈じゃない答えの問題だ」と瞬時に理解をしたので、何も言い訳せずに頭を下げることを選ぶ。



……決して、ギルドマスターの笑みの圧に押されてしまったとかではないと言っておこう。





「まぁそれはいい……それよりも領主様から依頼された調査依頼の件だ。あれはどうするつもりなんだ?」




ひとまず怒りの矛先を静めてくれたギルドマスターは、早速昨日依頼された調査依頼の件を話し始める。



「やはり、他の冒険者達は連れて行かないで、俺の分身体達だけで向かおうと思います」



「…だがそれだと、昨日言ったみたいに野営をする際にもんだいがあるんじゃねぇーのか?」



これは昨日の時点でギルドマスターに分身体越しで伝えた事なのだが、まだ野営時に数日に1度は必ず睡眠を取らないといけない問題は話しており、そこをどうするかを話し合っていた。



「その件で昨日の夜中に考えたんですが、少しだけ試してみたい事が出来たので、それを試してみようかと」



「試したい事?」



実は昨日考えていた対処方を思いついた時はすでに夜で、分身体達はすでに帰宅させていたので、この案はまだギルドマスターには伝えれていなかった。




「はい、野営の際に幻魔法を使用してみようかと思いまして」



「……幻魔法って、お前の特殊属性の奴か?それを使うって事は寝てる間、魔物に見つからないようにするみたいな事か?」



「はい、軽く土壁も作りますが、壊されて生き埋めになるのも嫌なので、幻魔法で気付かれない様にしようかと」




ギルドマスターは話は聞いていたライアの幻魔法の事を思い出し、すぐにライアの考えを読んでそう聞いてくるので、肯定の意味を含めて、そう補足を入れる。




「……だが、それって寝てる間も持続するもんなのか…?」



「……さぁ?…少なくとも土魔法で作った土壁なんかは、崩れないようにイメージしたら一晩経っても残ってましたよ?……水魔法を空中に出し続けるのは魔力を随意使用する為か出来なかったですけど……」



これは昔、ライアが9歳以前にヤヤ村で魔法の練習をしている時に調べてわかった事である。



……まぁ、この結果があるからと言って、幻魔法が寝てる時も持続するのかは分からないのだが…。



「水魔法は失敗してんじゃねぇか……」



「まぁもし幻魔法を試してみて駄目であれば、最悪襲われない事を願って、野営ギャンブルするので、ご心配なく」



ライアのその発言を聞いたギルドマスターは呆れた表情で「それは心配させる提案だと思うんだが?」とツッコミを入れて来るが、それ以上の案は思い付かないだろうと無視するのであった。















それから少し個人的な“用事”を済ませたライアはギルドマスターの執務室を後にし、アインス達に調査依頼を受けさせるべく、受付に来ていた。



「こんにちはセルスさん、ネリヤさん」



「ん?ライアさん?……どうかしたのですか?」



「今日はギルド長の監視はぁいいのかしら?」




受付にいたセルスとネリヤに声をかけるが、ギルドマスターの監視についている分身体のライアだと勘違いしているのか、不思議そうにこちらを見て来る。



「あ、すいません……王都に行っていたライアの本体です。今日は領主様に依頼された調査依頼を受けるのと、しばらく私本人がギルドに来ていなかったので、挨拶がてら顔を出そうかと思いまして」




「あぁなるほど……そう言われてみれば、何時もあっているライアさんは分身体の方ですからね」



「私はアハトちゃんともよく話してるから、いつも会ってる気がしてたけど、実際には久しぶりなのかしら…?」



ライアの言葉に久しぶりに会うという感覚ではないらしく、やはりギルドマスターや実家のとぉさんかぁさんが少しズレているだけなのだと思いなおす。



(……まぁ、機嫌を損ねたくは無いし、文句を言うつもりはないけどね!!)




そんな世間話をしながら、アインス達の依頼受理の作業を済ませて、冒険者ギルドを出ることにする。



「ミリーさんとカズオさんにもよろしくお願いします」



「任せて!……って言っても隣にアハトちゃんがいるんだから、あんまり2人に言う意味は無いと思うのだけれど…?」




「……そう言われてみれば、確かに変ですね?」





「こう言うのは気持ちと言いますし、細かい事は気にしなくてもいいのでは?」




別れ際に今日は休暇のミリ―とカズオに伝言を頼むが、別にアハト達分身体が居るので、自分で伝えれる事をツッコまれたり、セルスに少し笑われながらフォローされたりとしながらライアは冒険者ギルドを出るのであった。












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