一難去って、また一難









「なぜだ!?」



コルドーはライアの捕まっていないのか?という疑問に心底わからないと言った表情で聞いてくるが、むしろなぜそれで大丈夫だと思ったのか素直に聞きたい。



「……どこからどう聞いてもストーカー……いえ、危ない人のような…?」



「あっはっはっはっは!」



アイゼルはこれまたライアの発言に爆笑しており、セリーナ達も「うんうん」と頷いて共感してくれている。




「コルドー諦めろ…これがお前のしてきた事の現実だ」



「んぐ……そうか……すまないライアちゃん」



「あ、いえ!こっちもあまりの衝撃に初対面の方に言い過ぎました……すみません」




コルドーに頭を下げられ、貴族に対し厚かましい態度で口をきいていたと反省し、ライアも謝罪をする。



「いや、そんなに畏まらなくても構わないよ。ライアちゃんに悪い所は無いんだしね!」




「……ありがとうございます」



コルドーは優し気な笑みを浮かべながら、口調などは特に気にしてないらしく、普通に許してくれた。



しかし、先程のヤバい人の発言には驚かされたが、この人もリールトン家の一族なのだとはっきりとわかったのは確かだ。



昨日行った合成魔石の実験の件で暴走した時のリネットと瓜二つすぎて、驚いてしまった。



(……まぁ話の内容は全然違い過ぎるんだけどね……)










コルドーのストーカー気質が判明してから少し経って「ツインテ―ルのライアちゃんが見れないのは残念だけど父上たちも要るし、今日は挨拶だけで帰ることにするよ」と言って屋敷を去って行った。



モーゼスなどは「一緒に夕食でもどうだ?」と聞いたのだが、騎士の仕事が休みなわけではなく、一時的に抜け出してきているらしいので、長居は出来ないのだという。



仕事を抜け出してライアに会いに来たのだとわかりアイゼルに「このバカ息子」と怒鳴られていたが、特に堪えた様子は無かった。




「……まったく、コルドーももう少し真面目であればな……すまなかったなライア君、コルドーは悪い奴ではないのだが、少しアレでな」




「アハハ……すごい方でしたね…?……あ、そうだアイゼル様、少しいいですか?」




アイゼルの言葉に愛想笑いを返したライアは、朝食中に話すのも違うかなと思っていたリグを馬車に乗せて連れて行きたいという話を伝える事にする。




「なるほど……そのリグという少年が同乗するのは構わないよ」



「ありがとうございます」



元々ライアとアイゼル達の乗る馬車は別であるため、自分達の馬車に人を増やす増やさないは自由とあっさり許可が出る。



「しかし、合成魔石か……それはどんなことが出来るようになるのか聞いてもいいかな?」



馬車に乗るのは構わないが、リネットが直接欲しい人材で、合成魔石という名前を聞いて少し興味が出たのか、アイゼルは質問を投げかけて来る。



「実はまだ何ができるかはわかっていなくて、予想では今まで出力が足らないという理由で使えなかった魔石が何かしらの活用が出来るようになるかもとはリネットさんと話してますね」



「なるほど……一応何ができるかはリネットにも確認するつもりだが、何か進展やわかったことがあったらギルド経由でもいいからこちらにも教えてくれると助かるよ」



「わかりました」




アイゼルは錬金術師界の事情などはあまり触れていないのか、それほどピンとは来ていないようだが、領主としてはキチンと知っておくべきことだろうと判断したのか、そうお願いしてくる。




「それでは私はまだ仕事があるので、行くとするよ。ライア君も折角の王都だ、楽しんでおきなさい」



そう言って執務室に向かうアイゼルを見送り、ライアも部屋に戻ろうと席を立つ。



「それでは、私もこれで失礼しますね」



「あぁ」



まだ部屋に残っていたモーゼス夫妻とアイリス達に挨拶してから、部屋の扉を開け廊下に出ると、思いの外緊張していたのか、ほんの少し気が抜ける。




「はぁぁ……なんかすっごい濃い人だったな…」



「男性やコルドーお兄様基準のツインテ―ルが似合わない女性には普通の態度なのですが……困ったものですわ」



コルドーのあの暴走はライアがコルドー基準でツインテ―ルの似合う女性だったって事らしく、何とも言えぬガッカリ感が起こる。



「なるほどね……てことはコルドー様は俺の事を女性って勘違いしたままって事かな?……どうしよう…俺の性別教えてないや…」



「それは大丈夫だと思いますわよ?コルドーお兄様の言っていた通り、情報を集めてから突撃をしてくるので、恐らく男性と知った上であれですの」



どうやら情報を集めるという発言は本当らしく、それもかなりの精度の情報を集めるらしく、女と勘違いをしている訳では無いらしい。



「それならまぁ…良かった…なのかな?……男とわかっていて、ちゃん付けか…」



「可愛いは正義ですわ」














「………アイリス様?」



「はい、何でしょうライア様?」




どうにも自分の独り言に返答が返ってくるなと思いつつも、しばらく気づかない振りをしていたライアの後ろには応接室を出る時に確かに部屋に残っていたはずのアイリスが目の前にいた。




「えっと、どうしてここにいるんですか?」




「何をおっしゃっているのですライア様!一昨日はドレスばかりでしたけれど昨日の女性騎士風の服装を見て、今日はスタイリッシュなパンツスタイルの洋服を集めましたの!こちらですわ!!」



「あ……今日もお着替え人形ですか……」




ライアの問いに微妙に噛み合っていない返事が返って来るが、この後の自分の予定と運命を悟ったライアはアイリスに手を引かれながら、静かに瞳を閉じるのであった。













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