リールトン家の次男坊











モーゼスがさすがに朝食を摂りながらライア達をコルドーに会わせるのは失礼だと、無断で屋敷に来たコルドーを応接室に待たせるようにメイドに指示し、食事を素早く済ませてから、コルドーに会う事になった。



(モーゼス様……コルドー様が待ってるって言っても「朝食中に来たあいつは待たせておけばいい」って朝食を堪能してたな……)



先ほどはコルド―を呼んでアイゼルに会わせてやりたいとも言っていたので、兄弟仲は悪くはないのだと思う。


だが、さすが料理好きと言っていいのか、自分の食事はきちんと摂ることを優先するらしい。





そして20分程で食事が済み、今は応接室にいるリールトン家の次男であるコルド―に会いに来ていたのだが…。




「このきめ細やかな艶のある綺麗な紅い髪はツインテ―ル一択に決まっているだろう?」



「駄目ですわよコルドーお兄様、ライア様の御髪はツインテ―ルだけでまとめてはいけない至宝ですわ!……まぁツインテ―ルも大変可愛らしいのですけれど」



応接室について、すぐにアイリスと一緒にライアの髪をつぶさに観察され、自己紹介をする前に髪質を調べられるという不思議な関係になってしまっていた。








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「いやぁごめんごめん……あまりに良い髪を見つけてしまって、、居てもたっても居られなくてここまで来ちゃったよ」



「はぁ……」



それから落ち着く様子の無い2人をアイゼルに止めてもらい、やっと話が出来るようになった。




「改めまして、俺はリールトン伯爵家の次男坊のコルドー・リールトン。王城で騎士をしている者だ」



コルドーの見た目はモーゼス達と似た雰囲気で、短く切られた短髪の体育会系を思わせる男性である。



……一見優しそうな一般男性に見えるそんな見た目であるのにもかかわらず、先程まで人の髪をじっくり見つめて、「ツインテ―ルが良い!!」と叫んでいた人物と同一人物には見えないが…。




「私はリールトンの街で冒険者などをしているライア……インクリースと申します」




ライアは自己紹介をされたので、自分も返そうと挨拶をするが、自分にも家名が付いたことに慣れず少しだけ言葉に詰まってしまう。




「よろしくねライアちゃん!……ところでツインテ―ルにしてみる気は……」



「おっほん!」



隙あらばライアの髪をツインテ―ルにしようと目論むコルドーだが、隣にいるアイゼルの咳を聞いて落ち着いたのか「……いや、また今度にするよ…」とうなだれる。




「……えっと…コルドー様ってやっぱり…?」



「はい、コルドーお兄様は重度のツインテ―ルマニアですわね」




やはり、部屋に入って、いきなり見ず知らずの他人に「君、ツインテ―ルにしないか?」と聞いて来て、その後もずっとツインテ―ルの事しか話さないからそうなのかなとは思ったが、アイリスの肯定によりはっきりとコルドーの趣味……いや、これはフェチか?が分かった。



(ツインテ―ルフェチ……俺は男だからいいけど…いや良くは無いが、これが別の女性とかだったら捕まるのでは…?)



想像で道を歩いている女性に「すいません…貴方の髪をツインテ―ルにしていいですか?」とナンパまがいな行為をするコルドーを考えてみるが、普通にアウトにしか思えなかった。




「あの……コルドー様って捕まった経験などは……」



ライアは少しだけリールトン家の心配と純粋の疑問から、少しだけ失礼な言い回しになってしまっている質問を投げかけてしまう。




「ぶあっはっはっは!!コルドーのツインテ―ル好きの危険性を思って、ライア君が心配してしまったではないか……くくく」



アイゼルはライアの言葉を聞いて、大声を出しながら爆笑して、コルドーを煽る。



「え!?あ、違うんです!いや、違わないのかも知れないですが気になってしまって……」



「あははは!ライア君、コルドーの事は気にしなくていい、その疑問はもっともだし、前に父上にも同じことを言われているからね」



「あ、やっぱりですか…?」



モーゼスの言葉にまたしても失礼な発言だと気付かずに、そう確認すれば、笑っているアイゼルやモーゼス、それにアイリス達にも頷かれる。



「アハハ!まぁ色々言われるのには慣れているし、別にライアちゃんは気にすること無いよ!……実際俺もそう言った危ない事をする可能性もあるって思ってた時があるから、そこに関しては何も言えないからなぁ」



「……でも、そう言うって事は大丈夫なんですよね?」



ライアの失礼な言葉にも笑って許してくれるコルドーにそう質問するとにこやかに笑いながら頷く。




「俺がもし街中で無差別にそうするんだったら、王城でライアちゃんを見かけた時に突撃してると思わない?」



「そういえば、王城で見かけられたんでしたっけ?……確かに、私は王城でコルドー様に声はかけられてはいませんね?」




言われてみれば、もしも見ず知らずの他人に声をかけまくるヤバい人であれば、屋敷に帰ってから探されるのも変だなと感じる。




「…俺はさすがに騎士として、捕まってしまう訳にはいけないと考えて、ある方法で自分を抑えることにしたんだよ」



「それって…?」




抑えなかったら普通にやっているのかというツッコミはおいて置いて、その己の衝動を抑える方法は何かと聞こうと耳を傾けるライア。





「ツインテ―ルの似合う女性を見つけたら、頭の中でストレートツインテや内巻きツイン、それに逆毛を少し立たせたゆるフワツインに結び目の高さがどのくらいが良いかを脳内で想像し、まずはどのツインテ―ルが良いかを1,2時間考えるんだ。そして、一番似合うツインテ―ルが決まった時には目の前にはその女性は居なくなっているので、そこからその女性がどんな人か、どこに住んでいるかを知り合いや知人に聞いて、会えるのであれば会いに行きツインテ―ルにしてもらうようにお願いをするのだ。そこで会えない人物や会っても既婚者で近寄ったらダメな人と事前に分かれば、何とか諦めるという方法で、今まで何とか捕まってはいないのだよ」












「………なんで捕まってないんですか?」




この時ライアの表情は、貴族を敬う気持ちなど全く感じられない、冷えた表情をしていたのだとか。








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