可能性









「≪合成術≫……それがリグのスキルなのか?」



「うん……ギルドでもかなり珍しいって言われた特殊スキルなんだけど」



≪合成術≫……字体的には何かを合成、合体させる的な事が出来るのであろうか。


そのスキルがどんなものかわからなければ先ほどのリグの質問に返事が出来ないので、どういったスキルなのかを確認することにする。




「それで、その≪合成術≫はどんなスキルなんだ?」



「ステータスカードには物と物を混ぜ合わせることが可能でレベルに比例して効果が上がるって書いてたけど……色々試しても石とか木を混ぜて、変な物を作るだけのスキルなんだ」




混ぜ合わせるというのはそのままの“合成”なのだろうと予想はできた。



リグが石や木しか使っていないのはお金が無く材料を揃えれないからと、レベルが低いからまだそれくらいしか合成出来ないといった理由だろう。



「それは……それで今すぐ大金を稼ぐのは厳しそうだな…」



「……やっぱり、そうだよね…」



≪合成術≫と聞いてまず思い浮かぶのは鉱石などを合成し、合金を作り出しそれを売ると言った考えが浮かぶが、そんなのは鍛冶屋が出来てしまうし、需要は少ない。



鉱石だけではなく皮や木と言った物を合成して、安上がりだが頑丈な素材を生み出すといった事も出来なくはないのだろうが、売れる素材を探すのに時間が掛かるし、何より所持している人間がまず居ないとされる≪合成術≫スキルで生産された合成素材は量産に向かず、物珍しさで買われる程度だろうと予想できる。



皮や木、鉱石などでもいいが、出来るなら一点ものの何かを作る際に≪合成術≫を活用するという形であれば、問題は無いと思うが、そんな都合の良い物はすぐに思い浮かばない。




「こんな石ころ同士を混ぜ合わすだけの珍しいスキルより、少しでもお金が稼げるスキルが欲しかったな……」



(そう思っちゃうのも仕方ないか……石と石が出来るなら、魔石同士も出来るんだろうけど……それ……は…?)



リグのガッカリとしながら漏らした愚痴を聞いて、何気なく魔石も混ぜれるのかなと考えると同時に「あれ?」と疑問が生まれる。



(鉱石同士を混ぜ合わせれば合金になるのはそうだけど、魔石同士って混ぜるとどうなるんだ…?魔道具で複数の種類の魔石を使用して、複雑な機能を持った魔道具を作る事はあるけど、熱で溶かして合体させるなんてことはしないはず……)



ライアはふと今までの≪錬金術≫を学ぶ上で見知った知識の中に、魔石同士を混ぜるといった感じの実験などが無いか思い出してみるが、そんな物は思い当たらない。




『先生!!』



『うひぃ!?なんなのですいきなり大声をあげて!?』



ライアは自分だけの知識だけでは足らないと、リールトンの街の工房で実験をしているリネットに分身体で質問を投げかける。



『実は確かめたいことがあるんですけど、魔石同士をくっつける…混ぜ合わせて使用するって可能なんですか?』



『混ぜ合わせる?それは不可能なのです。魔石は熱でも溶けないし、力を加えすぎれば砕けてただの石になってしまうのです』



やはり魔石は単体で使う物という認識らしく、基本的に合金(合石?)は不可能と考えらしい。



『……いきなり叫んだのですから、何かあったのです?』



リネットはライアが何か面白い事を見つけたのかと興味を持ったようで、分身体ライアに詰め寄って来てそう聞いてくる。




『えっと、実は≪合成術≫という特殊スキルを持った方に出会いましてですね、石と石や色んなものを合成できるスキルらしいんです』



『…………』



ライアはリネットに個人名を伝えずに、そのようなスキルがあったのだと報告するような形で伝えると、リネットは何かを考え込むように黙りこんでしまう。



『あの、先生?』



『ライア……魔石同士が混ざり合ったらどうなるか確認しましたです?』



『え?…いえ、今そのようなスキルがあると聞いたばかりだったので、その確認はしてないです』



黙り込んでいたと思ったら、すぐにこちらに真剣な表情を向けながらそう言ってくるリネットに現状≪合成術≫で出来ることをスキル所持者に聞いた段階だと伝える。




『何をぐずぐずしているのですかライア!今すぐに魔石の合成実験を行うのです!!』



『え…そんないきなり言われましても、もう夕方なんですが…』



『これは錬金術業界の命運を分ける命題なのです!!もしこれで同じ属性同士を合成して、魔石の質や魔力量が増えでもするのなら、魔道具の常識が一変するのです!!お金に糸目は付けないので、早く確認するのです!!』



『……ハッ!』



リネットの言葉にもしも魔石の保有魔力の質や状態が向上する結果になれば、粗悪な小さい魔石でも集めて合成すれば最高品質の魔石になるのではと気付かされる。




「リグ!!!」



「はい!?」




その仮定に熱くなったライアは声を荒げながらリグに声をかける。




「ちょっと試したいことが出来たから、少し待っててくれるか?少し冒険者ギルドに行かないといけなくなった」



「え…?待つって一体どうしたんだ?」



ウィスンの興奮した様子に困惑するリグは何があったのか疑問に思っている。




「ウィスンさん、何かいい考えでも浮かんだのでしょうか?」



「!!ウィスン!それホント!?」




その様子を見ていたベルが、ウィスンが何か良い策を思いついたのだと察し、確認してくる。





「いい考え……って言っても、これもやっぱり実際に試してみないとわからないけど、俺が考えている結果になれば」



ウィスンは可能性の段階だという事を2人にきちんと伝えて、はっきりとこう答える。






「借金なんて目じゃない程のお金が動く事になるよ」






2人に期待させてはいけないと思いながらも、楽しみの感情を隠せずに宣言をしたのだった。












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