孤児院








そこからはリグに孤児院の借金の事や孤児院での生活などの事情を聞きだし、手伝える事などがないか確認していく。




「……結構ギリギリだな…」



「……実はそうなんだ…」



リグに聞いた情報をまとめると、孤児院が抱えている借金というのが元々孤児院を経営していた元オーナーが莫大な借金を作ってしまい、返済が出来ないと逃げ出してしまったことが原因であるらしい。



借金を作る際に、その元オーナーの家や財産をすべて担保にしていた為、残りの借金自体は大分少なくなったらしい。



それでも、まだ返済出来てはいないので、他の財産と同じく担保になっている孤児院はこのまま行けば借金のかたとして売らねばならなくなるらしい。




「言い方はあれだけど、どうしてまだ徴収されていないんだ?」



「えっと…俺達孤児がその辺で飢え死ぬのも目覚めが悪いって次の施設に行く時間は待ってくれてるんだ……でも、この街に余裕のある孤児院なんて無いし、追い出されるのは時間の問題なんだ」




リグの話では今の現状追い出されていないのは借金をしたところの温情で待ってくれているらしいが、何か解決策が無ければどのみち待っているのは子供たちの死なのだそうだ。




現状、まだ小さく自立できていない子供たちは孤児院で働いている大人とお留守番をしてるみたいだが、それ以外の孤児たちは自分たちに出来る事は無いかと一生懸命探しているらしい。



「それでリグはお金の稼ぎ方って事か…」



「……うん、どう頑張っても今からお金を貯めるなんて無理だってわかってるけど、もしかしたらがあるかもって思うから」



リグはそう言って悲しそうに笑う。



「その孤児院で働いてる人はなんて?」



「『ごめんね?私はあなた達の家を守ることが出来るほど強くはないの……でも絶対あなた達を見捨てないし、飢え死にさせたりもしないから安心してね』って」



どうやら孤児院で働いている女性は孤児院が無くなっても子供達を守ろうとしてくれる優しい人のようだ。



「……優しくていい人なんだね」



「そうだよ!先生の教えがあるから俺達も悪い事をしたりしないしな」




なるほど、先日のリグが言っていた「助けて貰ったらお礼を言え」と教えられたと言っていた先生とやらがその人なのだろう。




「……でも、その先生もここ最近はずっと満足に休めてないから、すごい疲れた表情をしてて、どうにかしてあげたいんだけど……」




先生の事を少しだけ自慢げに話していたリグは先生の現状を思い出したのか、少しだけ暗い表情でそう言葉を漏らす。




「そのまま放置してたら、最悪倒れてもおかしくはないな……よし、一旦まずは俺を孤児院に連れて行ってくれないか?もし家事や力仕事があれば手伝って先生さんを休めさせれるし、他にも出来ることがあるかも知れないしな」



孤児院の状況を聞けば聞くほどギリギリの状態の様だったので、まずはその先生とやらをどうにかしようと思いそうリグに伝える。



(お節介かもしれないけど、ここで何もしないで子供達を見せてる方が俺は嫌だしね……もしどうしようもなくなったら、最悪俺が孤児院を買い取る事も出来るし)



ライアは子供好きな一面を自覚しつつ、存外リグを気に入ったのかワイバーンやら傷薬販売で手に入れた大金を使うのも辞さないと考えていた。




「……ありがとウィスン、やっぱウィスンは優しい人じゃん」



「お節介なだけだよ」



ウィスンの言葉に「さっきと言ってること違うじゃん」と笑みを溢しながらツッコミを入れるリグの姿がそこにあった。








―――――――――

―――――――

―――――







「ここが俺達の家だよ!」



孤児院に行くと決めてから図書館を出発し、リグの案内の元住宅街を抜けた先にある少し古く、大きな建物に到着する。



その建物は木造で出来ており、決して高級感のある建物ではないが、周りの庭は綺麗に整えられているし、孤児院の壁に出来ている穴を修復したような箇所があるが、あまり目立たないように綺麗に補修されていて、大切に住まれているんだとわかる様子であった。




「ただいまー!先生いる?」



「あら、今日は早かったのねリグ……そちらの方は?」




そんな孤児院の中に駆け出していくリグについて建物に入ると、恐らく先生と思わしき女性が顔を出す。




「この人がこの間話した助けてくれたウィスンだよ先生」



「あらホント!?……初めましてウィスンさん、その件では本当に助かりました。子供たちが怪我をしないで帰って来れたのは貴方のおかげと聞いています」




「いえそんな、俺は当たり前のことをしただけですし、気にしないでください」




先生と呼ばれた女性はリグにウィスンの事を聞いていたらしく、先日の件の事でお礼を伝えて来る。



「私はこの孤児院に務めているベルと言う者です」



「ベルさんですね?俺はどうやら知られてるみたいですが、ウィスンと言います」



リグ達に慕われている女性はベルという名前らしく、金色の長い髪を一まとめにした綺麗なお姉さんと言った姿なのだがリグの言っていたと通り、肌は荒れて、目には隈が出来てとても疲れた表情が隠れていない様子であった。




「それで、ウィスンさんを連れてきたのはこの間のお礼かしら?」



ベルは少し見当違いな理由でリグに質問するが、ここはウィスン本人が伝えた方が良いだろうとウィスンから話しかける。



「すいません、ここに来たのは俺の勝手というかお節介というか……実は図書館でリグと会ってこの孤児院がどんな状態か聞いたんです」



「……それは…」



ベルは少しだけ驚いた表情を浮かべながら、ウィスンの話に耳を傾ける。




「この孤児院が借金の形になっているのは聞いています。その件で力になれる事があれば手伝いますし、リグが心配してるベルさんの体調を考えて、孤児院の仕事も手伝いに来たんです」




「リグが…?」



ウィスンのリグが心配しているという発言を聞いて、ベルがリグに目線を向ける。




「……先生には沢山よくしてもらってるし、これからもいっぱい一緒にいたいから…先生が大変そうなのを見たくなかったんだ…」




「リグ……リグーー!!」





リグの言葉にベルは目元から涙を溢すと同時にリグに力いっぱいにハグをするという感動的な風景がそこにあった。



ハグとともに「ぐえぇぇぇ……せん…せ」と断末魔のような声が聞こえたが、この2人の間を邪魔するのもあれだったので、聞こえなかった振りをするライアだった。














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