少年リーダー再び











アンファング王国…建国1500年にも及ぶほど昔から存在する国であり、この大陸で最大の巨大国家でもある。



そして歴史書に載っているここ500年の間に、アンファング王国で起きた大きな事件や変革はすべてで4つ。



1つは先ほども上げたクーデター事件。


昔の独裁政治をよく思わなかったアンファング国王の先祖がクーデターを起こし、国王に即位した事件である。




2つ目が300年と少し前に起きた大陸における領土の奪い合いによる戦争の多発。


この時代は他国間で領土の奪い合いなどが多発しており、このアンファング王国も隣国であるヴァハーリヒ帝国に100年もの間、戦争を仕掛けられており、戦乱の時代だったのだという。




そして3つ目が、今から200年と少し前に起きたのが、スキルを使用しての文明技術レベルの向上と発展。


実はこの時代まで≪錬金術≫や≪鍛冶≫などの複雑なスキルの存在がよくわかってはいない時代だったのだが、1人の男性が5歳の時にもらうスキルで≪錬金術≫を授かり、その使い方も不思議と理解していたらしく、そこから技術スキルの活用が進んでいったらしい。(ちなみにこの数十年後にステータスカードが発明されることになる)




(なるほどね……で、4つ目が100年前の奴隷解放運動って感じか……。というか、この国以外に国ってあったんだ…生まれてから何も聞いたこと無かったからそういう物かと思ってたけど)



分厚い歴史書を読み終え、意外にも興味深い内容もあったりして、楽しく読めた。



「さてと…次はスキルの……あれ?あの子は確か……リグだったっけ?」



ライアは開いていた歴史書を閉じて元の場所に本を戻しに行くと、見覚えのある一昨日話した少年リーダーリグの姿を見つける。




リグは難しい顔をしながら本とにらめっこをしており、とても集中している様子だった。



(読んでるの本は…【商人に必要な言葉使いと計算力】?商人志望なのかな?……ま、邪魔しないでおこう)



ライアは読書の邪魔をするものでもないと考えて、そのまま先ほどの読書スペースに戻ることにする。



「……ん?ウィスン?」



そう気を使ったのだが、視線を感じたのかリグはウィスンが居る事に気付き、声をかけて来る。



ちなみにリグと出会った時の姿は、リールトンの街を出た時に変えたウィスンの姿のままであったので、普通にウィスンだとわかってしまう。



「…やぁリグ、読書中に悪いね、気を散らせちゃったかな?」



「大丈夫、ウィスンも勉強か?」



「そうだね…色々と知りたいことがあったからね」



リグと会う事はまず無いだろうと思っていたのだが、まさかこんなに早く会う事になるとは思わなかった。



実は今回、図書館に来ていたウィスンは偶々フードも取っていたし、姿もリグと出会った時と同じだったので気付かれはしたが、他のウィスン達は別の姿に変えて行動させている。



理由は同じ顔のフードで顔を隠した人間が3人も居たとなれば噂になるだろうと考え、全員の姿を変えて、変な噂が立たないようにと気を付けた結果だ。(それプラス≪変装≫と≪変声≫の経験値上げもかねてるが)



金色亭に宿泊する際には地味顔姿〈リグと出会った時の姿〉で利用したため、金色亭に入る際には地味顔姿に戻すが、それ以外は別の姿になってることが殆どである。



今回は地味顔姿でここにいた理由は何回も利用するつもりの図書館だったので、そういう繰り返し利用する施設の時は一番使うであろう地味顔姿にしようと決めた結果だった。







「…リグはその商人の本を読んでたみたいだけど、将来は商人を目指してるのか?」



ライアは声をかけられたのなら、しょうがないと気になっていたリグの手元の本を見ながらそう尋ねる。



「あ、これはそう言うのじゃないんだ……お金の稼ぎ方を勉強したくて、それが一番わかるのは商人の本かなって」




「お金の稼ぎ方か……何かやりたい事とかじゃなくていいのかい?」




「……俺は俺の育った孤児院を無くしたくない…そのためには金が要るんだ」




「無くすって……」



ライアはリグの現実的な考えを聞いて少し踏み込み過ぎと言われるかも知れなかったが、そう尋ねると何とも深刻そうな表情をしながらリグがそう言う。




「えと…俺の居る孤児院って借金があるんだ。その借金を返せないと土地を奪われるって話が合って、どれをどうにかしたいんだ」



「孤児院って国が経営してるんじゃないのか?」



リグは少し辛そうな顔をしながら事情を話してくれ、なぜお金が必要なのかは理解した。



「国が経営してるのかとか俺にはわかんないけど、多分違うと思う……国の人がウチの孤児院に来たこと無いし」



「そうか……」



国が経営している孤児院であれば借金を負うなどという話は無いはずだし、一度も役人が来ないので

あれば、国営ではないのであろう。



「……ごめんなウィスン…こんな話しても面白くないだろ?」



「ん?面白いと思って聞いていたわけじゃないし、その話を聞いて「あ、そう」で終わらすほど冷たい人間のつもりもないぞ?」



リグは会って間もない間柄の他人に重い話を愚痴ってしまったと申し訳なく思ったのかそう伝えて来るが、ライアにとってリグは孤児院の為に図書館で勉強をして、現状を打破しようと努力しているのだ。愚痴であれば聞いてあげたいし、何か手伝えるなら手伝ってあげたい。




「……ウィスンはどうしてそんなに優しいんだ?この間の事も俺達が孤児って見捨てても良かったのに助けてくれたし……今だってそんな親身に話を聞いてくれるのはなんでだ?」




ライアのそんな感情をリグに伝えると、人の善意に慣れていないのか、ウィスンにそう疑問を投げかけて来る。





「…俺はあの商店街で人だかりが出来ていた時、小さい子を背に守りながら酒屋のおじさんに無実を叫んでたリグをすごいと思ったんだ。

……それと同時に周りのやじ馬をしてる大人達は何をしてるんだろうともね…」




「………」



リグはウィスンの言葉を聞いて「それは俺達が孤児だから」とでも言いたげな表情をする。




「孤児とかどうとか関係ないんだよ!何も悪い事をしていない子供達が嫌な目に合ってる事が間違ってる。……だから俺が優しいんじゃなくてこれは当たり前の事なんだよ」



ウィスンはそう言い切った後にきょとんとした表情になっていたリグに「悪い事してたりしないでしょ?」と茶化しながら聞くと「したこと無いよ!」と笑顔を浮かべながらそう返事を返してくれた。











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