アンファング王国








「ライア殿のおかげで、大変有意義な一日になった」



「……お役に立てて良かったです…」



朝の謁見からすぐにアーノルドとともにお茶会兼、ライアの女装講座会を行っていたのだが、気づけば7時間以上もお話や化粧の仕方などを教えていたらしく、辺りはすでに暗くなってきていた。



さすがにこれだけの長時間話し込んでしまって、ライアは疲労困憊の様子なのだが、アーノルドの表情は晴れやかで、まだまだ体力がある様子であった。




「今度は数日後にでもライア殿をお招きして、またお話をする機会を設けたかったのだが…」



「申し訳ありません…私は数日でリールトンの街に出立する予定でして」



さすがにアイゼル達と決めていた予定を覆して、アーノルドに女装を教えるなどは出来ないので、女装講座の途中の雑談中にライア達がリールトンの街に帰ることは伝えていた。



アーノルドもさすがに無理は言わずに、「ではしょうがないか……また王都に来られた時は必ず招待させてもらうよ」と言って諦めてくれた。



(……王都へ次に来るのがいつになるかわからないけど、その時までに心の準備をしておこう…)




アーノルドの様子を見て、必ずまたこの王城に来ることになるのだろうと予想できるので、覚悟を決めておこうと考えるライアだった。




「……それではアーノルド様、私はこれにて失礼させてもらいますね」



「うむ!次会える時までには≪変装≫のスキルを取得しておくのでな!」



アーノルドとそう別れの言葉を交わして部屋を退出し、王城の方で用意されている馬車まで使用人に案内をしてもらうライア。



「……すいません、こんな遅くに」



「構いませんよ、これも仕事ですし、遅くと言ってもまだ夕方ですからね…リールトン伯爵様の屋敷まででよろしいですか?」



「はい、お願いします」



辺りが暗くなっている中、馬車の御者が外で待機していてくれたので、そう声をかけてから馬車に乗り、屋敷に送ってもらう。









――――ガタガタ……



「ふぅ……」




馬車に揺られながら窓から見える夜の王都は、魔道具らしき街灯が設置されており、暗い夜道を安全に馬車を進めることが出来るほどに明るく照らされていた。



(……今日は色々とあって疲れたけど、まだまだ今日は終わりそうにないなぁ…)



外を眺めるライアの顔には若干の疲れもありながら、何かライアにとって楽しみな事でもあったのか、笑みを浮かべている。



「ふふふ、ウィスン達を街に行かせてて正解だったね……まだ、どうなるかわからないけど、アインス達を送らなくても、3人で大丈夫そうかな?」



実はこの時ライアがのはウィスン達の視界であり、今現在、ウィスン達はある問題に遭遇していて、それを解決するために動いていた。



「…まぁ俺は疲れたから、このまま帰っておやすみするけどね……ふぁぁ……」



ライアはウィスン達の方は他の分割した思考に任せて、体が疲れた本体をなるべく休めようと決め、あくびを漏らすのであった。












※ステータスカード(追記)

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



登録者【▽全表記】


シュリア・アンデルセン

セルス

ミリー

カズオ

ネリヤ

ゼル

ミリアナ

タリス

リネット・リールトン

アイリス・リールトン

アーノルド・ホア・アンファング〈new〉



^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^












―――――――3時間前 ウィスンSide





現在ライア本体は王城にて、アーノルドに女装講座を行っている中、ウィスンの一人は情報などを集めようと一昨日見つけていた図書館に来ていた。



ちなみに他のウィスン達は街の探索や聞き込みなどをさせていて、役割分担をしていた。



昨日までは王都の街がどのように広がっているのか確認の為に3人で散策していたが、ある程度目途が立ったのでこのような形をとっている。




「本の持ち出しは原則禁止なので読書スペースで読むのと、ここでの飲食はご遠慮くださいね」



「わかりました」



図書館に入ると目の前に受付があり、初めての利用者であるウィスンに対して、この図書館での禁止行為などを伝えてくれる。



「……ちなみに、探している本の場所とかって聞いてもいいんですかね?」



「大丈夫ですよ、何の本をお探しですか?」



受付の女性にスキル関連の本やこの国の歴史などが記された書物の場所を教えてもらい、受付の女性にお礼を伝えてから、そこに置かれていた本を数冊持って読書スペースに持って行く。




「……先に歴史書からかな?…面倒なのは先にやっちゃうのが吉だよ」



この国の歴史書に対して、面倒と言ってしまうのはあれだが、貴族との交流も増えてしまったライアには一応実に付けた方が良い知識だと判断して、分厚い本を開いて読んでいく。




「……ふむ……建国は結構古いっぽいけど…特に詳細な事は書いては無いね……その代わり、500年以内に起きた事が多すぎて、めちゃくちゃ情報が多くてこの歴史書の殆どがここ500年の歴史って感じだな……」




ライアが≪速読≫を使用しながら、この国の歴史書を読みとった情報を整理する。



この国の名前は王都の街と同じくアンファング王国という名前で、約1500年前に建国されたと書かれている。



建国してから1000年間の記録は長い時の間に少しずつ失われていき、殆ど詳細はわからないみたいだ。



そして、比較的近年と言える現在から500年前から様々な事件などが起きているらしい。



ちなみにその500年前に起きた事件というのが実はクーデターが起きていたらしく、その時に今の王族の祖先がクーデターを成功させ、国王に即位したのだという。



「マジか…もしかして、クーデターを起こしたから昔の記録が殆ど無くなったとかじゃ?……正解は今となってはわかるもんでもないか…」



ライアは500年前以上のクーデター以前の記録などが無い事に、昔の王族たちが色々と情報を隠したり処分したのではと邪推するが、それを今自分が考えてもあまり意味は無いかと考え直して、本の続きを読み続けるのだった。










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