褒美









「私に……貴方の女装の技を教えてくれまいか!!!師匠!!!」




(師匠………師匠………)




謁見の間に響き渡る師匠と呼ぶアーノルドの叫びを、ライアはすぐに理解できず思考が追い付けないでいた。



「えっと……どういう事でしょうか?」



「ライア殿のその素晴らしい姿を見て、私は感激したのだ……。実は私も女性の儚さや美しさを自分の体で表現したいと常々思っていたのだ!」



アーノルドは困惑しているライアに自分の思いを熱く説明してくる。



「……その表現をする為に、女装をしようと??」



「うむ」



アーノルドは自信満々のドヤ顔をしながら肯定してくるので、ライアはアーノルドがどんな人物か少しだけ分かった気がした。



(……なんか…変な人だな…)



ライア自身女装をしているのであまりアーノルドを言える立場ではないが、そう思ってしまう。




「はぁぁ……アーノルドよ、そなたは我の息子…つまりはこの国の第一王子なのだぞ?あまりみっともない真似をするでないわ」



「はっ……!!申し訳ありませぬ父上…。あまりの興奮に謁見の場だという事を忘れておりました」



さすがに国王はこの国の王子に女装趣味にさせるわけにはいかないと考えたのか、アーノルドに王子として自覚を持つように注意する。



その国王の注意をアーノルドが聞くと、微妙にライアの思っている物とは違う返事を返して、元の場所である国王の隣に戻って行く。




「…ライア殿に師事するにしても、この謁見が終わってから再度お願いしに行こうと思います父上」



「うむ」




(いや、女装趣味はいいのかい!…さっきの注意も謁見の場だから自由に動くなって事!?それより王子が女装するのはいいの!?)




国王とアーノルド王子の会話に心の中でツッコミを入れまくってしまうライアであったが、周りは今の一連の流れを無かったかのように、謁見の続きを再開するのであった。






「ごほん……まずはライアよ、火竜討伐の件は大変大義であった。そなたにはその大義に見合った褒美を渡す為にこの王都 アンファングまで呼んだのだ」



「……はッ!ありがたき幸せにございます」



いきなり真面目な雰囲気になって、少し惚けてしまっていたが、すぐに気を取り直し国王に返事を返す。



「よってそなたにはこの国の国王である我…“アズベルト・フォン・アンファング”から【竜騎士】の称号と“ライア・インクリース”と家名を与えよう」




「家名……あ、ありがたき幸せに、ございます」



国王は仰々しくそう発言し、ライアに称号と貴族にしかない家名をライアに与得られ、動揺のあまり、少しだけ口調が崩れてしまう。



(え…?インクリースってなに?家名??家名って貴族だけじゃないのか??)



称号よりも貴族しか持たない家名を与えられて、混乱しているライアを見た国王は続きを話しだす。



「普通であれば家名持ちは貴族と一般的に思われているが、多大な功績等を残した者にも家名を与える場合があるのだ……まぁそう言った者達は爵位がある訳では無いのだが、そこらの男爵位の貴族よりは発言権がある一代限りの貴族になった物と考えよ」



「一代限りの貴族…でございますか…」



(え、男爵位の貴族より上ってなに?貴族じゃないなら貴族じゃないって言い切って欲しいんだけど…)



ライアは国王の説明を聞いてわかったのは、ライアにほんの少しばかり権力のある地位を手に入れたという事だった。



しかし余計な権力など持ってしまって、他の貴族との面倒ごとなどが出来るくらいであれば、権力など欲しくないな。とライアは思ってしまう。




「そなたに貴族としての細かな義務などは求めぬ、だが国の危機や問題が発生した時は応援を呼ぶであろう」



「はッ!かしこまりました」



「うむ……では、火竜討伐の大義に褒美は与えた。これにて、ライア・インクリースの謁見を終わりとする」




国王がそう締めくくられ、ライアとモーゼスは謁見の間を退出するのであった。








――――――――――――

――――――――――

――――――――






「……はぁぁ…疲れました…」




「あはは!お疲れライア君。この後にもステータスカードの称号と家名の変更をして行かないといけないからもう少し頑張りなさい」



謁見の間の外には先ほどの使用人が待機しており、その人がまたどこかに案内してくれるみたいだったので付いて行きながら、モーゼスと会話をする。




「あ、そうですよね…ステータスカードの変更もここでやるんですか」



「そう言うのを冒険者ギルドなんかで変えると、面倒になる可能性もあるのでね」




冒険者ギルドにもステータスカードの【称号】などを変更する魔道具は置いてあるが、国王が与えた称号などを一冒険者ギルドで与えるのも変だし、もし手違いで別の人に称号を付けてしまえば責任問題になってしまうので、称号を貰ったその日に王城で書き換えるのが決まりらしい。




しばらく歩いて行くとどこかの執務室みたいな部屋に着くと、冒険者ギルドでいつも見ていた魔道具が置かれていて、それでステータスカードを書き換える。





「……はい、これで書き換えは完了になります。間違いがないかご確認ください」




「ありがとうございます」




ライアは受け取ったステータスカードを早速表示してみる。






^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


 名前:ライア・インクリース


 年齢:15

レベル:50

 種族:人間

クラス:錬金術師


 体力:16000/16000

 魔力:35000/35000


攻撃力:87

防御力:57

素早さ:105

知識力:119

器用さ:291


スキル


≪分体≫25

≪経験回収≫25

≪格闘技≫25

【▽】



称号


【竜騎士】





討伐歴【▽月間】


ゴブリン    【195】

オーク     【48】

ツインハンドベア【15】 

オーガ     【41】

ワイバーン   【0】

モーム     【0】

ビックバット  【0】

バイパー    【0】

ゴーレム    【0】

ブラックウルフ 【0】

レッドドラゴン 【1】



登録者【▽】





^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^




「インクリース……はい、ちゃんと書き換えられていますね…ありがとうございます」



ライアは自身のステータスを確認して、名前と称号の部分だけ変わっているのを確認し、書き換えを行ってくれた職員にお礼を言う。




(さっきは貴族とか権力とかであんまり考えてなかったけど、【竜騎士】か……中二っぽいけど、ちょっとかっこいいね)



ライアは部屋を退室しながら、自身の称号の欄に書かれた【竜騎士】文字に、少なからずの興奮を覚え、気分が良くなっていた。




「それじゃぁ皆の所へ戻ろうか」




「はい!」




モーゼスとライアはパテル達がいるであろう先ほどの応接室に向かって歩き出すのであった。










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