国王陛下と謁見の間











そこは様々な芸術的価値がありそうな物や煌びやかな装飾が施された広く、壮観な大広間。



その部屋の奥に玉座が置かれていて、そこに座っている初老の男性が、こちらを呆れた目で見下ろしている。




「……ぜひとも、ライア殿にお願いしたいのだ!!」




そして、見下ろされている場所にはライアとモーゼス…それから、異様に綺麗な顔立ちをしたイケメンの男性がそこにいて、何故かそのイケメンがライアに対してそう発言しているという状態になっていた。




(……もう、どうすればいいの…?この状況……)






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――――――





10分前…



ライア達は控え室に迎えに来た使用人に案内をしてもらい、とても豪華で如何にも普通の部屋ではない扉の前に来ていた。




「こちらが謁見の間になります……モーゼス・リールトン様、ライア様をお連れいたしました」




「案内ご苦労……では」




使用人は扉の前に待ち構えていた護衛か何かの騎士達にそう伝え、何処かに行ってしまい、扉の前にいた騎士の一人が大声をあげる。




「本日謁見予定のモーゼス・リールトン様!!並びにライア様がご到着いたしました!!入室のご許可を!!」



『よい』



騎士は大きな声を謁見の間にいるであろう国王に許可を取ると、中から渋い男性の声で許可が出て、騎士達は扉を静かに開ける。




――――ガチャン………




「さぁ、中にお進みください」



騎士がそう言うと、モーゼスは何度も経験があるのか緊張などしないで歩き出したので、ライアも慌てないように後ろを付いて行く。



謁見の間はとても広く、至る所に高価そうな絵画や芸術品があり、とても豪華な部屋だった。



その芸術品などを横目に真ん中に敷かれた絨毯をまっすぐ歩いて行く先には、煌びやかに装飾された玉座とそこに座る初老の男性がいて、その横に二十歳くらいの金髪で整った顔の男性が待ち構えていた。



(あの玉座に座っているのが国王様…だよね…?

なら、隣にいる人は王子様…とかかな?)



玉座がある場所は少しだけ高い位置にあり、目の前に階段がある。



その階段下にはアイゼルや数人の貴族らしき姿が見えたので、同じ高さにいるあのイケメンは国王の身内。つまり王子なのだろうと予想した。



そんな風に周りを観察しながら、国王達の前の階段下まで行き、モーゼスとライアは≪礼儀作法≫を使用しながら、頭を垂れる。




「よくぞ参られた…頭をあげたまえ」



「「はい」」



国王の合図とともに頭をあげると、国王達は「うむ」と頷いてから話をし始める。




「そこの赤い髪の女人がライアと言う者か?」




(あぁぁぁぁぁ…やっぱり、勘違いされてるんじゃないか…!!!)



国王の発言でライアの事が女性だと勘違いされている事が判明し、ライアは内心の動揺を表に出さないように気を引き締める。




「…私が、ライアと言う者でございます…」




「…なるほどな…そなたがあの火竜を討伐せしめた強者つわものか…見た目は麗しい女性にしか見えんのだが、人は見た目だけで判断は出来ぬな」




ライアはどうにか自分が女性と偽った発言の言質を取られないように、あえて国王の言葉を肯定するのではなく、自分がライアと言う人物だ。とあまり意味のない抵抗を見せるが、国王はそんなライアの葛藤を知る訳もなく、女性だと認識して発言してくる。




(…くっ…これで後でバレて罪に問われたらモーゼス様に責任を押し付けてやる……)



ライアは横で特に慌ててもいないモーゼスを横目に見ながら、自身の保険としてモーゼスを売る計画を立てていた。




「…陛下、お戯れはお辞めください……前に申したと通り、ここにいるライアは男児にございます」




そんな思考を巡らせていたら、周りにいた貴族達の中からアイゼルが国王にそう発言し、ライアは「はっ!」とする。



(そうか!これは国王がふざけて、俺をからかっていたのか!!

…そうだよね、さすがのアイゼル様だったら、きちんとそういった情報は話してるはずだし…怖かったぁぁぁ)



ライアがアイゼルの発言を聞き、どうやら少しからかわれたのだと知って、これなら不敬とかにはならないかと安心して、息を「ふぅ」と静かに漏らす。




「……そうだったのか…?どう見ても女人にしか見えなかったので、アイゼルの冗談かと思っていたのだが…」




「火竜の討伐者の情報で嘘を吐く訳ないではないですか…」




(えぇ…男って情報を聞いてたのに、女性だと思われてたんかい……まぁ情報を聞いていたなら俺を不敬罪とかに扱わないでくださいね!)




どうやら国王はライアの見た目を見て、アイゼルが冗談を付いていたのだと判断していたようで、国王は普通に驚いていた。






―――――スタスタスタ…



ライアは怒られないのならいいやと思考がどんどん適当になって来た気がしていると、国王の傍にいた王子(推定の)がライアの元に近づいて来た。




「む…?アーノルド?」



国王がライアに近づいて行くイケメンを“アーノルド”と声をかけるがイケメンは止まらずにそのまま歩いてくる。



「……男…?」



「…え?…はい…そうですが…」



ライアはつい、アーノルドのつぶやきに対して、普通に返事を返してしまう。



(あれ!?もしかしてやっぱり謁見の間で女装はダメだった!?俺怒られる!?違うんです!!この格好はモーゼス様の所為なんです!!!)



ライアが内心ビビり散らかして、モーゼスに罪を擦り付けようと心で叫んでいると、アーノルドはもう目の前に来てしまって、恐怖で涙を目に貯めてしまう。




「あ、あのぉ……やっぱり、この格好は…ダメですよねぇ……」



ライアは涙を浮かべた表情で、アーノルドにそう発言をする。







「素晴らしい!!!!!」




「ふえ……?」



アーノルドはいきなりライアの肩に手を伸ばしてきて、「もう駄目か…」と思って目をつむった瞬間、いきなり大声でそう叫ばれる。




「これが男の顔だと!?どこからどう見ても麗しい女性の表情にしか見えん!!」



「え、あ、あの?」



アーノルドはライアの肩を掴みながら顔や服装、髪の毛などを隈なく観察してきて、ライアは何がどうなっているのか分からず狼狽えてしまう。



「…ライア殿…」



「あ、はい!」



ライアを観察していたアーノルドがいきなり真剣な表情でライアを呼ぶので反射的に返事をしてしまう。






「私に……貴方の女装の技を教えてくれまいか!!!師匠!!!」











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