王城
「そういえば、領シュ……アイゼル様は居ないんですか?」
モーゼス達と衣装を褒められていると食堂にアイゼルが居ない事に気が付き、領主と言いかけるが、ここにいる人たちには名前を言った方が良いだろうと呼び直してそう尋ねるとモーゼスが答えてくれる。
「父上は今日の謁見の件で、先に王城に向かわれたよ。父上にはライア君を頼むと言われているから、安心してくれ」
「そうなんですね…よろしくお願いします」
「あぁ…さ、こちらもそれほど時間があるわけではないんだ、早速朝食を食べようか」
モーゼスの言葉を聞いて、皆が朝食を取ろうと席に着くとすぐにメイド達が料理を運んでくる。
(…こんな忙しい日の朝でも、手の込んだ料理なんだ……料理人達は可哀想だな……)
ライアは運ばれてきた手の込んだ料理を見て、ライアは調理をしている人達の苦労を思いながら、美味しい料理を堪能する。
なぜ料理人を憐れむかというと、実はライアがこの屋敷に来てから出された食事はすべてが手の込んだとてもおいしい物ばかりで、その料理を食べたライアは最初に「これが貴族の料理なのか」と感心していたのだが、アイゼルやアイリス達の「やはりモーゼスの所の料理人はすごいな…こんなおいしい料理を作らせるモーゼスに付いて行けるのだからな」と言った会話をしていたのだ。
その話を聞いていたライアは、昨日のファッションショーの合間にアイリスにあの会話はどう言う事か確認してみたのだが、実はモーゼス自身が異常なほどの美食好きで、手の込んだ美味しい料理を研究させたり、自身でも料理をしたりと色々やっているらしい。
なので、今日みたいな忙しい朝であっても手抜きの料理は出せないらしく、料理人たちが朝から頑張っているのだろうと思ったのだ。
(リネットさんが錬金術、アイリス様が可愛い物、モーゼス様が料理……他の兄弟達はどんな人なんだろ…あとは次男と長女と次女の3人か?)
ライアはまだ見ぬリールトン家の兄弟達を考えながら、朝食を食べていく。
――――――――――――
――――――――――
――――――――
―――ガチャ
「…よっと…」
朝食を食べ終わり、王城に向かう為、屋敷の外の馬車へと乗り込むライア達。
「ライア様!わたくしもこっちに乗らせていただきますわね!」
「失礼します」
ライアの乗る馬車にアイリスがいきなり乗って来て、その後ろからメイドのルルも一緒に乗り込んで来る。
「アイリス様方の馬車は別にあるのでは?」
「ありますが、今の凛々しいライア様のお姿をもっと見ていたかったのでしょうがありませんわ!!…御髪を触ってもよろしくて?」
アイリスはいつも通り、話が微妙に通じていないままライアの横を陣取って来るので、ライアは諦めてアイリスの相手をすることに決めた。
「……モーゼス様方に戻るように言われたらちゃんと戻るのですよ?
……あと、髪は崩れてしまうかもなので今はダメです」
そのままアイリス達と戯れていると、準備が出来たのか馬車は動き出して、王城に向かって出発する。
ちなみに、火竜の素材などを積んでいた馬車などはすでに王城に運ばれていたらしく、今王城に向かっている馬車はライア達の乗る馬車とモーゼス達の乗る馬車、それとアイリス達が乗る予定だったものと荷物などを運ぶ4台の馬車しかない状態である。
屋敷から王城まではそれほど離れていないらしく、5分程馬車に揺られていると、大通りから見えていた巨大な白亜のお城が近くに見えて来る。
「……近くで見ると、ホントに大きいですね…」
「一応この国を作り上げた国王陛下が住まう王城ですからね、立派でない方が問題ですわ」
アイリスの言う事に「確かに」と納得していると王城に着いたのか、馬車が止まるのを感じる。
「さぁライア様!王城に着きましたわよ!」
ライアはアイリスに手を引かれながら馬車を降りると、目の前には広い広場と噴水があり、その先に先ほど見えていた大きな王城が佇んでいて、王城の周りには花が咲き誇る庭園が広がり、大きな白いお城と合わさった絶景が広がっていた。
「…すごいですね…」
「花の庭園は王妃様のご趣味らしいですけれど、わたくしはこの庭園などはとても素晴らしいと思いますし、ずっと見ていたいですわね」
ライア達が目の前の風景に目を奪われていると、前の馬車に乗っていたらしいモーゼスが2人を呼びに来る。
「2人とも、風景を楽しむのは結構だが、それは今度にしなさい?」
「あ、すいません…今行きます」
「わかりましたわ、モーゼスお兄様」
モーゼスに注意され、何をしに来たのかを思い出し、モーゼス達と一緒に王城に向かい始めるライア達。
(……庭園はまた見たい気持ちはあるけど……そう何度も王城には来たくは無いな…)
王城の大きさと謁見の重圧を思い出し、これからの本番を思って緊張し始めながら、そう思ってしまうライアだった。
そんな思いを抱えながらモーゼス達と王城に歩いて行くと、王城の前には使用人たちが待ち構えていて、ライア達を王城の中まで案内してくれる。
「国王陛下の準備が出来るまで、こちらのお部屋で少々お待ちくださいませ」
「あぁ」
ここまで案内してくれた使用人は、まだ国王の準備が出来ていないと言って、この応接室のような部屋に案内された。
使用人の言葉にモーゼスは「わかっている」と言った表情で了承すると、部屋のソファに座る。
「さぁ、ライア君たちもいつまでも立ってないで、座りなさい」
「あ、はい…国王陛下がまだなのはわかっていたんですか?」
ライアは先ほどのモーゼスの表情からまだ時間が早いのが分かっていた雰囲気を感じたので質問をしてみる。
「ん?…あぁ先ほどの会話かい?…あれはちょっとした風習みたいなものだよ」
「風習?」
モーゼスに聞いてみると、あれは国王が下の者達に合わせて動いていると示しがつかない!と話が出て、国王に謁見する際には必ず少し時間を取らせてから謁見する決まりにしたのだという。
(…つまり、今国王様は謁見の準備も出来て、すぐに始めれる状態だけど、舐められないように俺達を待たせている…って事?……めんどくさ…)
「あははは…色々とあれだが、待つ時間もそれほど多くは無いよ…ほんの少し休憩するような物さ……ほら、もう来たようだ」
ライアの色々と言いにくい感情が表情に出てしまっていたのか、モーゼスはそう笑いながら言ってくると、部屋の扉がノックされ、先ほどの使用人が部屋に入って来る。
「お待たせいたしました…国王陛下の準備が整いましたので、国王陛下に謁見されるモーゼス・リールトン様、ライア様はこちらに」
どうやらモーゼスの言う通りだったらしく、国王の準備とやらが10分で終わったらしい。
案内係の使用人は国王と謁見するモーゼスとライアだけ呼び出し、部屋の外に出る。
(パテル達はここまでか……緊張がぁぁ…)
ついに国王と謁見するのだなと認識すると緊張が高まって行くが、深呼吸をして心を落ち着かせる。
「さぁ行こうか、ライア君」
「……はい!」
そんなライアを見て優しく声をかけてくれたモーゼスに気合を入れて返事をし、国王が待つ謁見の間に向かうライアなのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます