王都の冒険者ギルド
「……ではシシリーさん、私達は少し出掛けさせてもらいますね?夕方には戻ります」
「はい、行ってらっしゃいませ」
アイゼルとの話し合いが終わり自分達に用意された部屋に戻ってから、すぐに外に行こうと決めたライアはその事を案内で着いてきていたシシリーに伝え、王都の街に出掛ける。
「……それで、俺達はどこに行くんだ?」
「俺達はひとまず王都の冒険者ギルドに行ってみようと考えてるよ?」
ライア達は屋敷を出て、先ほど馬車で通った時に見えていた大通りに向かって歩きながら話をする。
「…でもその前にウィスン達を先にばらけさせようか」
「「「……行ってくる」」」
ライアは後ろに付いてこさせているウィスン達を先行させ、それぞれ別方面に歩かせていく。
「……あの分身体達には何をさせるんだ?…」
「あれ??言ってなかったっけ…?
あの子達は情報採取ともしもの時の保険かな?」
パテルにウィスン達の利用方法を1か月前に伝えていたと勘違いしていたライアだったが、言ってないならすぐに教えようと説明をする。
「……保険?」
「そ!基本は王都の色々な情報を集めさせていくけど、もしもその中の情報で俺にとって不利益な事があればすぐに対処が出来るし、ウィスン達を囮にして逃げる事も出来るし、もし敵と戦闘になった場合でも、目の前で分身体を出したわけじゃなから不意打ちは簡単に出来るからね。
そういった意味で保険かな?」
ライアにとっての不利益な事や敵対勢力の情報は無いにこしたことは無いが、それでも一応の準備はしておくべきと考え、このような手段を取った。
リールトンの街ではそういった事を考えれておらず、調べようとすればライアの分身体が10人いることがバレてしまう状態であるので、そちらは放っておく。
(さすがにアハト達を消して、違う姿の受付嬢を用意してもバレバレだしね…)
そんなリールトンの街での失敗?を考慮して、ウィスン達には全員別々に動いてもらい、ライアとの接点が無いようにしておきたかった。
(…まぁ、こんだけやってもバレる時はバレるものだけど……それに、こんだけ警戒しても何もなかったら意味のない行動で、無駄な労力になっちゃうけど…)
そんな考えをしながらウィスン達を見送り、パテルの疑問に答えていると、大通りが近くなって来たのか人の往来が多くなってくる。
「さ、まだ時間はあるけど、俺達も早めに冒険者ギルドに急ごう」
「……あぁ…」
―――――――――
――――――――
―――――――
「デカ…」
「……この街はすべてがデカいな…」
ライア達が大通りの屋台などで冒険者ギルドの場所を聞いて、その場所に向かうとリールトンの街よりもかなり大きい建物が建っており、その大きさに驚いてしまう。
「まぁ王都の冒険者ギルドだしね?人も多いんだろうし、建物も大きくないとダメなんでしょ。
…早速入ってみようか」
パテルの疑問にそう答えながらギルドの中へ入ろうと足を進める。
――――ガチャン……
「おぉぉ……大きさが違うだけで作りはそんなに変わらないな…」
ギルドの中は1階に酒場と解体所らしき場所があり、2階へと続く階段が見えるだけの構造だったので、リールトンの街の冒険者ギルドとそれほど変わらないように見える。
(これってあれか?冒険者ギルド全体で規格化してるみたいなものかな?)
ライアはあまりに似ている冒険者ギルドを見てそう感じてしまう。
「…よぉ嬢ちゃん…あんたみたいなかわいい子がこんな所に何しに来たんだ??」
「ん?」
そんな風に考え事をしていたライアの元に、酒場で酒を飲んでいたであろう冒険者らしき男がライアに声をかけて来る。
「ここは嬢ちゃんみたいなか弱い女の子が来ていい場所じゃねぇーぞ?」
「おぉぉ!!」
「っ!?なんだいきなり!?」
男の発言を聞き、興奮したように声をあげるライアに男は驚く。
(ファンタジー物での冒険者ギルドでのテンプレ……ホントにあるんだ!!)
ライアが声をあげたのは今起きている現象がライアの知るラノベでのテンプレである、冒険者に絡まれるというシチュエーションに興奮してしまったからであった。
そんなことは知らない男はそんなライアの様子に若干の疑問を感じながらも話しを続けて来る。
「ここには年中酔っぱらってるモテない冒険者達がたむろしてて、嬢ちゃんみたいな子が来たらあぶねぇーんだ…用事が無いなら帰った方が良いぞ?」
「…ん?心配されてる?」
ライアはどうもこの男の言葉が絡みに来ているチンピラ冒険者の様には感じず、普通に心配されているように聞こえてしまい、疑問が出る。
「……この人は普通の人間より全然強いぞ……」
「ん?この子の連れか?…って、は?嘘だろ?」
パテルが男の勘違いを正そうとしたのか、ライアの後ろから男にそう話しかける。
ちなみにパテルがエルフとバレると面倒なので、ヤヤ村でも使っていたフードで耳は隠しているので、ぱっと見でエルフだとバレる事は無い。
「えっと、もし私の事を心配して声をかけてくれていたなら……すいません、私は一応冒険者でもあるので、大丈夫ですよ?」
ライアはこの男のテンプレチンピラ説が消えたわけではないが、恐らく心配をして話しかけてきた人なのだろうと、ステータスカードを見せながらそう発言する。
「…マジで?」
「マジですね」
男はステータスカードとライアの顔を見て、自分の目が信じられないのか静かにそう確認してくるのだった。
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