~閑話、クストの感謝とリネットの汚部屋の小話~
――――――クストの思いとヤヤ村防衛戦
「ライアさん、大丈夫なの?」
「ん~?多分応援に向かわせた6人はステータスのごり押しで走らせてるけど…間に合えばいいなぁ?って感じかな?」
僕はライアさんがこの2日ほど、ずっと分身体を動かし続けているらしく、それでライアさんが疲れていないのかを聞いたつもりだったんだけど…ライアさんはのほほんと的外れな事を返してくる。
そうじゃないんだけど…顔色も悪くないし、大丈夫なのかな?
「ぬぬぬぅ…走れ走れ~…お?村の外に魔物が来たね」
「え?ほんと?」
ライアさんから魔物が村を襲いに来るかもって話は聞いてたけど、もう魔物たちが来たんだ…。
どうして魔物達の動きが先に分かったのかはわからないけど、多分分身体達を使って、情報を集めていたんだね…やっぱライアさんはすごいね!!
「僕も魔物を倒しに行くよ?」
「クストはここにいて、プエリちゃんとラスリの面倒見てて?…2人を守ってくれる方が俺は助かるよ?」
ライアさんはこう言ってくれるが、僕がまだ弱いから魔物と戦わせないように言ってくれてるのはわかってる…。
それがわかるからこそ、僕はよりいっそう“ライアさんの役に立てるよう”にならなきゃって思っちゃうんだ!
「ゴブリン、ゴブリン、オークにゴブリン…オーガも添えて~♪」
ライアさんは機嫌が良さそうに鼻歌を歌っている。
そんなライアさんを見ると、強いっていうより可愛い人だなって思うけど、これは伝えないでおく。
「……ライアさんって僕たちを助けてくれた時、どうしてあんなに一生懸命になってくれたの?」
「うん?」
今にして思えば、人間とは違うエルフだし、親切心で助けてくれたにしても、普通は傷薬をくれただけで、放置でもよかったと思う。
あの時、プエリに引き留められたって言っても、僕にあれだけ言われたらすぐにでも立ち去ってもおかしくなかったしね…
「えぇ~?…そりゃ…まぁ、子供を見捨てるなんて、俺には出来なかったからね!うん!」
「…そっか…やっぱりライアさんは優しいね!」
ライアさんはあれだけ警戒して、口が悪かった僕なのに、それも気にせず子供だからって助けてくれたんだ…それってすごい事だよね!
「僕、ライアさんに助けて貰えて本当に幸運だった!」
(うぅ~ん…ぶっちゃけ、エルフ族とお近づきになりたいって理由が大きかったけど、まぁ別に嘘でもないしね…うん!)
ちなみに、村を襲ってきた魔物達は殆どがライアの分身体達が片付けた。
―――――リネットの汚部屋
火竜討伐作戦が終わり、冒険者ギルドのお手伝いに向かった分身体達とは別に、リネットの工房に向かった分身体3人は工房の前にたどり着いていた。
「ただいま戻りましたー!……あれ…?」
工房の中は人気を感じず、リネットが工房にいる際は殆どいるはずのユイさんまで居なかった。
「…先生~?入ってもよろしいですか?」
―――シーン…
実験室の前に立ち、ドア越しに声をかけるが、返事はなく、留守の様だった。
「何か、用事かな?…失礼しマー……」
留守なのであれば、そのうち戻って来るかもと考えながら、実験室の部屋を開けると、5日前の整理整頓がされていた部屋は無く、実験器具などが溢れかえった汚部屋(誤字に在らず)がそこにあった。
「…えぇ…5日しか離れてないんだけど…」
「…む?誰かいる…ライアです~??」
そんな部屋を見て呆然としていると、工房の玄関からどこからか戻って来たリネットの声が響く。
「…あ、先生…先ほど戻ったんですけど…」
「おぉぉ!おかえりなのですよ!…で、どうでした?火竜は倒せたんです?」
リネットは実験室のドアを開けているライアを見つけると、ウキウキした声で話を振って来る。
「倒せはしたんですが、その前に……この部屋の惨状はどうしたんです?まだ5日ですよ?」
その質問を問いかけると、リネットの後ろにいたユイさんは悲しそうな顔をしながら目を背け、聞かれた本人であるリネットはどこか照れながら返事を返す。
「えへへ、実はですね…ライアが片付けてくれるようになってから、頼りきりだったせいですかね?自分で片付けれなくなってしまったのですよ…」
「えぇぇ…」
どうやらこの惨状は、今までリネットが片付けないと、他の誰も掃除をしないとわかっていたから、自主的に少しは片付けをしていたらしいが、ライアのおかげ(せい?)で自分がしなくてもやってくれると怠けてしまい、5日でこの惨状になったらしい。
「それよりも、火竜はどうでした?素材とか色々取れたのです?」
「…じです…」
「ん?なんです?」
リネットはこの部屋の状態をあまり不思議には思っていないらしく、火竜の話を聞こうと話しかけて来るが、先にしなければならない事があると、決意を決める。
「お話の前に掃除をします!!」
「ひゃ、はい!!」
リネットはここでライアが部屋の状態に怒っているのだと瞬時に理解し、返事を返す。
「リネットさん?私が分身体をおいて置くと言っておいて、領主様に貸したのは申し訳ないですが…さすがにこの散らかしは反省しましょうか?」
「えっと…その…………ハイです…」
リネットはライアのお母さんパワーを感じ、逆らわない方が良いと、素直に返事をして、掃除のお手伝いをしていく。
「ライア様…ありがとうございます…!」
扉の向こうで二人を見ていたユイさんは静かに涙を流しながら、ライアに感謝をしていた。
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