改革、新たな旅立ちの予感?
ライアは街についてから、色々と後片付けやパテルのスキル訓練などをして過ごしていくと、火竜討伐から1週間が経っており、各村の護衛に出ていた冒険者達は殆どが戻って来て、街はいつも通りになっていた。
もちろんいつも通りと言っても、エルフ達が居なくなったわけではないので、細かい所は変わっているが、誤差であろう。
そんな風に、平穏な日常に戻ろうとしているリールトンの街なのだが、少しだけ動きが見える。
―――――ギルマス付きライア(分身体)
「火竜の素材の輸送…ですか?」
「あぁ、火竜の素材なんて貴重過ぎて、値段がほぼ付けらんねぇのは言ったろ?
だから、王都の国王様に献上しようって話らしいんだが…
その輸送隊にライア本体も一緒に乗って、王都に向かってほしいんだとよ」
ギルドマスターが執務室にて、領主から送られてきた手紙を見ながら、ライアに手紙の内容に書いていたであろう依頼内容を伝えて来る。
「…別に護衛依頼であるなら構わないんですけど…。ん?私本体って何ですか?」
ライアに依頼を頼みたいのであれば“ライア本人に護衛依頼を頼みたい”と言った感じの文面になると思うのだが、何故か表記は“ライア本体も一緒に乗って”だ…どうにも嫌な予感がする。
「あぁ~と、いや、護衛依頼じゃないんだよ……つまり、ライア本体が輸送隊に付いて行って欲しいんだとよ?分身体じゃなく」
「なんで!?」
ライアに護衛依頼をするでもなく、ただ付いてきて欲しいと言われる意味が分からずギルドマスターに詰め寄る。
「説明が面倒だな…ほれ、この手紙に書いてる!お前宛てに書かれてる部分もあるから、読まれる事を予想してるだろうしな…ほら」
ギルドマスターの言葉を聞き、すぐさま手紙を渡してもらい、中身を読ませてもらう。
『今回討伐した火竜の素材に関しては、こちらから国王陛下に献上し、討伐作戦に参加してくれた騎士や冒険者、その他協力者には十分な報酬を我がリールトン家から出そう。』
(なるほど…確かに俺の所にもたんまりとお金が支払われたけど、あのお金は領主様が出していたのか…)
『火竜の素材を王都まで輸送するのだが、その輸送隊にライア殿本体も同乗して王都に向かってほしい。もちろん他にも騎士の護衛も付くので、王都までの旅の間はゆっくりと休んでくれて構わない』
(いや、なんで俺が行く必要があるの!?俺いらない子じゃん!!)
手紙の内容にどうしてそうなるのか理解できずに、手紙の最後の方に目を向ける。
『ライア殿に王都に向かってほしい訳なのだが、火竜討伐の件を騎士達にも確認し、ライア殿の貢献度を考えた結果、国王様に謁見してもらい、褒美をもらってもらうのが適切と考えての決定である』
「は?」
ライアは全く予想をしていない答えに目をやり、理解が追い付かないと素で声をあげてしまう。
(え?国王?なんで?俺そんなの頼んでないんだけど!?)
「あぁ…まぁそういう訳だな?火竜の討伐を殆ど一人でやっちまったんだ…そりゃこうなるさ」
ライアの様子を見て、ギルドマスターはほんの少し同情しながら話しかけて来る。
「だが、国王様に謁見できるなんて普通に考えたら、すげぇことだぞ?喜んどけって」
「…喜べる訳ないじゃないですかぁ……俺、平民ですよ?…どうします?不敬罪とかで処刑されたら?」
「アホか!別に国王様はそんなすぐに罪に問うような人じゃねーよ!?よっぽどの事をするとか、嘘、偽りなんかを言わなきゃ、お咎めなんてねぇよ」
ギルドマスターは国王と面識があるのか、あたかも会ったことがあるかように話している。
ライアはそんなギルドマスターの話を聞いて(ギルド長って、元は結構高い位の貴族だったのかな?)と考えつつ、このギルドマスターに限って、それはないかと思考を捨てる。
「…嘘偽り…俺って、初見で男に見えますか…?」
「………」
―――――スッ…
ギルドマスターはライアの一言を聞いて、楽観的に笑っていた顔が無表情になり、静かに目を背けた。
「…お前が不敬罪で捕まっても、オレはお前の事…忘れねぇからよ…」
「ダメじゃん!?やっぱこれダメなんじゃん!?!?」
執務室にはライアの悲痛な叫びがこだましていた。
―――――――
――――――
―――――
――――――ライアSide
「それじゃ急だったけど、行ってくるね?」
「気を付けてね?前も言ったけど、年に数回はきちんと帰ってくるのよ?」
「ライアねぇちゃん…はやくかえってきてね?ぜったいだよ?」
領主の手紙に絶望しながらも輸送隊に付いて行かなくてはいけない為、ヤヤ村に滞在していたライア本体は輸送隊の出発に間に合うように村を出発しようとしていた。
「ライアは皆に好かれているからな!俺達の為にも怪我なんかするんじゃないぞ?」
「…まだ、役に立てないかもだけど…すぐに役に立つようになって、ライアさんに付いて行けるようにするからね!」
見送りにはとぉさんかぁさんとプエリとクストも来ており、皆が悲しそうに別れを惜しむ中、ライアは村を出発した。
(いや、だから分身体は3人残ってるから、そんなに悲しそうにしないでよ…)
村を出発するライアの顔は、家族たちにちょっとだけ呆れながらも、温かい感情が感じられる笑顔で道を歩いていた。
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