改革、パテルのステータス







それからライアは、パテルにプエリを見せてあげようと外に連れ出す作戦を考えるが、パテルに「…今は、無理をしなくていい…クストの顔を見て、プエリも元気なんだとわかったしな…」と言われてしまった。



「本当にいいの?今回を逃したら、暫くヤヤ村には戻ってこないと思うよ?」



「…あぁ…俺は今、プエリの顔を見てしまったら、すぐさま飛び出して、謝り倒してしまいそうだ…」



クストの時でもあれだけ感極まっていたし、それはありえそうだとライアも納得する。



「そっか…なら、明日にでもリールトンの街に向かおうか」




パテルがこのヤヤ村に着いたのは、ほんの数時間前なので、食料や疲れの問題があったので、ヤヤ村を出発するのは明日にした。



パテルを家に連れて行くわけにはいかなかったので、ヤヤ村に1つだけある宿屋にエルフだとわからないように、フードを被ってもらってから宿泊してもらった。



(一応、クスト達との関係を勘ぐられないようにしないとね…)



クスト達は村の住人と交流が多い訳ではないが、あるにはある為「この間来ていたエルフとは知り合いかい?」みたいに言われたら面倒だったからだ。








―――――――

――――――

―――――







翌日、ライア(分身体2人)とパテルは、早朝に村を出発し、リールトンの街に向かう。



「リールトンの街に着いたら、パテルのスキルの確認をしようか?」



「…あぁ…そういえば、それもあったか…」



未だパテルがどんなスキルを持っているのかも知らないので、冒険者ギルドに到着したら確認しようとパテルに提案する。




「パテルはどんなスキルがあれば嬉しい?」



「…俺は、スキルという物をよくは知らない……だが、お前の役に立つスキルがあればそれが欲しいのだが…」



スキルは特殊スキル以外は、後天的に取得が可能なので“ライアの役に立つスキルが欲しい”というのも叶えられると言えば叶えられる。



だがライアは、人の人生を自分の為だけに消費させるというのは、快く思っていない為、苦笑いが出てしまう。




「…クストにも言ったけど、俺は別に恩を感じてもいいけど、人生を俺の為だけに使おうとしなくていいんだよ?

…なにかパテルのしたい事とかないの?」



「……と言っても、俺はお前に恩を返したい…それ以外は今の所、考えれないからな、諦めてくれ」




(諦めてくれって…はぁ…。クストより若干パテルの方が、質が悪いなこりゃ…)




パテルの少し厄介な性格を再認識しつつ、ライア達は馬を走らせ、街までの道を行く。







――――――――――

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――――――





「……これは……デカいな…」



「あははは!そうだね、たしかに色々と大きいからその気持ちもわかるよ」




ヤヤ村から出発し、特に問題もないままリールトンの街に到着すると、パテルは街の防壁や街の規模、人の多さに目を移しており、少し前のライアと同じくお上りさんになっていた。



そんなパテルを連れ、冒険者ギルドに向かい歩いて行き、大通りに入る。



「――あれ?ライアちゃん、久しぶりだね!」



「あぁおじさん!お久しぶりです。少しの間忙しくて、ここに来れなかったんですよ。

…今日は工房に行くわけじゃないですけど、ココの実のジュース2つくださいますか?」



「あいよ!…そっちはエルフのにぃちゃんか?美味かったらあんたも買いに来てくれよな!」




最近は本体がヤヤ村に帰っており、工房でココの実を飲む機会が無く、暫くの間ココの実の屋台に来れていなかったので、挨拶とパテルの分のココの実を購入し、その場を後にする。




「……ん…美味いな…」



「でしょう?…一応体面的に2つ買ったけど、よかったらパテルがもう一個飲んでいいよ」




別に分身体が食べてもいいのだが、食べても意味を成さず、味も殆ど感じない為、ちゃんと味わう事の出来るパテルに自分の分で買ったココの実を渡す。




「……美味い…」



パテルもこの味にハマったかな?とパテルの顔を観察しながら、足を進めていく。





「……お、見えてきたよ!あれが俺の働いている冒険者ギルドだよ」



「…ゴクッ……ん、あれもデカいな…」




今の時間は比較的すいており、ライアとパテルは早速ステータスの確認をしようとギルドに入って行く。



「…おぉ…」



パテルは人間の建造物に入るのが殆ど初めてのような物なので、周りをキョロキョロと観察しながら、ライアの後ろを付いてくる。




「ライアさん、パテルさん、いらっしゃいませ。話は聞いて、準備は出来てるので、応接室を使っていいですよ」



「すいませんセルスさん…ありがとうございます」




アハトから伝言で、パテルのステータスを確認すると言っていたので、ノータイムで受付の横の扉を進んで応接室にパテルを案内する。



実はパテルのステータスを見る際に、色々とスキルなどの知識が足りないと予想しており、ライアがステータスの事を教えながら確認しようとしていたので、周りの視線が無い、応接室を使わせてもらおうとなったわけだ。





「…っと…それじゃパテルはそっちの椅子に座って?…今からこのステータスカードの注意点なんかを教えるから!」



「…頼む…」



今回のステータスカードは個人登録ではなく、ステータス確認をする為だけなので、血を付けないようにすることや、個人登録にかかる費用なんかも教えていく。



「一応、パテルの分のステータスカードの代金を俺が払ってもいい「それは遠慮する」…食い気味だね…」



これは前に聞いたのだが、パテルはこれ以上ライアに負担はかけたくないらしく、お金を貸すと言っても全然受け取らない。



(お金には困ってないから、貰ってくれる方がありがたいけど…頑固だしなぁ…)



旅の中で聞いても特に考えは変えなかったので、しょうがなく今回は登録無しのステータス確認のみだ。



「…って感じね?わかった?」



「…あぁ…」



「それじゃ早速やってみようか!脇に挟むか両手に挟むか…何だったら直接魔力をカードに送ってもいいしね」




ステータスカードの特徴は人体の魔力を少し吸い上げ、その魔力の情報を読み取り、言語化するものである。


この魔力を吸い上げる工程があるおかげで≪魔力操作≫が無い人でもステータスの確認ができるが、魔力を送れるのなら、あまり意味はない機能である。



(これもリネットさんとの勉強の成果だけどね)




パテルはライアの言う通りにカードに魔力を送ると、少しだけ“ビクッ”とした反応をした後、目を動かしているので、ステータス鑑定は成功しているのだろう。




「どうだった?」



「……これが、ステータス……スキルか…」



パテルは摩訶不思議体験を経験している為かライアの言葉に反応せず、自分のステータスの確認を続ける。




「……スキルがあったな…俺のスキルは≪登攀≫と≪魔力操作≫、それに≪弓術≫と≪索敵≫があるな…≪索敵≫だけがレベル1みたいだが…」



「なるほど…≪登攀≫が特殊スキルかわからないけど、≪索敵≫と≪弓術≫とかは特殊スキルじゃ無い奴だね…。

でも≪索敵≫はある意味特殊スキルと同じ扱いをされるくらい取得が難しい奴だから、当たりの部類だね!」



パテルのスキルは≪登攀≫は初耳だが≪索敵≫という、ある意味特殊スキルと言われそうなスキルがあったらしく、ライアは素直に賛辞を贈る。



「…≪登攀≫…何かに上る事に対しての補助効果…が付くらしい…」



「なるほどね…そういうスキルか…。

パテルが神樹の森にいたころ、木の上を移動してたりしてたけど、あれは他のエルフ達みんなが出来る物なの?」



「……神樹様を守る仕事についていた者達は皆出来ていたな…?」



どうやら話を確認していくと≪登攀≫も特殊スキルではなさそうで、他のエルフ達みんなが持っていそうな感じであった。



恐らくパテルの5歳の時にもらったスキルは≪索敵≫であり、そのスキルを使えていなかった為に、レベル1なのだと予想できた。





「スキルが分かったし、色々と教えれることもあるみたいだから、この後にでもスキルの練習をしようか」



ライアはステータスの内容をきちんと覚えるようにとパテルに念押ししてから、ステータスカードをギルドに返し、応接室を後にすることにした。








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