改革、火竜討伐 後日談5
――――――アハトside
「…はい、神樹の森の討伐作戦は完了したので、村々に護衛に向かった冒険者達は3日ほど様子を見た後、依頼完了の連絡でいいそうです」
「わかりました。…それでは皆さん!これから依頼から戻って来る冒険者達もそうですが、アハトさんの連絡にもあったように、エルフ達の件もあり、業務が一気に忙しくなると思って、準備していてください!!」
「「「はい!」」」
冒険者ギルドは、火竜討伐作戦と周辺の村々に護衛依頼が発行された時の忙しさが落ち着き、一息つけると安心したが、すぐに後処理業務が始まると、ギルド職員に気合を入れるセルス。
「「………」」
若干2名ほどは返事も出来ずに、業務机に突っ伏しているが…。
「…ミリーさん、カズオさん?騎士団達と一緒に、分身体達がこちらに来るので、それまでは頑張りましょう?2日も頑張れば、大丈夫ですよ!」
「「アハト様ぁぁぁぁ」」
騎士団達が到着するのは早くても2日後になるので、それまでは頑張ってもらわないといけない為、業務机に突っ伏している2人にエールを送る。
「はぁ…お二人は本当に…。
…アハトさん、申し訳ありませんね」
「大丈夫ですよ!分身体達も余っているので」
こちらに来る分身体達はヤヤ村に向かう際に馬に乗れなかった者達で、何か目的があってリールトンの街に寄こしたわけではない。
なので、忙しくなるであろう冒険者ギルドの手伝いをするのは別に構わなかった。
「それより、保護したエルフ達の件はどう対処しますか?…今過ごしてもらってる所も、個室なんかはない倉庫ですし、早めに宿屋…ではなくても、きちんと住める所を用意した方が良いですよね?」
現在リールトンの街に滞在しているエルフ達は、元々は広い倉庫に布団と仮設の台所などを運び込んだだけの場所で過ごしてもらっている。
「そちらはこちらで勝手に変えることが出来ない問題ですね…ギルド長に判断してもらい、動いてもらうしかないでしょう」
「わかりました、ギルド長にもそう伝えておきますね」
現在冒険者ギルドにギルドマスターはおらず、領主邸や倉庫の管理をしていた商会に行ったり来たりしており、大変多忙に動いていた。
もちろんギルドマスターには分身体が一人ついているので、報告、連絡は欠かさずしてはいる。
ギルドマスターもさすがにこのような大事件が起きていて、サボろうとはしないらしく、セルスも監視の確認などはしていなかった。
(こうゆう時はきちんとするって信頼してるのかな?…いや、さすがにこんな時にサボれる人はいないか…)
自分の中で、こんな状況でもサボるのではないか?と考えてしまっていたライアは、ギルドマスターにほんの少し申し訳なく思った。
―――――ギルマス付き分身体side
「…ひっくしょぉい!!……あぁん?…疲れで風邪でも引いたか?」
「ギルド長は風邪を引かないでしょう?ギルド長は……いえ、すいません」
「おい、ライアてめぇ、オレがバカとでも言いてぇのか?あぁぁぁん?」
ライアの心の思いを受け取ったのか、馬車の中でくしゃみをするギルドマスターに軽口を叩き、睨まれる。
「…たくっ……で?」
「はい、先ほど伝えたようにエルフ達の仮設住居を早急に変える為、ギルド長に動いて欲しいそうです」
「かぁぁ…あの倉庫以外で100人が一気に住めるとこなんてないぞ?…場所は離れるが、個別に住居を用意するか今のまま、エルフ達が全員住めるあの倉庫かの2択しかないんだがな…」
どうやら商会から借りたあの倉庫以外では、100人一緒に入れるほど大きな施設が開いていないらしく、個別の部屋などを希望する際には、エルフ達はバラバラに住まなければいけないらしい。
「…その2択をエルフ達に聞いた方が良いですよね?」
「そうだな、俺達が勝手に倉庫はダメだと思って変えて「別々は嫌だ!」なんて言われるよりは先に聞いた方が良いだろ?」
「そうですね」
エルフ達がプライベートがある個室の住居を願うか、皆が離れ離れにならない今の状況を選ぶかはわからないので、まずは確認してからだと理解を示す。
「ギルド長は…まだまだ忙しいですよね…?」
「……ずっと見てるだろ…わかれ…」
ギルドマスターは疲れた顔をしながら、馬車で商会に向かいつつ、書類を確認し、ハンコを押していた。
「…エルフ達に確認も、こっちで何とかしますね…」
冒険者ギルドの受付達もギルドマスターも忙しさで早死にしそうだ、と感じてしまうライアだった。
―――――――――
―――――――
―――――
アルボラ達との会談があった日から2日が経ち、神樹の森から討伐隊が戻って来た。
リールトンの街に着くと、騎士団達は報告などをする為、領主邸に向かい、その他の冒険者やアインス達は全員冒険者ギルドに向かった。
アインス達以外の分身体はギルドのお手伝いをさせ、そのうちの3人はリネットの工房に向かわせた。
他の冒険者は依頼完了の手続きと狩った魔物の素材を売り、その金で一階の酒場で騒ぎ出す。
「「「「「かんぱぁぁぁぁい!!!」」」」」」
時間はまだ日が明るいのにもかかわらず、火竜討伐というデカい仕事を終えたと、参加した冒険者同士で、酒を酌み交わす。
「はい、こちらが依頼の達成の賞金です。ご確認ください」
「いえぇ、ご褒美とかはー…そのぉー」
「魔物の素材の買取ですね?少々お待ちください」
そんな冒険者達の宴を聞きながら、2階の受付では、終わりの見えない行列の処理を行っていた。
「……やぁ…えっと、アハトさん。火竜討伐の方はうまくいったんだってね?」
「ゼルさん!それに皆さんも…。
おかげさまで何とか討伐成功しましたよ!…その様子だと、ラーム村の護衛もうまくいったのですね?」
そんな先の見えない業務を行っていると、受付に現れたのは、故郷のラーム村の護衛依頼を受けて、ラーム村に行っていたゼル達だった。
「おかげさまでな、魔物達の出現はすぐに無くなったよ。一応まだ現れる可能性もあったんだけど、それの確認は他の冒険者達に任せて、一足先に戻って来たんだ」
「ライアちゃん達にも俺らの戦いぶりを見せたかったんすけど、さすがに故郷のピンチは見過ごせなかったんすよぉ……でも、何でっすかね…心の中に今回の火竜討伐作戦はライアちゃんへのアピールするタイミングだったんだと、後悔の念が止まらないんすよぉぉぉ…」
「アハトちゃん…ごめんね?タリスの奴、依頼を受けてからずっとこの調子でね…」
ゼル達に特に怪我はなく、村に関しても、他の冒険者が経過観察をしていると言って、依頼完了の手続きをして、1階に向かって行くのを、無事でよかったと、笑顔で見送るアハトであった。
(…タリスさんはいつもどうりだったね……)
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