改革、火竜討伐 後日談4









『…それは、本当ですかな?』



「えぇ…今回、アインス殿達に出会わなければ、我々は滅びていたでしょう…。

何より、我々の認識が100年前から変わっておらず、あなた方を知ろうとしなかった事も、原因でありましょう」




アルボラはエルフ達の意識を変え、人間と手を取り合っていれば、今回の件ももっと早くに対処できていたかもしれない。


アルボラはそんな思いがあったから、先ほどの提案を出したのだという。




『なるほどな…しかし、交流が目的なのであれば、保護したエルフ達を返還してから、改めて交流を介してもよろしいのでは?』



領主の言うように、一度エルフ達を戻してから、交流を始めてもいいはずだ。




「…実は、今回の戦いを経ても、人間達を信用していない者達が、少なからずおりましてな…。

…少し強引なのですが、元々保護を頼んだエルフ達が戻ることは考えておりませんでした。

故に、今すぐではなく、暫く時を置いてから返還をしてもらい、(人間達は長い期間、エルフ達に危害を加えなかった)という事実が欲しいのです…」




『なるほどな…それを反人間派のエルフ達を説得する為の材料にする為か…しかし、すぐに返還しなければ、余計に不信感を煽るのではないか?』




「それに関しては大丈夫でしょう…元々保護とは言っても、殆どの者達は同胞を人間に“売った”と認識をして、送り出しておりますからな…。

返還するにしても、こちらは売った同胞を返せと騒ぐことしか出来ないと、諦めている者が殆どです」




アルボラが言うには、100人達はもうすでに、人間達の奴隷として売ったのだという認識らしく、エルフ達の返還はされるとは思っていないらしい。



一応アインスからアルボラや護衛のエルフ達には【保護】として扱うと言ってはいたが、信じてはいない方が多かったらしい。



それも、今回の火竜討伐に尽力してくれて、半数以上は人間を信用し始めてくれているらしいのだが…。



「なので、人間達の街で、ある程度生活させてもらった者達が森に戻り、その事を話させれば、人間を信用していない者達にもリールトンの街の人間達は大丈夫だと、実感させられると考えた次第です…。

…同胞をそちらで預かってもらう提案なので迷惑なのは承知なのですが…どうかお願いできないでしょうか…?」




エルフ達をすぐに森に返しても、返されたという事実で人間を信用出来る者達が増えるかもしれないが【人間の街でちゃんと生活してきた】という仲間の実体験もあれば、説得の効果は高いだろう。




『こちらの迷惑は考慮しなくてよい…寧ろ100人程度で迷惑になどはなりもしないよ。

……では、あなた方の同胞はしばらく、こちらで預からせてもらうよ』




「ありがとうございます」




今後しばらくはエルフ達がリールトンの街で生活することが決まり、色々と賑やかになりそうだと感じるライアであった。





『…さて、交流を始めるとなったなら、他にも決めなければいけない事がある…このまま話を続けても良いかな?』




「はい、ワシらには問題ありませぬ」




そこからは、エルフと人間の交流を開始するために、人間側から何を提供するか、エルフからは何を提供できるかの話を進めたりして行く。




「ステータス…カード…初耳ですな…スキルとやらは、人間達にだけある不思議な力と考えておりましたが……我々エルフにもある力とは……」




アルボラ達はステータスカードの事は知らず、スキルに関してもクスト達と同じような認識であった為、色々と教えたり、知識の共有も行っていた。










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それから会談は何時間も続き、会談が終わる頃には、すでに周りは暗くなってきており、アルボラ達は村に戻ることになった。




「…今回は、このような会談が出来て有意義であったよ。これからは人間達とも交流を増やし、人間を信用できない者達にもわかってもらえるようにするのでな」




「そうですね、早くエルフ達に信用してもらって、人間とエルフ達がどこでも笑い合える世界にしましょうね」



「それは早く見てみたい物であるな…では失礼する」




会談が終わり、今はアルボラを見送りに来たアインス達がアルボラと話し、アルボラ率いるエルフ達は神樹の木に向かって去って行く。





「さて、これであらかた此処ですることもなくなったし……一度ヤヤ村に行くか!」




「……助かる…」



アインスは自分の後ろについてくるパテルに視線を向けながら、そう話し、パテルも子供達を見れると緊張しつつも期待を感じる顔をする。




「馬に乗って行けば2日ほどで着くのだけど…さすがにこの人数は無理だね」



アインス達は神樹の森に向かう際に借りていた馬2頭を見てから分身体10人とパテルを乗せるのはどう考えても無理と判断する。



「分身体は出来るだけ本体のとこに行かせたかったけど…しょうがない、騎士団の人たちにお願いして、リールトンの街に連れて行ってもらおうか」




これはしょうがないと、分身体3人とパテルだけ残し、アインス達含む分身体達7人をツェーン達と一緒に街に向かわせることにする。




「……君も、アインス…なのだよな?」



パテルは≪偽装≫を施していない、ただの美少女ライアちゃんを見て、そう質問してくる。




「ん?そうだよ?姿に合わせて、少しだけ喋り方を変えてるけど、皆同じ一人の人物だよ?」



「……慣れんな…」



パテルはヤヤ村に向かう為に、馬に乗ったライア(分身体)の後ろにまたがりながら、そう呟く。




「そう言われてもね?…まぁすぐになれるよ!あ、あと本体の名前はライアだから、これからよろしくね?」



「……パテルだ…よろしく頼む…」




「え?知ってるけど?」とパテルの自己紹介にツッコミを入れつつ、パテル達はヤヤ村に向かって、馬を飛ばして行くのだった。









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