改革、火竜討伐 後日談3










「えっと…さすがに、俺の一存だけじゃダメだろうし…クスト達の意見も聞かないとだな…」




クスト達は父親の件なども一切話してはおらず、父親の事をトラウマとして思っている可能性もある。



そんな子供たちにパテルを会せたら、あの子達の平穏な生活が守れないかもしれない…。

慎重に確認したいので、時間が欲しいと伝える。




「……ん?…いや、俺にあの子達に会う資格はないよ…。俺はあの子達の元気な姿を一目見れれば、それでいい…。

…俺はあの子達に気付かれないように遠くから見させてくれれば助かる…」



「え…あぁ…それでパテルはいいのか?」




「…あぁ…俺はもうあの子達の親を名乗るつもりはない…ただ、あの子達の為に出来ることがあれば、何でも言ってくれ…」




パテルは一度見捨ててしまった負い目からなのか、アインスにそう伝える。




「……わかった…でも、もしもあの子達が幸せになる為に邪魔になるようだったら、俺はお前を排除するからな?」



「…構わない…むしろ、俺はお前の言う事をこれからすべて聞き、従おう…」



パテルは覚悟が決まっているのか、その言葉に嘘はなく、目も真剣そのものだ。




「はぁ…なら、今回の会談が終わったら、村に案内するよ…その時はよろしくな?」



「…あぁ…」




アインスはそう約束を取り付け、もう話す事はなくなったと、パテルを森に返す為、見送る。




「………」



「………」




「……?…まだ何かあるのか??」




パテルはアインスを見たまま、特に森に戻る気配はなく、何かほかに伝える事でもあるのかと、質問する。




「…?いや、特には無いが…」



「そうか、それじゃ…」



再び見送ろうと森の方に目を進めるアインス。




「………」



「………え?なして森に戻らんの?」



ついにライアは我慢できなくなり、アインスの口調ではない口調で、パテルに疑問をぶつけてしまう。




「…?先ほど言わなかったか?…俺はお前の言う事を聞く従者だ…」




「聞いてないんだが!?!?」



なんとも初耳な事を言われ、確認していくと、先ほどの「俺はお前の言う事をこれからすべて聞き、従おう」という言葉が、子供達の為にというのもあるだろうが、子供たちを救ってくれたアインス達に恩を返す為、従者になるという意味合いも込めていたらしい。



(いやいや、そんなん分からんって)



少しばかり言葉が少ないようだったが、理解はしたので「従者になんかならなくてもいいぞ」と言えば、決意は固いらしく「恩を返させてくれ!」と一切聞き入れてもらえなかった。




「えぇっと…ほら?エルフの村にだって、説明しなきゃだし、いきなり俺に付いてくるのもおかしいだろ?」



「……族長ならびに、村で世話になった者達には礼を伝えてあるし…準備は出来ている…」



(退路がねぇぇ!!)




その後も、パテルの覚悟は本気らしく、最終的に俺達の仲間という事で、こちらが折れた。



(…恩を感じて、この全力投球…クストと同じ血なのは確かだな…はは)



ライアは自分に恩を返そうと己の人生をかけようとしているクストと同じものを感じ、少し笑ってしまった。









――――――翌日…






昨日のパテルがアインス達と合流し、色々とごちゃごちゃした一日を終え、今は翌日のお昼…。

つまりエルフ達との会談が始まる所であった。




「それではーこれより、エルフ族代表ーアルボラ様とリールトンの街代表のぉアイゼル・ロー・リールトン様の会談を始めたいと思いますぅ」



臨時で作られた会談場には司会進行役のツェーンとエルフ族の代表アルボラ族長とその護衛3名、人間側には、騎士団の隊長とその側近らしき騎士が1名と、領主の言葉を伝える為に分身体が席に座っている。




「司会進行は私、リールトンの街の冒険者ギルド所属の受付嬢、ツェーンが行わせていただきますー!

ちなみに、そこにいる分身体さんは、領主様の言葉をそのまま伝える役目を貰っていますのでー余計な事は喋りません―」



最初はアインス達を司会進行を任せようとしたのだが、冒険者ギルドに務めている肩書きがあったので、ツェーンの方が外聞がよろしいという事で、この配置になった。




『私はリールトンの街を治めている領主…アイゼル・ロー・リールトンである』



「私めはエルフ達のまとめ役をしておりますアルボラと言う者でございます…この度はご助力を痛く感謝いたしますぞ…」




『構わない、こちらにも危険が及ぶ可能性も高かったであろうし、何よりエルフ達を見殺しにしては、我がリールトン伯爵家の名折れであろうしな』




ライアの姿でちょっとした心意気で、領主の声を真似て話させると、何とも脳がバグりそうになる見た目だが、アルボラはそんな状況に何の反応もせず、話をしていく。




『今回の会談の目的なのだが、まずは先日、保護したエルフ達がリールトンの街に到着し、こちらの用意した施設にて、休んでもらっているのだが…

エルフ達はすぐにでもそちらに送り返した方が良いかな?』




「……その事なのですが、少しばかり時間をおいてからでもよろしいですかな?」




アルボラは領主の発言を聞き、少し考える素振りを見せた後、そう発言する。



『ほう…事前に聞いていた予想とは違うな…理由を聞いてもよろしいか?』




ライアもエルフ達が人間を信用して、非戦闘員を保護させている訳ではないのは知っていたので、てっきり、すぐにでもエルフ達の返還に同意すると思っていた。







「はい……我々エルフ族は、リールトンの街と交流を持ちたいのです」






アルボラは、エルフと人間の100年の溝を無くす為の提案をするのだった。








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