改革、火竜討伐作戦4









―――――後方陣地 冒険者side




俺はこの火竜討伐作戦に、元々参加する気はなかった…。火竜は強力で、命の危険があり、俺なんかの力じゃ、火竜に攻撃を与える事も出来ないと思ってたからだ。




それでも俺は今、この火竜討伐作戦に参加している。



なぜって?そんなのここにいる冒険者の殆どが同じ答えだろう。




「ツェーンちゃんを守る為だよなぁぁ!!」



「……お前、いきなり叫び出して、どうしたんだよ…」



俺のパーティの仲間がいきなり叫び出した俺に変な目を向けて来るが、そんなの気にしない。俺はツェーンちゃんを守る為にこの危険な火竜討伐作戦に参加したんだ!少しくらい大声出して、勇気付けをしたいんだ。



「…あのアインス達を見たろ?俺もあんな風に火竜に立ち向かっていきたいんだよ…」



「…それで叫ぶお前の気持ちはよくはわからんが、アインス達は素直にすごいと思うよ。俺達ももう少し力と勇気が欲しいもんさ」



実は、ここに来ている殆どの冒険者達は皆、アインス達の戦いを見て、「あいつすげぇ」って感心しつつも、「俺もあんな風に戦いてぇ」と、少しの嫉妬を抱えている者たちばかりだ。



「…俺もあんだけ強かったら、ツェーンちゃんも褒めてくれるかな…?」



「俺は、ツェーンちゃんが「すごいすごい!」って俺の名前を連呼してくれるなら、火竜を1人で討伐できるかもしれんな!ははは」



そんな、あるわけないと、妄想に過ぎない考えを話しながら、そろそろ戦場に向かおうと動き出すと、向こうからアインス達が走って来る。



「…どうしたんだ?騎士団はそっちに向かったはずだが」



「騎士団は今、火竜の足止めをしてくれてる!俺達は少し準備があって一度こっちに来たんだ!」




アインス達は急いでいるのか、俺達にそう伝えるとすぐさま、医療テントの方に向かって行く。



その医療テントから、我らがツェーンちゃんが(と分身体のライアも)出てきており、話し声は聞こえない位置だったので、話している内容はわからなかった(そもそも話していない)




「…え!?」



「なぁ!?!?」



そんなアインス達は、数秒ツェーンちゃんと話をした(話してない)後に、なんとアインスと向かい合わせの状態で、両手を繋ぎ合わせはじめる。




「…え……え?…もしかし…て……アインスと…ととと!?」




「…嘘だ!!!まだアインスが来て半年も経って無いんだぞ!?!?そんな事ありえん!!」




ありえない、あの美少女のツェーンちゃんが半年で落とされるたまじゃねぇ!とパーティ内で、根拠のない証拠を叫ぶ。




「…ん!?…アインスだけじゃ…ない?」



「…ドライちゃんとも、してる?」



「というか、ライアちゃん(分身体)とツヴァイ達もやってないか?」



俺達はツェーンちゃんがアインス(男)と両手繋ぎという、恋人さながらの行為に目が行ったが、実際にはアインスとドライちゃんが、ツェーンちゃんと両手繋ぎをしており、他2人がライアちゃんとしている状態だった。




「…これって、もしかして…そうゆう事か?」



俺はその状況を見て、ある一つの可能性を思いつく。




「…これは…火竜討伐で頑張れば、ツェーンちゃん(もしくはライアちゃん)がご褒美(両手繋ぎ)をくれるという事ではないか!?!?」




「「「ハッ!?」」」




俺の言葉を聞いて、俺の仲間たちは「それか!!」と気付きの表情を浮かべ、目に火がともる。




「…おめぇら…ツェーンちゃんのおてて…握ってみたいよな?」



「「「常識」」」



普通であれば、もう少しまともな思考が出来たんであろうが、ツェーンちゃんの魅力の前には俺達は一つになれる。




「……なら俺達のする事は決まりだ!!!!」




「「「「トカゲ火竜狩りじゃぁぁぁぁ」」」」




俺達は、この時ばかりは恐らく音速を超えていた気がする。












―――――アインスside





「…あいつら、何騒いでるんだ?」




ライアは、知らぬ間に火竜討伐のご褒美として認識されているとは全く気付かず、後ろで冒険者達が騒いでいるな?程度の認識しかなかった。





「それよりも…もうちょいか…。無属性の魔力移動、一応練習しといてよかった」




実はアインス達が後方陣地のツェーンたちに会いに来ていたのは、減った魔力の補充である。



無属性の魔法は比較的簡単で、魔力を移動させたり、引き抜いたりは≪錬金術≫で何度もしている。



無属性魔法の魔力に意思を込めて、念話のようにするのは、まだライアには出来てはいないが。




(今回の火竜討伐作戦において、ツェーン達は非戦闘員だ。

…無理矢理、戦場で戦わせてもいいが、色々と面倒になりそうだし、自由に動けるアインス達に魔力を渡して、準備した方が良い)




ツェーンや分身体を向かわせないのは、普通に考えれば非効率ではあるのかもしれないが、体面的な問題とツェーン達のイメージで、このような方法を取った。



…その方法の結果、ライアは気づかなかったが、冒険者達に違う誤解を与えた事は変えられないが…




「…よし、大体魔力も回復出来た…なら次は…」




アインス達はツェーン達の所を離れ、再び戦場の方へ走り出し始める。









――――火竜討伐隊side




「グアァァァァァァァァ!!!!」



―――ヅガァァン!!



「くっ!!さすがは竜種…どれだけ傷をつけようとも、衰えを感じさせんな…。

皆の者!このまま火竜の好きにさせるな!何としても、ここを突破されることは許されんぞ!!」



「「「了解です!」」」



騎士達の中には、長い消耗戦のせいか、動きが悪くなっている者も出始めているが、隊長の喝で無理矢理にでも戦闘を持続させる。




「でりゃぁぁぁ!!」



―――ザイィン!!




「冒険者達も加勢してくれているのだ!!街の皆を守る為にもk「ツェーンちゃんのおててぇぇぇ!!!」…ん?」




隊長は、火竜に攻撃を仕掛けている冒険者を見て、それを糧にしようと声をあげるが、冒険者の叫びに思考がそれる。



「この糞トカゲぇ!!ツェーンちゃんからのご褒美の為だぁ!死にさらせぇ!!!」



「ツェーンちゃんのおてては俺のもんだぁぁ!!」



「…なにぃ!?火竜を倒したら、ツェーンちゃんと手を繋いでデート!?俺達も行くぞぉぉぉ!!」




冒険者達は、話に尾ひれはひれが付いた噂を聞き、ツェーンの為に!と奮起し、火竜に挑みかける。




「ググゥゥゥゥ!?」



その異様な圧力に火竜は少しだが威圧されているようにも見え、冒険者達が火竜を圧倒している雰囲気がある。




「…冒険者達に何があったのだ…?」



「…さぁ?…おてて?」





「まぁなんにせよ、冒険者達も奮闘しているのだ!我々も続くぞ!!」



騎士団はそんな冒険者達に唖然としてしまうが、冒険者の勢いもあり、好機には違いないと、隊長がそう指示を出し、騎士団と冒険者で火竜に総攻撃を仕掛ける。






――――ズバァァン!!



「グガァァァァァァ!!」




「くっ…これだけ魔法を繰り出しても、翼に軽い傷しか付けれないとは…」



森から、火竜へ向け、幾度となく放たれていた魔法だが、あまり効果が無い上、エルフ達の殆どが魔力が無くなっていた。



「このまま我々は魔力が切れたと言い訳をして、火竜討伐を人間達だけに任せられるか?そんな事ワシが許さん!!皆の者よ!命をしてでも魔法を止めるでないぞ!火竜の体力を出来るだけでも削るのだ!!」



「「「ハッ!!」」」



すでに、エルフ達の顔は魔力欠乏で具合が悪そうにしている者が殆どの中、族長の言葉に意地でもあるのか気丈に返事を返す。





「「「「聖なる風の、聖霊よ…我が敵に風の刃を…“ウィンド・エッジ”」」」」




――――ズバァァン!!


「グガァァァァァァ!!!」





「くっは…はぁ…はぁ…」




エルフ達は膝を付きながらも火竜に目を向け、気を失うまで魔法を放ち続けている。





「グアァァァァァァァァ!!!」



――――ヒュゥゥゥゥゥ…



火竜は長い戦いで、それなりに体力を消耗し、このままではまずいとでも考えたのか、自傷覚悟のブレスの準備に入る。





「ブレスが来るぞ!!退避準備!!」



「隊長!地上からのあの爆発するブレスを避けれるだけの体力は、もう皆にありません!!」




隊長の言葉に近くに居た騎士が他の騎士たちの状況を把握しており、その行動が不可能だとすぐに叫ぶ。




「くっ!動けない者は盾を構えて衝撃を殺すのだ!!意地でも生き延びよ!!」




隊長もそのことは薄々わかっていたのか、すぐに防御してでも生存を第一に考えた指示を伝える。




騎士達は動けない者同士、お互いをカバーできるように固まりながら、盾を構え防御陣形を築く。






「ヴォォォォォォォォォッッ!!!!」



――――ズガァァァァン!!





火竜のブレスは無情にも放たれ、辺りに衝撃が走る。










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