改革、火竜討伐作戦3
森の出口で行なわれている戦いは、現在、エルフ達とアインス達が火竜を押し留めており、冒険者達は騎士団の怪我人達の救助を行っていた。
「……あいつらなんか増えたぞ?、すげぇな…」
「この間、冒険者になったばかりのアインスのパーティだろ?なんだってあんな魔法使えるんだ??」
冒険者達は騎士団の救出しながらも、囮になってくれているアインス達の戦いを見ており、幻魔法の効果に驚愕している。
「なんにしても、あの様子なら任せて大丈夫そうだ!!俺達はさっさと怪我人の救助だ!!」
火竜の事はアインス達に一旦任せ、冒険者達は素早く行動を再開させていく。
「大丈夫か!?死んでなかったら返事をしな!」
「…ぐぅ…平気だ…生きてはいるが…」
助け出された騎士団の隊長は瓦礫から身を起こすも、衝撃で足の骨が折れているらしく、すぐに動き出せないようだった。
「歩けはしないか…おぉーい!こっちも運んでくれぇー!足が折れてる!」
冒険者は運ぶ力仕事組と人を探さす捜査組に分かれており、近くに居た男をすぐに呼ぶ。
「…すまないな…戦いはどうなっている?」
「今はアインスって冒険者のパーティが火竜を食い止めてる。見た感じそのまましばらくは大丈夫そうだから、さっさと傷薬で治して来いよ!」
「……ほう、あれは魔法か…確かに、傷を治して万全にした方がよさそうだ…」
騎士団の隊長は、冒険者の言葉にちらりと戦場の方を向いて確認すると、その言葉に嘘はないのだとわかり、素直に後方陣地に戻ることにする。
――――――後方陣地 ツェーンside
「…もう一人追加です!!」
「はぁーいー!そこに寝かせておいてくださーい!」
後方では医療班として、ツェーンと分身体1人が治療を手伝い、騎士団の人たちの治療を行っていた。
「…ダメですね、完全に折れてます…この方にも傷薬をお願いしますー!」
治療と言っても、殆どの怪我が、緊急性のある骨折や大やけどの為、最近大量に冒険者ギルドで仕入れた(ライア作)傷薬での治療ばかりで、やる事は傷薬を飲ませてあげるくらいだ。
一応傷薬は高級品なので、軽い擦り傷や軽いやけどだけの騎士達などは、痛み止め効果のある安い薬で、包帯を巻きつけるなどの治療もしており、少しは傷薬の節約はしている。
「……すまない、助かった…。
怪我を治療してもらい、動けるものは私に続け!!今なお我々の代わりに火竜の足止めをしてくれている冒険者達がいるのだ!!我々もその勇気に応え、助太刀に向かうぞ!!!」
先ほど運ばれてきた騎士団の隊長が、自身の怪我を傷薬で治療すると、すぐさま火竜討伐に戻るぞ!と、士気をあげる。
その声に、傷薬で傷を癒した者や、比較的軽傷で戦闘可能になった者たちが続いて行く。
(…命は助かったけど、放っておいたら致命傷になっていた人も結構いたのに…心が強いね)
そんな騎士達を見て、自分にはない心の強さを目の当たりにして、素直に感心するライアだった。
――――――アインスside
「グアァァ!!」
――――ズガン!!
「残念、それは幻影だよ…“ウォーターブレイザー”ァ!!」
――――ズバァァン!!!
「グガァァァァァァ!!!」
火竜はそこらかしこに点在する、アインス達の幻を手あたり次第攻撃をしていくが、そのすべてが幻であり、その幻を“利用”し、死角から魔法を叩き込む。
「ガァァァァァ!!!!」
火竜は“魔法を飛ばしてきたアインス達の幻”を攻撃し、そのすべてが幻影である事実に怒りを見せ始める。
「はは!そうだよね、魔法で攻撃されたら本体があるって思うよな!!」
実はこのファントム、ほんの少し細工をしていて、魔法を発動させて攻撃を加えることが出来る。
実はこの世界の魔法とは、手を基軸に発動している訳ではなく、己の魔力を変質させ、体外に出して魔法を作り出しているというのが正解なのだが…。
「魔力消費がヤバいけど、これは使えるね…でも、どうしよ?はは」
これはファントムを発動させ、生み出した幻影を基軸に魔力を送り、遠隔で遠くから魔法を発動させるといった方法を取っていた。
しかし、この方法は魔法しか使えず、本体が物理攻撃をしてしまえば、すぐにばれてしまう欠点もあるし、何より魔法を発動させるほどの魔力を幻影全員に移すだけでも、魔力消費が凄まじい。
「グアァァァァァァァァ!!!」
「…クソ…”アースクエイク”!!」
――――ガァラガラガラ!!
火竜の尻尾が本体たちにぶつかりそうな攻撃は地面を崩し、バランスを崩させて、難を逃れているが、どちらにしてもただの時間稼ぎにしかなっていない。
「…もう少しすれば、騎士団も戻って来る…でも、エルフ達はそろそろ限界だろうし…。
………間に合うか…?」
アインス達は、残り少ない魔力をどう使うか考えながら、現状の戦力と増援戦力で、どう倒しきるか思考しながら、戦闘を継続する。
「グアァァァァァァァァ!!!」
「だぁぁってろトカゲ!!“アースショット”!!」
――――バスン!!
火竜の咆哮に土魔法を放ち、口の中を狙うが、あまり効いてはいなかったようだ。
「…口の中ジャリジャリしないのかよ…」
火竜は特段、口の中を気にするそぶりも無く、そのままアインス達に攻撃を続けて来る。
「……ん?」
「すまん!!待たせたな!!」
火竜に対峙していると、背後から集団が近づいてくる気配を感じ振り返ると、鎧などが少し汚れているが、殆ど無事な騎士団が応援に駆け付けて来てくれた。
「来てくれて助かる!!そろそろ魔力がヤバかったんです!」
「こちらこそ助かったよ!出来れば、このままその魔法で援護してもらいたかったが…無理か」
魔力が全快であれば、騎士団と協力して、もっと安全に火竜に攻撃を仕掛けれるだろうが、魔力が心許ないのが現状だ。
「…何か、火竜を倒しきる策って、あったりしますか?」
「…はっきりと言えば、地道に削って行くしか考えはないね」
隊長はアインスの質問に、諦めたわけではないが、重い顔をしながらも正直に答えてくれる。
「一応、俺達は考えがあるんですけど…」
「それは本当か?」
「はい……ただ、それを行うのに、準備と時間が掛かるんです」
隊長はアインスの言葉に耳を傾け、真剣に考えてくれる。
「…つまり、我々が時間を稼げば、火竜を倒せる手があるのだな?」
「はい」
「わかった!では、君たちはその準備とやらを進めてくれ!」
隊長はアインスの言葉を疑う事もなく、素早く判断し、そう伝えてくる。
「…信用してくれるんですか?」
「ん?あぁ…火竜を君たちだけで食い止めて、我々の命を救ってくれたのだ。それだけで信用するには足りるだろう?
それに、君の魔法は頼れないかもしれないが、元々そのつもりで、ここまで戻って来たのだ。何ら問題はない!」
隊長の言葉はとてもまっすぐに、嘘など付いていない真剣な物であり、ライアは感心してしまう。
(そんなすぐに信用されると、その信用にこっちも応えたいって気分になるね…これがカリスマって奴かな?)
「よし!騎士団諸君!!これから我々で火竜の目を引くぞ!!!攻撃を仕掛けつつ、時間を稼ぐのだ!!!」
「「「「了解」」」」
その掛け声とともに、火竜に向かって行く騎士達に合わせて、幻を下げさせつつ、騎士団と交代する。
「頼みます!!」
アインス達は、そこを騎士団に任せ、魔力を消費しないように一旦後方に下がって行く。
(まずは…ツェーン達のとこに行くか!)
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