改革、火竜討伐作戦2







火竜のブレスや防御力は凄まじく、考えなしで突っ込めばすぐに分身体はやられてしまうだろうとライアは予想し、どうするのがベストか考える。




(エルフ達の魔法は通用してる…ただ、防御力が高いから1度や2度の魔法じゃ倒せないんだよなぁ…。

エルフ達の魔法は1人1人の威力はそれほど高くはないみたいだけど、一斉攻撃を仕掛けたあの攻撃は俺の“ウォーターブレイザ―”に匹敵する威力だったからな…)




エルフ達の魔法が個人で弱いのはイメージの差で変わっているようで、ライアのように現代知識を考慮し、高圧力の水を吹き出し、切断力を高めるイメージをしてあの威力を達成させた魔法とは違い、エルフ達の魔法は、風を刃に見立て、ただ飛ばしているだけのようであった。




(俺も原理はあまりよくは知らないが、かまいたちの発生理由や空気圧などの知識があれば、もっとすごい威力に出来るんだろうけど…)




ライアはその知識をエルフ達に教える時間も無いし、教える知識も無いため、断念する。




「…うぅ~ん…ひとまず騎士団より前に出ないようにしながら、火竜に攻撃を当てていくしか、今の所はないかな?…他の冒険者達も動き出してるみたいだし…」




戦場では騎士団が火竜の目を引いている隙に、側面や背後から飛行能力を奪おうと翼に攻撃を仕掛ける冒険者達が攻め始める。






「てっめぇ!!このトカゲやろぉ!あぶねぇだろ!!」



「さっきのブレスで破片がツェーンちゃんのとこに飛んでったらどうすんだぁぁ!!」



「トカゲは地面を這いつくばってろってのぉぉぉ!!」



――――ギィイン!!ヅガン!!




「グアァァァ!」





冒険者達は何かを大声で叫びながら、火竜に攻撃を仕掛けていき、その勢い的な物がすごかったのか、火竜は少したじろぐ。




「よし!我々も冒険者達に負けぬよう火竜を攻めたてよ!!」



「了解!!ゼリャァァァ!!」



―――ギィィィン!!!




冒険者達に負けぬように騎士団も攻撃の手を休めず、地道に火竜に傷をつけていく。





「グゥゥゥゥゥ…」


――――バサァ…



火竜は人間達の攻撃の圧に堪らず下がろうと、また空へ上がろうとする。




「…また空に上がるぞ!!一斉に翼を攻撃するのだぁ!」



それを見たエルフ達はタイミングを合わせ、先ほどと同じように翼を攻撃しようと狙いを定める。





「今度は俺も…“ウォーターブレイザー”!!!」




エルフ達の魔法に合わせ、同じタイミングで火竜の翼に高威力の魔法を放つライア。




―――ズパァァァン!!



「グアァァァァァァァァ!!」



―――ダァァァン!!



火竜は魔法の攻撃で、片翼を割かれ、空から大地に落ち、大きい音を鳴らす。




「!!火竜が落ちた!!このまま攻め続けるぞ!」



火竜のブレスを警戒して離れていた騎士たちは、すぐさま火竜に攻撃を仕掛けようと、落ちた火竜の元に走り出す。



――――ヒュゥゥゥゥゥ…



土煙で火竜の姿が見えない中、ライアはわずかに聞こえる吸引音を耳に捉える。



「…!ブレスの準備…!ダメだぁー!!ブレスが来るぞぉ!!!」




「!!!退避ぃぃぃ!!」




――――カッ!!




―――――ズガガガガガッ!!!




ライアの注意を聞き、ブレスが来るとわかった隊長がすぐさま退避を指示するが、間に合わず、騎士団はブレスの爆発に巻き込まれてしまう。




「グゥゥゥゥゥ」



火竜は土煙から姿を現すと、至近距離でブレスを放った弊害か。ブレスの爆発で飛んできた岩などが自身を傷つけ、先ほどより傷が増えていた。




「グアァァァァァァァァ!!!」




火竜は騎士達に止めを刺そうとしているのか、倒れている騎士達に向かい動き始める。




「…くっ!それはさせちゃダメだね!!」


―――ダッ!!




このままでは騎士たちは全員殺されてしまうので、命を救う為、アインス達4人が囮になる為火竜の元に駆け出す。




「すまない!!火竜はしばらく俺達が引き付ける!!騎士達の救助を頼む!!!」



「助かる!!」



騎士達の傍で救助をしようと駆け寄ってきていた冒険者達に一言告げて、火竜の目がこちらに向くように攻撃を仕掛ける。




「ゼリャァァァ!!!」


――――ギャリィィィン!!



「グアァァァァァァ!!!」




「…くそ、やっぱ深手にはならないか…」




アインスの斬撃は騎士達の剣より、確実に深く傷をつけた事は確かだが、それでも致命傷には程遠いし、倒すにはかなりの時間が要りそうだと感じる。




「グゥゥゥゥゥ!!」



「…はは!俺に怒ってくれるのか?それはありがたいよ!」




火竜は騎士達からライアにターゲットを変え、こちらを睨んでくるので、囮は成功したな。とひとまず安心する。






「グガァァァァァ!!!」


―――ブゥゥン!!



「うわ…っと…危ないなぁ」




火竜は翼を傷つけられ飛べないので、先ほどよりは戦いやすいのだが、尻尾のリーチが長く、気を抜けばすぐに叩きつけれそうになる。




――――ズガァン!!



「ほっ…と、ならこっちも!!!ゼリャァ!!」



―――ドガッ!!



攻撃を避けつつ、尻尾が地面にぶつかったタイミングで、尻尾をどうにかしようとツヴァイが勢いを付けて、殴りかかる。




「って、堅ったいわ!」




火竜の尻尾はしなやかな動きに反して、胴体などとそれ程遜色はないほど固く、打撃は殆ど意味を成さなかった。




「…クッソ…このままだと、時間が掛かって、エルフ達の魔力が尽きる方が速そうだね…」



未だ有効打は火竜の翼だけだが、常にエルフ達から支援の攻撃魔法が飛んできている。



魔法が体や尻尾に当たっても、威力が足りず傷もほとんど付けれていない状況だ。



それでも、火竜の意識を散漫にし、たまに攻撃を逸らさせてくれるので、助かっている。




「「ヤァァァァァ」」


―――ガキン!!




「グアァァァァァァァァ!!」



―――ブオォン!


「「きゃぁ!!」」




尻尾にドライとフィーアが槍を突き立てても尻尾には刺さらず、すぐに尻尾を振り払い、2人を吹き飛ばす。



(…こりゃ、アインス以外は魔法の方が良いな…でも、それだと魔力が先に底をついて、倒す手立てが無くなっちまう…今は時間を稼ぐしかないか…?)



ライアの考えでは、時間が掛かればかかるほど、エルフ達の消耗が進むが、騎士団の回復と増援を待てるというデメリットとメリットがある為、判断に悩んでしまう。




「グゥゥゥゥゥ」



―――ヒュゥゥゥゥゥ…




「…な、ブレス?自分も被害が…!!狙いはあっちか!!!」



ライアは考えに気を取られ、攻撃が薄くなってしまい、火竜の標的が、遠くから魔法を放つ、エルフ達に移り、そちらにブレスを行おうとしていたのだ。



「くっそ!!させっかよ!!“アースクエイク”!!!」



―――ドガガガガ!!



「グアァァ!?」



火竜は足元を割られ、バランスを崩し、ブレスを止めさせられる。



「あっぶねぇ……四の五の悩んでたら、他に被害が行っちまうな…」



「グアァァァァァァァァ!!!」



ライアは火竜のブレスを止めることが出来て安心するが、こんなことを続けていたら、他にも被害が出てしまうと、考えを改める。




火竜も、ブレスを邪魔され、再びアインスを睨んで威嚇してくる。



「…実践は初だけど、上手くいけば状況が楽になる…使うか!」




ライアは、考えている暇がないと判断し、ある魔法を発動させる。






「「「「“ファントム”!!!」」」」


―――ヒュゥゥ…





アインス、ツヴァイ、ドライ、フィーアは皆同じ魔法を発動させ、戦場に約40人のアインス達が生み出される。





「……さすがに…ちょっと、増えすぎたかな?…制御し難いけど…出来ない訳じゃないね…」



ライアは実体のない幻影を1人10人動かしながら、そう言葉を漏らす。




「グアァァ……」



火竜もいきなり増えたアインス達を見て、困惑する。




「…ひとまずこれで、俺らを無視はできんだろ?火竜さんよ?」









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