改革、火竜討伐作戦
―――――火竜討伐予定地 神樹の森東出口付近
火竜討伐作戦
総勢290名
騎士団50名:冒険者40名:エルフ200名
今まさに、これだけの人間とエルフが火竜を倒すために集まり、今、手を取り合って動き出す。
「何としても火竜の進行を食い止めるぞぉ!!」
領主の号令を分身体から伝えられると、一番最初に動いたのは当初の作戦通り、騎士団であった。
「我らが火竜の目を引き付けつつ、我々以外に攻撃が行かぬよう気を巡らせろ!!」
「「「了解!!!」」」
騎士達は、今回の標的である火竜に向け、一斉に飛び出し、火竜の目を引く為に動く。
それも作戦で、今回の火竜討伐戦にはそれぞれに役割が割り振られている。
作戦開始と同時飛び出した騎士団は、火竜の足止めと、体力削りのタンクの役割を
冒険者達は、周りの魔物が騎士団の後ろから襲って来ないように警戒をしつつ、火竜に攻撃を仕掛け、怪我人が出ればすぐさま回収したりと、様々な事に気を回すシーフの役割を
そして、エルフ達は全員が魔法を使え、得意な武器もほとんどが弓らしいので、遠距離攻撃に徹して貰うアーチャーの役割と分けられている。
その中で一番危険な役割はやはり、火竜の正面から、ブレスを食らわないように避けつつ、進行を食い止める騎士団であるのは間違いない。
そんな騎士団の足は一切迷いはなく、足並みも揃っていて、日ごろの訓練の練度が推し量れるものである。
「グアァァァァ!!!!」
火竜は騎士団に気付くと、すぐさま威嚇の声をあげ、その声だけで、エルフの何人か達は足をすくませていた。
「怯むではない!…我々はあの人間達より俄然安全な所からの攻撃じゃ…そんな安全な所からでさえ怯えてしまってよいのか!!あの人間達に頼りきりでよいのか!!!」
「「…ぐっ!!」」
エルフ達の動揺を一早く察知し、皆の士気を下げさせんと、アルボラがすぐに喝を入れる。
そのアルボラの言葉に、人間の事を軽んじていたエルフ達は、「負けてたまるか!」と言った表情で、すぐさま火竜の方に視線を戻す。
「…そうだ…俺達は助けられる為に、ここにいるんじゃない!俺達は神樹様を守る為に戦ってるんだ!!人間達だけに良い恰好させてられないぞ!!!」
「「「おぉぉぉぉ!!!」」」
人間達への反骨心もあるだろうが、この戦いは、エルフ達にとって、神樹の木を守る為の聖戦なのだ。
その事を意識したのか、そこにはもう怯えの表情はなく、いつでも火竜へ攻撃を仕掛けてやるぞ!と気合の入ったエルフ達がいた。
―――――ぶぉぉぉん!!!
「グアァァァァ!!!!」
火竜は空を飛びながら、騎士団へ攻撃を仕掛けようと長い尻尾を鞭のようにしならせながら、攻撃を仕掛けて来る。
「防御!!!」
―――――ガギィィィン!!!!
火竜の尻尾は騎士団の盾に防がれ、鋼鉄同士がぶつかったかのような音が鳴り響く。
「ゼリャァァァ!!」
――――ギィィン!!
「くっ…さすがに硬いな!!」
火竜が空高く飛び上がる前に、1人の騎士が剣での攻撃を仕掛けるが、鱗に切れ目が入っただけで終わり、悔しそうに叫ぶ。
「傷は入るのだ!!決して倒せない相手ではないはずだ!!あきらめず攻め続けよ!!」
騎士団の隊長の言葉に、騎士達は「了解!!」と絶望することなく士気を挙げながら攻め続ける。
「グアァァ!」
火竜は剣での攻撃を煩わしいと感じたのか、少しだけ距離を取りながら高度を上げようとする。
「―――今だぁぁぁ!!!」
「「「「聖なる風の聖霊よ…我が敵に風の刃を…“ウィンド・エッジ”」」」」
―――――ズゥゥゥウパン!!!!!
「グアァァァァァァァァ!!!」
火竜が高度を上げようと、地面から離れたところで、エルフ達の魔法が火竜の翼を直撃し、翼膜を傷つける。
だが、飛行能力を奪うほどは傷つけれず、火竜は上空に飛び続ける。
――――ヒュゥゥゥゥ…
「…!!火竜のブレスが来るぞ!!退避準備!!!」
火竜はブレスを吐こうと、大きく息を吸い、その吸われる音をすぐさまブレスの準備だと理解し、騎士団はいつでも退避できるように構える。
「ヴォォォォォォォォォッッ!!!!」
「退避ぃぃぃぃ!!」
――――ズガァァァァン!!
火竜のブレスは、騎士団の直上に放たれ、ブレスの当たった場所は吹き飛び、威力の高さを物語る。
騎士団の人たちは、事前に気付けていたので、回避は出来ているが、隊列が乱れてしまっていた。
「…くそ!…皆、無事か!!無事な物はすぐに集まり隊列を組みなおせ!!怪我をしたものがいれば、すぐさま後ろに下がり治療を受け、すぐ戻ってこい!!」
その呼びかけに、全ての騎士が隊長の元に駆け寄り、怪我をしている者はいないとわかる。
「我々の魔法を一つにしても、翼1つ落とせぬか…ならば魔力尽きるまで打ち続ければいいだけだ!!我々の底力を見せてやれい!!!」
騎士団の様子を見ていたエルフ達は我々も負けてられんと魔法や弓を飛ばし、火竜に攻撃を加えていく。
「……………」
どんな中、アインスやツェーン、分身体達はまだ動かず、じっと皆の戦いを見ていた。
「……そうだったのか…」
ライアは、自分の知らなかった世界を目の当たりにしたように、独り言を漏らす。
「……詠唱は…あったんだ!!」
…ライアは今回、他の人物の魔法というものを初めて見ていた。
一応リネットも使えるらしいのだが、研究に使う魔力を消費するのがもったいないだとかで、見せてもらったことはなかった。
その為、今回のエルフ達の詠唱…【聖なる風の聖霊よ…我が敵に風の刃を】の部分を聞いて、テンションが上がっていた。
(いやぁ、別に?自分も詠唱したいとか考えてるわけじゃ…まぁしてみたい気持ちもなくはないけど。聞く分にはどうしてもこの興奮する気持ちが抑えられないというか…ってか、保護隊に合流する時に魔法使った時にエルフ達から何も言われなかったから、俺の魔法って、他とそんなに変わりはないのかと思ったじゃん!詠唱あるじゃん!パテルが教えてくれればよかったじゃんね!!)
ライアは色々と考えこみ、思考がずれ始め、パテルがもっと早くに教えてくれればよかったと責任転嫁し、何故かパテルにジト目を送る。
「……?…なんだ?…」
「…何でもないよ…少し考えすぎちゃっただけさ…」
ライアもさすがに文句は言わなかったが、興奮が抑えきれないのか、無駄にカッコつけながら意味深な言葉を言う。
「…?」
意味が分からないと言った表情をするパテルには申し訳ないが、これはただのテンションが上がってしまっただけなので無視してくれると助かる。
(…てか、詠唱もいいんだけど、火竜も凄いね…あのをブレスをまともに食らったら、分身体も一撃で消えちゃうかも…気を付けなきゃね…)
火竜の攻撃もきちんと見えていたライアは、ブレスの危険性を理解しながら、どう討伐するかを思考する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます