改革、避難
―――――アインスside
「んぅぅ~…はぁぁ…助かったよパテル、おかげで2日間、ゆっくり眠ることが出来たよ」
「…別に構わん…日中は俺もほとんど休んでいたしな…」
アインス達は、エルフ達の族長アルボラと会談を交わしたあの日から3日間、村にたまに現れる、逃げ遅れた魔物たちを狩りながら、リールトンの街から来る討伐隊たちが来るこの日まで、パテルの家で過ごしていた。
当初は魔物に襲われる可能性が高かった野営をしながら、襲われないことを祈って眠るつもりであったが、パテルの助けにより、夜はすっかり眠ることが出来た。
「…まだかかるだろうけど、馬車が結構近くまで来てるから、俺達は会談場に行って、保護する人たちの誘導に行こうか」
「…結構早かったな…わかった、先に族長達に伝えて来る」
アインスは随行員のツェーンのいる位置を把握し、もうそろそろ準備しようとパテルに伝えると、すぐさま神樹の木の中心地にいるアルボラの元に向かってくれた。
「…俺も行くか…“あっちはギリ間に合わなさそうかもな…”」
アインスはすぐに準備をし、他のツヴァイ達を連れ、会談場に向かう事にする。
―――――――――――
―――――――――
――――――
「…まだ来てないか…≪索敵≫でもまだ見えないって事は、準備中か」
会談場にアインス達が到着するが、アルボラ達の姿はまだ見えず、「まだ早い時間だし、すぐには来れないか」と考え直す。
ちなみにだが、この会談場に来るのはこれで3回目で、一昨日(最初の会談の次の日)に、ギルドマスターと領主の話した内容や、討伐隊の派遣などを伝える為にもう一度集まっていた。
その時のエルフ達の反応は「本当に助けに来てくれるのか??」「騙して後ろから襲われないか?」と疑心暗鬼の様子だったが、「火竜という大きな敵を前に、小細工をする余裕もないだろう」とアルボラの一言で、ひとまずは共闘してくれることになった。(エルフという種族、卑屈過ぎないか?)
なので、この会談場を使用するのも3回目になるので、アインス達が少し信用されたのかはわからないが、監視されなくなった。
2回目の会談の時はまだ、木の上に監視のエルフが居たみたいだが、現在は監視が誰も居ない状況だ。
「…信用…ではなくとも、敵対はしないとわかってくれたのかな?」
監視に見られるのは色々と息苦しさを感じていたので、大変助かる。
「お、来たね…人数が多いな…保護する避難民も連れてきたのかな?」
≪索敵≫にはアルボラ達と思われる反応を察知するが、人数が100人ほどいたため、恐らく保護するエルフ達だろうと察する。
「すまぬなアインス殿…少し、人を集めるのに時間が掛かってしまった」
エルフ達が現れると、先頭にはアルボラがおり、その後ろに、女子供や老人達が後ろに並んでいる。
「そのことは構いませんが…そちらの皆さんが保護する方たちですよね?そちらで全員でいいですか?」
「えぇ…こちらの者たちだけで全員じゃな」
意外にも、非戦闘員は100人ほどで全員らしく、こんな朝早くからすぐに集まれるほど少なかったらしい。
「了解した…この100人のエルフ達を、きちんとリールトンの街で保護することを約束します」
「よろしくお願いしますぞ」
アインスは礼儀上そう口上した方が良いと判断し、他のエルフ達が安心できるように約束を交わす。
その思いが伝わったのか、アルボラはエルフ達を頼む。と頭を下げる。
この時ばかりは、周りにいた護衛のエルフ達も何も言わず、アインス達を静かに見守っていた。
「それじゃ避難する人たちはこのまま森の入り口まで付いてきてください!!そこに迎えの馬車が来てくれますので!」
アルボラ達と軽く話を付けた後、保護するエルフ達を討伐隊と一緒に来ている迎えの馬車との合流地点まで行こうとエルフ達を誘導を開始する。
一応、護衛の人たちが数人付いてきてくれるが、基本はアインス達が魔物の対処をすることになっている。
「“アースボール”!」
――――ドバン!!
「ぶぺぇ…」
茂みから近づいていたオークを土魔法で一番弱いアースボールをぶつけ、さっさと始末する。
「…俺達の出番がないな…」
「出番がないのは良い事だろう?平和に出れた方が良いに決まっているしな」
避難の護衛に付いてきていたパテルがアインスの≪索敵≫による、サーチ&デストロイの速さに追い付けず、出て来る魔物はすべてアインス達で倒していた。
「…それは勘の良さか?…それとも人間が使うスキルとやらか?」
「これはスキルの力だし、人間だけじゃなくてエルフも使えるものだよ」
「……わからんな…」
パテルはスキルが使えるという部分を信じていないのか、顔をしかめながらも、自分の出来ることをしようと、警戒に戻る。
(まぁもしこの討伐作戦が終わって、エルフと人間が交流を始めることになったりでもしたら、すぐにわかる事だしね…。
交流が始まらなかったら知らないけど…)
「おーい!こっちこっちぃー!」
エルフと人間の未来を雑に想像しながら森を歩いていると、森の入り口付近に到着し、ツェーンと保護隊の人たちと合流する。
「こんにちはー!みなさん、私達は冒険者ギルドから、あなた達を保護しに迎えに来たものです!」
保護隊と一緒に討伐隊(騎士団と冒険者達)も一緒に来ているので、人間が沢山いて、エルフ達は怯えてしまっていたので、随行員として来ていて、そこに居たツェーンが、明るくエルフ達を怖がらせないように挨拶をする。
「私は冒険者ギルドの職員のツェーンと言いますー!よろしくですよー!今から馬車でリールトンの街に避難してもらうのでー安心してくださいー」
エルフ達はツェーンの言葉に少しだけ安堵したのか、先ほどまでの怯えは薄れていた。
「…よし、皆さん、この後はこのツェーンさんに従って馬車に乗り込んで行ってください!リールトンの街まで行ったら、仮の住居に案内されるはずですので!」
アインスはツェーンと一緒にエルフ達を誘導し、馬車の方に向かうように誘導する。
「……お前たちはこの後どうするんだ?…」
残りのエルフ達の誘導をツェーンに任せて、アインス達はパテル達護衛組の近くまで戻るとそう質問される。
「冒険者達は討伐作戦に参加するために騎士たちに付いて行く予定なんだが、俺達は少し事情があってね…もう少しだけ君らと行動を共にしていいか?」
「…神樹様の元には連れてはいけない…それでも良ければいいさ…」
パテルはそこだけは譲れないと条件を付けるが、付いて行こうとしているのはエルフ達の火竜防衛地…つまりはエルフ達が火竜との戦闘を行おうとしている森の端だ。
「俺達の役目は情報の共有の仕事もあるからね、エルフ達の情報伝達方が無いなら、俺達が付いて行った方が良いからな」
「…?…まぁ、神樹様に近づかなければ構わないさ…」
パテルはあまり意味が分かっていないといった表情をしながらそれだけ言って、アインス達と一緒に森に戻って行く。
(ひとまず、エルフ防衛隊にアインス達4人、冒険者と騎士団に工房組の分身体2人は分けたし、情報系統は大丈夫だろ…)
領主に頼まれたのは騎士と冒険者、それに領主邸に1人ずつだが、エルフ側にもいた方が良いと思い、アインス達を付けた。
(それに、エルフ達の戦闘力は知らないが、基本弓と魔法だけのはずだ。それだけでは火竜に対抗できない可能性もあるしね)
よくあるファンタジー物のドラゴンに魔法は効かないなどがあるかもしれないとライアは少しだけ考えたりしていた。
(まぁ実際に戦ってみないとどんなものかはわからんからね…倒したいなぁ火竜!)
ライアは少しの緊張を胸に感じながら、分身体達を動かしていく。
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