改革、会談
それから、10分ほどしたら族長とやらの所に報告しに行っていたエルフが戻って来る。
「…人間、族長の許可が出た。しかし、神樹様の傍に人間を連れていく事はしないので、ここからすぐの所に、急遽会談をする為の場所を用意した…そこで話をされるようだ」
報告してきたエルフは、すぐさま決まったことをこちらに伝え、案内をしてくれるようだ。
「感謝する」
エルフに礼を返すが、特に気にした様子もなく、こちらに背を向け、すたすたと歩いて行ってしまう。
(ついてこいって事なんだろうけど…あまり仲良くする気はないのは想像通りだな…)
上で監視していたエルフも姿は見せないが、上からの監視を続けながら、移動しているようだ。
(神樹の方からも、6人…誰か近づいてくるな…恐らく族長って人と、その護衛の人たちかな?)
「…ここだ…今族長がこちらに向かってきているはずだ」
6人の接近を感知し、向こうの構成を考えていると、会談場に着いたのか、声を掛けられる。
「…ここで座って待っていてくれ」
着いた場所に目を向けると、そこには木の椅子とテーブルのようなものが置かれており、簡易の会談場所としては、一応機能はするといった場所であった。
案内をしてくれたエルフは、そのまま監視もするのか、端に寄り立ったままこちらを警戒している。
(…上からイライラエルフさんと案内係さんの監視、それに族長を守るために5人の護衛か…だいぶ警戒されてるね)
エルフの強さは未だわからないが、ここにいるのはアインス達分身体の冒険者組なので、仮に万が一、戦闘になるような事になっても、こちらに損害はない。
あえてあるとしたら、装備品と森まで連れてきたレンタルの馬が死んでしまうくらいだろう。
案内エルフに言われた通り、木で出来た椅子で座っていると、神樹の木から向って来ていた一行がこちらに到着する。
「待たせたね…君たちが情報を聞きに来た冒険者の人間たちだね。
ワシの名前は“アルボラ”という…このエルフ達の代表をさせてもらっておる者だ」
会談場に現れたのは、高齢であろう老人姿のエルフ族の族長“アルボラ”と名乗るエルフと、そのアルボラを守るようにこちらを警戒している5人のエルフ達だった。
「アルボラ殿、私はリールトンの街で冒険者をしているアインスだ。よろしく頼む」
護衛の人たちは特に自己紹介もなく、ただただ警戒をするだけらしいので、特に気にせずこちらも挨拶を返す。
「こちらの警戒体制に関しては、エルフと人間の関係性を考えて、失礼を許してほしい。
…して早速だが、今回の訪問は、魔物の発生による原因の情報であっておるかな?」
「はい、こちらのリールトンの町周辺で、魔物たちが大量に出没するようになったので、原因を調べている次第です」
アルボラは警戒している周りのエルフに少しだけ触れるが、警戒を解くつもりはないらしく、そのまま本題に入る。
「…ふむ、なるほどの…それで、魔物が来ている神樹の森に何か原因があると思い、ここに来たわけじゃな?」
「えぇ」
実際には、まだ神樹の森方面から魔物たちが来ているとすぐにわかったわけではなく、クストの証言から神樹の森を調べに来たら、当たっていたというのが正解だが、それは別に言わなくてもいいだろう。
「…今回の魔物たちの発生は、この森が原因ではない…その先じゃ」
「…?先…ですか?」
アルボラにアインス達は神樹の森に何か原因があると思って、ここに来たと伝えるとアルボラは静かにため息を吐きながら意味深な事を言いながら、異常の原因を話し始める。
「我々が住む、この神樹の森を超えた先に、大きな山があるのだが、そこの頂上に住んでいた
…山の麓にいた魔物たちが火竜を恐れ、一斉にこちらに逃げてきているという訳じゃ」
「火竜!?」
なんと、今回の原因はあの火竜…いわばドラゴンが山を下りてきたことが今回の魔物の大量発生の原因らしい。
「……なるほどね…それが魔物の“逃げてきた”原因か…」
だとすれば、魔物の異常発生の理由も説明がつくし、神樹の森がここまで魔物に荒らされているのもわかった…しかし…
「…ん?火竜が山を下りるのは異常事態なのですか?餌とかはどうしているのですか?」
食べ物も無いはずなので、山の頂上にずっといるなんて、生き物として不可能だろうと疑問に思って、アルボラにそう質問する。
「実は、竜種のほとんどは食事を魔力で済ませているものがほとんどで、餌を求めて、山を下りるなど普通はないんじゃ」
なるほど、ドラゴンであれば、そんな摩訶不思議体質でもあり得るかと、ライアはすぐに納得する。
「…実は、その火竜もゆっくりとではあるが、この神樹の森に向かって来ているのがわかっての…。
我々だけではどうやっても、火竜はどうにもできん…それで、今回の訪問を受け入れたわけじゃ」
ふと周りを見ると、護衛のエルフや案内をしてくれたエルフも皆、悔しそうに顔を歪ませている。
(…今回はエルフ達でもどうにか出来ないから、ちょうどよく来た人間にも、どうにか協力を頼むしか、エルフ達が生きる道はないと、覚悟が決まっていた会談なんだな)
「…ふむ…なるほど、今回の情報は、リールトンの街で共有してもよろしいか?」
この情報を、ギルドマスターに伝えなければ、今後の動きにも影響してしまうので、ギルドマスターには先に情報を渡しておきたい。
「構いませんとも…しかし、お願いを聞いてもらいたい事があるのじゃ」
「火竜の討伐ですか?俺は元々やるつもりですが」
「はい、実は火竜がここに来る前に、小さい……ん?」
火竜がどのような存在かは、実際にあったことはないが、ワイバーンですら、あれだけ厄介だったのだ。
戦いがいのある相手であるのは間違いない。
「聞き間違いですかな?火竜の討伐と聞こえた気がしたのじゃが?」
「え?えぇ…そう言いましたが…」
アルボラに如何にもアホを見る目で見られてしまうが、どのみち、火竜を倒さねば、下手をしたら、リールトンの街まで、被害が出るかもしれないのだ。
「別にあなた方に期待をしてほしい訳ではないが、そちらは全滅覚悟で討伐に行く気なのでしょう?
そこで倒せなければ、こちらの街に被害が出る可能性があるのです。こちらも倒す選択しかないでしょう?」
「それは…」
族長は、神樹を守るために自分たちの命を懸けて、火竜を止める気なのは予想がついているが、エルフ達も火竜を止められると思ってはいないらしく、苦しそうに顔を歪ませる。
「それに、俺、ちょっとやってみたいんですよね…」
「一体…?」
ライアは心のワクワクを止められず、今自分のやりたいと感じている気持ちを
「リアルモ●スターハ●ターッ!!」
「リアル…モ…はい?」
族長がライアの行った事を聞き返すが、ライアは聞いていないのか自分の妄想に入っているようだった。
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