改革、神樹の森







――――――アインスside




アインス達はリールトンの街を出発して2日ほどで、神樹の森の入り口についていた。



「やっぱり、森に近づくほどに、魔物が多くなっているね…当たりかな?」



神樹の森に向かう道中には、通常ではありえないほどの魔物の襲撃があり、神樹の森で何か異常が発生しているのが濃厚だと思えてきた。



神樹の森の中は、普通の森の木よりも大きい木が生えており、自分たちが小さくなったと思ってしまうような感覚を覚えてしまう。



「ん~…道って感じの道はないな…」



道などはないのだが、恐らく森の奥に見える、一際大きい木が“神樹の森”と言われる所以ゆえんの神樹らしきものが見えているので、それに向かって歩いて行く。



(神樹に近づいたらキレられるかもしれないが、今起こっている異常の理由くらいは聞けるかもしれないし)



元々、神樹の森ではあまり魔物が出ないという話であるのに、この魔物の発生率は異常なのは明らかなので、今ならエルフとも情報交換が出来るかな?と向かっている訳である。









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――――――――

―――――









神樹の木に向かって2時間ほど歩いていると、魔物が暴れた後なのか、木がなぎ倒されている部分や踏み荒らされた後なども、ちらほらと見つかるようになってくる。





「これは…ゴブリンとかじゃないな…少なくともオーガくらいじゃないとこの木は折れないだろうし…」



アインスは周りの状態から、どんな魔物が居たのを予想しながら歩いて行く。




「……ん?…あれって…村か…?

………これは…」



そのまま歩いて行くと、恐らく、エルフの村と思われる所に着き、その状態に目を奪われる。




「…魔物に壊されてるね…人の気配も無かったけど…」




エルフの村はどの家も魔物に壊されたのか半壊しており、人の居る気配は全くない。


エルフの村を見つける時に≪索敵≫に反応が無かったので、村があるとは思わなかったわけだが、反応がないという事は、生きているエルフなどはここに居ないという事だ。



「あれ?でも、エルフの死体とかはないね…」



そのまま村を周っていると、死体などや血痕が無い事に気づき、もしかしたらエルフ達は魔物の襲来を察知して神樹の森方面に逃げたのかも?と予想をたてる。




「なら、もう少し近づこうかな…話が出来るといいけど…」



アインスは、村を後にし、神樹に向かってさらに歩き始める。





「……あの村の状態がいつからなのかはわからないけど、クスト達は生きたまま逃げ出せて、ホントに良かったな……」




ライアはクスト達に無事に出会えた幸運に感謝をする。








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―――――――








「……ん?来たか…」




アインス達が半壊した村を出て、しばらくすると、≪索敵≫に神樹方面からこちらに向かってくる、2人の反応をとらえる。


スピードは少し早く、こちらの事をわかって近づいているような動きをしているのがわかった。




(よくこっちにいるってわかったな…スキルなんかは良く知らないはずの文化のはずだけど…)




周りは大きな木で、高台から見つけたにしても、見つけにくいはずなので、さすがはエルフと言ったところなのだろうか。



と、そんなことに感心していると、すでにエルフがすぐそばまで来てしまう。





「……何をしに来た…人間」



「ここより先には神樹様しかおられない…直ちに立ち去れ」





ギルドマスターに聞いた通り、敵対する気はないのか、注意勧告が飛んでくる。



(…ただ、すっごい言葉にイラつきが混じってるけど…これが普通なのかな?)



エルフは、あたかもイラついていますといった話し方をしているが、こちらも聞きたいことがあるので、用件を伝える。






「すまない!俺たちは、最近魔物の発生が増えている原因を探しに来た冒険者だ!

ここに来たのも魔物が来ているのが神樹の森からという可能性があったので、エルフ達に話を聞きに来たのだが、情報などはないだろうか?」




「……人間に話す事などない!さっさと立ち去れ!」




アインスの言葉にエルフは聞く耳を持たないといった感じで、すぐに怒鳴ってくる。






「……いや、その件は族長たちに話してから決めた方が良いだろう…」



「はぁ?!…族長の決定なんか聞かなくても、人間の手なんか借りるわけがないだろう!何を言っているんだ!」



アインスは何も聞けずに終わるかな…と考え始めると、怒鳴っていたエルフとは別のもう一人のエルフが少しだけ、話を聞いてくれそうな事を言ってくれる。



ただ、最初に怒鳴ったエルフは、人間などは信用しない!とキレている様子だ。




「…いまの我々はジリ貧だ…別に人間を信用するわけではない。

ただ、何か可能性があるのなら、族長にはすべて伝えるべきだ…下手をすれば、我々は全滅なのだから…」



「……っけ!!」



エルフ達は、話が終わったのか、木の上に隠れていた話を聞いてくれそうなエルフが下りて来る。




「…人間、少しだけ族長と話し合って来るので、ここでしばし待たれよ」



「あ、はい」



エルフは礼儀は済ませた。と言わんばかりに、すぐさま足をひるがえし、神樹の方向に消えていった。



上の木には、監視役なのか、先ほどのキレていたエルフが残っている。




――――ギラギラ…


(わぁ…すっごい、イライラが伝わってくるくらい見られてる…まぁ、変に動いて怪しまれたくもないし、じっとして待とうか…)



この監視は甘んじて受けるしかないかと思いつつ、個人的には、イラつきで監視の目に、軽く殺気が入っているエルフよりも、先ほどの話が通じそうなエルフに監視された方が気が楽ではあったな。と考えてしまうライアだった。








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