改革、新たな命
「……うぅ~ん…大丈夫か…」
「とぉさん、ウロウロし過ぎだよ?プエリちゃんが起きちゃうよ」
とぉさんは「す、すまん」と申し訳なさそうな顔をしつつ、1,2分後にはまたウロウロしだしてしまう。
かぁさんの陣痛が始まってから、すでに5時間ほど経っていて、プエリとクストはリビングの椅子で眠ってしまい、その傍でとぉさんが足音を立てるので、起こしてしまわないか心配になる。
「何かあったら、俺がすぐに伝えるから、今は落ち着いてよ?」
「あ、あぁ…そうだよな?…うん」
これはダメだな…ととぉさんに呆れるライアであった。
ライアがお湯を沸かした後、産婆が到着してからは、色々と準備をしていたのでスムーズに事が運んでいたのだが…。
産婆のおばさんが、もう一人の産婆が腰をやって来れないらしく、助手として誰か手伝ってほしいとお願いをしてきた。
しかし、基本、出産に立ち会うのは女性だけなのだが、その場にはプエリしかおらず、どうしようと思っていたら、女と勘違いされたズィーベンが助手として選ばれ、出産を手伝っている。
(一応、男とは伝えたんだけどなぁ…)
産婆曰く、女性の出産を見た男性が、将来子供を作りたがらないようになるため、男を入れるのは良くないらしいのだが…
「あんたが男??……まぁそうなんだとしてもあんたなら大丈夫だろうさ!準備もしっかり落ち着いてやってたみたいだし、何より、もしかしたら将来、女になっているかもしれないしね?あはははは!」
と言われた後「これも勉強だよ!」と強制的に、出産の手伝いをしている。
「……とぉさん」
「なんだ!!かぁさんに何かあったのか!?!?」
――――おぎゃおぎゃ!!
「……生まれたよ!かぁさんも子供もどっちも元気だ!」
「………うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
とぉさんに子供が生まれた事を伝えると、大声をあげながら両手を振り上げ、喜びを噴出させる。
「うひゃぁ!」
「!!!」
その声を聞き、リビングで寝ていた二人も飛び起きてしまう。
「あぁもう、とぉさん?近所迷惑だし、2人も起こしちゃったよ?」
「むぅん…すまん…つい嬉しくてな…あはは」
とぉさんは嬉しいのが隠せないといった表情で、こちらに謝って来る。
「あ、ねちゃってた…え?もしかしてうまれたの!?」
「あぁ!2人とも元気らしい!」
「わぁぁぁ!!!」
プエリは寝てしまっていた事を悔しそうにした瞬間、子供が生まれたと聞き、眠気が吹き飛んだ様子で目を輝かせながら声をあげる。
「まだ、入れないの?」
クストも眠気が飛んだ様子で、わくわくとした感情を隠さず聞いてくる。
「……もう入っていいってさ!」
――――ダッ!!
「早!」
許可を出した瞬間に3人は寝室に向かい走り出し、ライアは置いて行かれてしまう。
(まぁ俺はずっと生まれるまで見てたしね…)
そうは言いつつ、3人の後に続いて寝室に向かうライアであった。
「ほあぁぁぁぁ……ちっちゃいぃ!かわいい!」
「うん…うん…」
寝室には、子供を抱いたかぁさんとその抱かれた子供を見る3人でかなり狭くなっていた。
「良かったなぁ…ありがとなぁ!俺たちのとこに生まれて来てくれて…」
とぉさんは歓喜余ったように大泣きしながら子供を見つめる。
「わぁぁ…てもちっちゃい…」
「この子は男の子?女の子?」
「そういえばどっちだったのかしら?」
かぁさんは、生まれた後しばらく身動きが出来なく、子供の性別を確認していないままタオルでくるまれているので、どちらか知らないらしい。
普通、産婆が性別などを教えてくれたりするのだが、今回はほとんどを産婆1人で5時間動いていたので、違う部屋に移り休んでいた。
「この子は男の子だよ、かぁさん!俺達3人の弟だ」
俺は性別を確認していたので、みんなに教える。
「男の子か…だったら名前は“ラスリ”にしよう!」
とぉさんは、男の子の名前をすでに決めていたのか、すぐに名前を教えてくれる。
「ラスリ…ラスリか…」
弟のラスリ…そう考えていると、なにか喜びの気持ちに近い感情があふれる感覚がしてくる。
(そっか…出産の手伝いで、色々考えることが出来なかったけど…俺の弟か…)
クストとプエリも大事な家族として思っている。
それでも血を分けた兄弟は初めてだったので、やはりうれしく思ってしまう。
「どういった意味でラスリって名前にしたの?」
「ん?意味か?…とくには無いが、お前たち3人の名前を1文字ずつ取ってな!」
クストは名前の意味を聞くが、どうやら意味ではなく、ライアの“ラ”クストの“ス”プエリの“リ”から取った名前で、3人の弟として付けたようだ。
「ラスリ~!」
「はいはい、赤ちゃんも居なくなったりしないから…
今日はもう遅いんだから、みんなは寝てな?俺は産婆さんを送って来るから」
産婆さんを1人放っておくのも悪いし、すでに深夜だ。
そろそろ寝なければ、明日の仕事も何もできなくなってしまう。
「ごめんねライア…お願いね?」
「大丈夫だよ!それじゃ、行ってくるね!」
ライアは部屋を後にし、産婆の休んでる部屋に行き、産婆を連れ、家まで送って行った。
―――――――――――――――
―――――――――――
―――――――
夜が明けて、翌日は懸念した通り、家族全員が寝不足で、仕事にならなかったので、みんなを休ませ、分身体だけで仕事を終わらせる一日になってしまった。
――――その翌日
「ラスリ―!かわいいでちゅねぇ!」
「しわしわしてたのになくなってきたぁ!」
「おぉぉぉ…これが赤子…おぉぉぉ」
仕事を終わらせたお昼ご飯時に、寝室にいるラスリ―を見に来て、ずっと居座る3人を見ながら呆れのため息を漏らしてしまう。
「はぁぁ…とぉさん達は仕事は良いの?プエリは字の書き方勉強しなくていいの?」
「「「うぐっ…」」」
そんな3人にライアの一言が聞いたのか渋々、各々の行くところへ向かう。
「それじゃ行ってくるからねぇラスリ~!」
とぉさん達は畑に向かい、プエリにはリビングに移動して、勉強を教える。
ちなみにかぁさんは産後なので、大事を取って、しばらくお休みである。
(まぁ、それはしょうがないけど……さて、このまましばらくは、この生活を続け…ん?)
かぁさんの出産が終わり、母子ともに安全に終わったので、これからの予定を考えつつ、魔法の練習をやろうかと意識した時に、それが起きた。
「……なるほどね…それが魔物の“逃げてきた”原因か…」
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